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大胆な提案
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急いでディナ―に。
「今日は湖でトラウトを釣ったんだ」
嬉しそうに自慢するのはもちろんボノ。
ヴィーナの件も異国の王子突然の訪問にも気付かずに日が暮れるまで趣味の釣り。
思う存分お楽しみになられたのでしょうね。
いいご身分で。呆れてしまう。
ただ今回はセピユロスからの誘い。仕方がありません。
二人が良好な関係を築くのは大いに結構。
私も見習うべきかもしれませんね。
「トラウト? 」
聞き馴染みのない魚。
「レイクフィッシングさ。本当なら海でも良かったんだが趣向を変えて湖にした」
説明しても分からないのでどうでもいい。
どうも引きが強いらしい。それが釣り人に人気。
「あとバス釣り」
ブラックバスもトラウト同様湖に生息。
「ははは…… 本命はバスの方だよディーテ」
二人は引きの強さと大きさに興奮した様子。
たまにはレイクフィッシングもいいものだと酔っぱらったボノが笑う。
それはどちらでも構いませんが…… 釣ってきたものが見当たらない。
「それでどこにあるんです? 」
「リリースさ」
二人同時。
まあでは一匹も釣れてないのかしら。これで本当に楽しいのか疑問。
「今度連れて行ってあげるよ。でも海の方がいいかもね」
セピユロスが笑っている。
楽しかったのならそれは良かったです。
「それからさ」
「ボノが慌てて落ちたんだ」
楽しい釣り報告。こちらまでワクワクしてくる。
ヴィーナはその話を聞いても笑顔一つ見せない。
怒ってさえ見える。
それもそのはず。またしても放っておかれたのだ。
昨日戻って来たばかりのセピユロスが半日もいない。
趣味に没頭するのもいいがヴィーナの相手もしてあげなくてはむくれる一方。
「ヴィーナどうしたんだい? 」
セピユロスは鈍感。鈍感を通り越して狂気。
女好きのボノはその辺りのことは敏感。気遣いが出来るタイプ。
「悪かったよ。セピユロス君を独占して。釣りはもうしない」
ボノはヴィーナを宥めるが悪化するばかり。
「いい加減にして! 大事な話もあるのにどうかしてる」
「気分転換だよ。セピユロス君が落ち込んでいたからさ」
何だかんだと理由をつけるボノの悪い癖。
セピユロスも乗っかってしまうから余計だ。
「さあお食事を楽しみましょう」
険悪のムードをどうにか振り払う。
「セピユロス。一つ提案があるの」
昼間に言ったことをそのまま伝えるヴィーナ。
「しかし無理がある」
ボノが反対する。
セピユロスは濁すのみ。
大胆な提案。
どちらか一方にセピユロスの家族を住まわせ二人っきりで暮らす。
ワガママで自分勝手なヴィーナ。
誰が賛成すると言うのです?
「でもこれがセピユロスにとってもいい」
ヴィーナはセピユロスを思い、取った行動だと言いたいらしい。
「いい加減にしないかヴィーナ! 」
誰にも優しい。特に女性には紳士な振る舞いのセピユロスが叱り飛ばす。
どうしてなのとなおも食い下がるヴィーナ。
「まあまあ二人とも落ち着きなさい」
ボノが止めに入る。
「自分勝手だぞヴィーナ」
「いいえこれが一番です。協力して」
ヴィーナは引かない。
「だがいくら何でも二人に村の者を押し付けるなんて」
セピユロスは村の者が雑に扱われるのが許せない。
それに私たちにこれ以上迷惑を掛けたくないと憤る。
そう言う正義感の強い人。
「セピユロスは黙ってって! これは家族の問題です」
セピユロスを退席させ三人で話し合う。
「いいでしょう? これも人助けだと思って」
「だが少なくてあちらの両親と一緒に住んであげてもいいだろう」
そうすればもっと人を連れて来られる。なぜそれを嫌がるのかが分からない。
「それは嫌。二人の空間を邪魔されたくない」
この非常時に我がままを言うヴィーナ。さすがに譲れはしない。
「出来るだけのことをする。だからお前も迎え入れてあげなさい」
ヴィーナの説得には骨が折れる。
「ディーテも言ってやってくれ」
「結論はもう少し考えた後でもよろしいのではなくて」
これが精一杯。先延ばしすることに。
今一度冷静に考えるべき。
村人を住まわせる準備に入る。
一日でも早く彼らに日常を取り戻してあげたい。
その為には協力は惜しまない。
「ありがとう。私はこれで」
ヴィーナが部屋に戻る。
ボノが後に続く。
今夜はもう遅い。私も寝るとしましょう。
続く
「今日は湖でトラウトを釣ったんだ」
嬉しそうに自慢するのはもちろんボノ。
ヴィーナの件も異国の王子突然の訪問にも気付かずに日が暮れるまで趣味の釣り。
思う存分お楽しみになられたのでしょうね。
いいご身分で。呆れてしまう。
ただ今回はセピユロスからの誘い。仕方がありません。
二人が良好な関係を築くのは大いに結構。
私も見習うべきかもしれませんね。
「トラウト? 」
聞き馴染みのない魚。
「レイクフィッシングさ。本当なら海でも良かったんだが趣向を変えて湖にした」
説明しても分からないのでどうでもいい。
どうも引きが強いらしい。それが釣り人に人気。
「あとバス釣り」
ブラックバスもトラウト同様湖に生息。
「ははは…… 本命はバスの方だよディーテ」
二人は引きの強さと大きさに興奮した様子。
たまにはレイクフィッシングもいいものだと酔っぱらったボノが笑う。
それはどちらでも構いませんが…… 釣ってきたものが見当たらない。
「それでどこにあるんです? 」
「リリースさ」
二人同時。
まあでは一匹も釣れてないのかしら。これで本当に楽しいのか疑問。
「今度連れて行ってあげるよ。でも海の方がいいかもね」
セピユロスが笑っている。
楽しかったのならそれは良かったです。
「それからさ」
「ボノが慌てて落ちたんだ」
楽しい釣り報告。こちらまでワクワクしてくる。
ヴィーナはその話を聞いても笑顔一つ見せない。
怒ってさえ見える。
それもそのはず。またしても放っておかれたのだ。
昨日戻って来たばかりのセピユロスが半日もいない。
趣味に没頭するのもいいがヴィーナの相手もしてあげなくてはむくれる一方。
「ヴィーナどうしたんだい? 」
セピユロスは鈍感。鈍感を通り越して狂気。
女好きのボノはその辺りのことは敏感。気遣いが出来るタイプ。
「悪かったよ。セピユロス君を独占して。釣りはもうしない」
ボノはヴィーナを宥めるが悪化するばかり。
「いい加減にして! 大事な話もあるのにどうかしてる」
「気分転換だよ。セピユロス君が落ち込んでいたからさ」
何だかんだと理由をつけるボノの悪い癖。
セピユロスも乗っかってしまうから余計だ。
「さあお食事を楽しみましょう」
険悪のムードをどうにか振り払う。
「セピユロス。一つ提案があるの」
昼間に言ったことをそのまま伝えるヴィーナ。
「しかし無理がある」
ボノが反対する。
セピユロスは濁すのみ。
大胆な提案。
どちらか一方にセピユロスの家族を住まわせ二人っきりで暮らす。
ワガママで自分勝手なヴィーナ。
誰が賛成すると言うのです?
「でもこれがセピユロスにとってもいい」
ヴィーナはセピユロスを思い、取った行動だと言いたいらしい。
「いい加減にしないかヴィーナ! 」
誰にも優しい。特に女性には紳士な振る舞いのセピユロスが叱り飛ばす。
どうしてなのとなおも食い下がるヴィーナ。
「まあまあ二人とも落ち着きなさい」
ボノが止めに入る。
「自分勝手だぞヴィーナ」
「いいえこれが一番です。協力して」
ヴィーナは引かない。
「だがいくら何でも二人に村の者を押し付けるなんて」
セピユロスは村の者が雑に扱われるのが許せない。
それに私たちにこれ以上迷惑を掛けたくないと憤る。
そう言う正義感の強い人。
「セピユロスは黙ってって! これは家族の問題です」
セピユロスを退席させ三人で話し合う。
「いいでしょう? これも人助けだと思って」
「だが少なくてあちらの両親と一緒に住んであげてもいいだろう」
そうすればもっと人を連れて来られる。なぜそれを嫌がるのかが分からない。
「それは嫌。二人の空間を邪魔されたくない」
この非常時に我がままを言うヴィーナ。さすがに譲れはしない。
「出来るだけのことをする。だからお前も迎え入れてあげなさい」
ヴィーナの説得には骨が折れる。
「ディーテも言ってやってくれ」
「結論はもう少し考えた後でもよろしいのではなくて」
これが精一杯。先延ばしすることに。
今一度冷静に考えるべき。
村人を住まわせる準備に入る。
一日でも早く彼らに日常を取り戻してあげたい。
その為には協力は惜しまない。
「ありがとう。私はこれで」
ヴィーナが部屋に戻る。
ボノが後に続く。
今夜はもう遅い。私も寝るとしましょう。
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