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添い寝

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「申し上げます」
メイド頭がやって来た。
「分かりました。なら私もそうしましょうか」
ヴィーナは食事を控えるそうでそれを知ったボノが部屋で摂ると言い出した。
私も倣い部屋でゆっくりすることに。

味気ない食事。
一人で摂るのはどれくらいぶりだろう?
ボノが寝込んだ時以来かしら。
いつも何だかんだで二人仲良く。
それが二人のルールでありルーティン。
どんなに忙しくても泊りがけでない限り一緒に摂る。
十時、十一時になったこともあった。
ボノを待たせることはあまりない。
何と言っても領地を出ることはまれ。
ボノも最近は忙しくないので遅くなることもない。

一緒に食事すれば細かいことはすぐに忘れて良好な関係が保てる。
もちろんメイドに手を出したと分かったら叱り飛ばします。
それは覚悟のうえでやっていること。ボノも大人しく聞き入れている。
そして反省してる振りをして下を向く。
居た堪れなくなり許す。
次の日には何事もなかったようにけろっとしている。
三日後にはまたメイドに手を出す。その繰り返し。
本当に困ったボノ。
最近は面倒なので見て見ぬふりをすることも。
それが大人の対応。もう怒る気にもなれない。

「ちょっと」
お付きのメイドにチャウチャウを連れてくるように命じる。
何となく寂しい気がしてチャウチャウに癒してもらう。
「ねえ間違ってる? 」
猫相手に相談しても何の解決にもならないのは十分承知しているが。
無邪気なチャウチャウを見てると安心する。
それに何より否定してくれる。
「私のせい? 」
「チャウチャウ」
落ち込んだ時は励ましてくれているようで心強い。
「さあ一緒に寝ましょう」
気まぐれなチャウチャウも私が怖いのか言うことは聞く。
追い出されては敵わないと大人しい。
「ほらチャウチャウ。早く」
チャウチャウにとっても悪くない。
だから大人しく中に入ってくれる。
「おやすみなさい」
おやすみのキスはメイドに止められているので我慢。
さあまた明日。
明日にはセピユロスが帰って来る。
待ちに待った再会の瞬間。

翌日。
ああセピユロス。
ダメ……
想いが強い。強すぎるの。
重い! 重い! あああ!
せっかくセピユロスと結ばれそうになったのに邪魔が入った。
と言っても夢の話ですけどね。

「おはようございますご主人様」
「あら今日は早いのね」
いつもは起こされる前に目が覚める。
ただ起き上がるのが億劫で寝たふりをする場合がある。
年々起きるのが早くなっている気がする。
いえ年とかそう言うのではありません。元気が湧いてつい。
本来だったら昼まで寝てもいいんですけどね。
丁度読書の時間がお昼寝タイムですから。
「何をおっしゃいます。もう六時を過ぎております」
ここ数日で冷えて来たものだからなかなか起き上がれない。
でもご主人様として情けない姿は見せられないし。

「チャウチャウ様が…… 」
だから猫にまでへりくだる必要はない。
「チャウチャウがいたから…… 重いはずね」
昨晩寂しくて一緒に寝たのを忘れていた。
あの温もりはチャウチャウ。
セピユロスのではなかった。
「あーあ。もう毛だらけですよ」
ベットも服も茶色の毛がびっしりくっ付いている。
毛を取るのもメイドの役目とは言え大変なのが良く分かる。
だからなるべくチャウチャウと一緒に寝ないようにしていた。
でも寂しくなるとどうしても止められない。
一見毛が取れて見えても完全には取り切れておらず何度も洗い直す羽目になる。

メイドが睨みつけるとチャウチャウと鳴き声を上げる。
自分のやったことを反省してるようで実は朝ご飯を要求しているだけ。
「持ってきてあげて」
「はい。それで今日のことなんですが…… 」
メイドが気にしてるのは朝の礼拝。
神に祈りを捧げる大切な朝の儀式。
それを欠席したいとか。

「何かありました? 」
まさか寒くて嫌だと言うのではないでしょうね?
私も若干そんな気持ちがするけれど。
もちろん許されませんが。
                 続く
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