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セピユロスにはもっと大人の女性がお似合い。
たとえばこの私とか……
まあなんてことでしょう。
あくまで誰が相応しいのかであって何の意図もない。
ああセピユロス早く帰って来て。
待ち望んでる人がどれだけいるか分からないあなたじゃないはず。
私もどうかしてる。でもセピユロスはもっとどうかしてる。ふふふ……

あれおかしい? 彼が帰って来るって分かってから変だ。
言ってることもやってることも滅茶苦茶。
もうどうにかなってしまいそう。
浮かれて舞い上がっている? まさか子供じゃあるまいし。
冷静に冷静に。私はご主人様なのよ。これではメイドたちに示しがつかない。
セピユロスが戻って来れば平和な日常が崩れてしまうかも。
親子関係も改善されつつある今、余計な騒ぎは避けたい。
うーん帰って来て欲しいような欲しくないような。

セピユロス。
ただヴィーナのお相手として存在したなら祝福したでしょう。
でも彼は私は誘惑した。
ちょっとした行き違いや誤解などでもない。
はっきり告白までした。
彼は目の前の女性に告白しなければ死んでしまう病。
男の人は皆そうだと聞きます。ボノもそうでした。
でもここまで見境が無いのかと幻滅する一方で欲が勝ってしまう。
これはボノのせいでありセピユロスのせいでもある。
はっきり言えばしっかりつかまえていないヴィーナが悪いんです。
もっと気を付けていれば彼だってあんな大胆な行動にでるものですか。

あーセピユロス。あなたはどう言うつもりなんです?
捉え方によっては物凄く危険な人物。
彼がこの屋敷にやって来たのも何か狙いがあるのではと勘ぐってしまう。
私たちの微妙な関係を察知し壊そうとしているよう。
セピユロスは破壊者なのでしょうか?
ボノがここまで変わったのは彼に触発されたからだとしたら辻褄があう。
ヴィーナは騙されやすいから彼の口車に乗った可能性もある。
私もつい彼の言葉を本気にして浮足立っている。
彼が離れ関係が改善しかけているのにまた戻って来てはどうにもならない。

ああセピユロス。ヴィーナを頼みましたよ。
ああセピユロス。戻って来て私を。早く戻って来て。
セピユロスに対する矛盾した想い。

どれだけ待ち望んでるか分からないでしょう?
たとえどうなろうとあなたと結ばれるならそれでいい。
ボノに罵られようとヴィーナを傷つけようと。
私はセピユロスの為に鬼にでも悪魔にでもなる。
誰がライバルだろうと関係ない。
「セピユロスが欲しい。セピユロスに甘く囁かれたい。
セピユロス。セピユロス」

つい胸にしまった思いをぶちまけてしまう。
大丈夫誰も聞いてはいない。
聞こえても理解できないでしょう。
だって私でさえ考えもしないこと。
盗み聞きでもしない限り。そんなメイドはうちには居ない。
ご主人様の命令は絶対。
だからご主人様の秘密も絶対だ。
それにしてもセピユロスの目的が見えない。
まさか本気で一目惚れしたとは思えないし。
うーんやっぱり調べておく必要がある。

影のメイドを呼ぶ。
「ご主人様どのようなご用件でしょうか? 」
まずはチェック。
嫌がる彼女の服を脱がせ傷を確認。
それから発達状況も確認。
「うん。もう少しお肉を摂りなさい」
「もうお止めください」
放っておくと傷が化膿すると言うのにまったく。
舐めていれば大丈夫だと抵抗する面倒くさがりなメイド。
「困った人ね」
「本当に大丈夫です」
「嘘をつきなさい」
仕方なく撫でまわす。
「ちょっとご主人様いや…… 」
まずいこの子感じてる。
誤解されるような抵抗の仕方。
他の者に聞かれたらどうするつもり?
変な噂がたったら私の立場がない。
「はいお終い。服を着なさい」
「いや…… もうちょっと…… 」
どっちに嫌がってるのよまったくもう。

「それで頼みたいことがあるの」
「ええっとセピユロス様の件ですね」
「そう…… でもなぜ? 」
「怪しいですからね。他にいませんよ」
ここには今のところ不審人物は紛れ込んでいない。
ボノはすでに調べてもらっている。
だから思い当たるのはあの田舎者のメイドとその父ぐらい。
ただ彼も屋敷にいる訳でもない。何か仕掛けようもない。
怪しいが怪しすぎるので逆に大丈夫。
残るはセピユロスとなる。

「またお願い。彼の裏を詳しく探って。もし何もなければそれでいいの」
出来たら何もなければいいのですが。
ヴィーナの為にも私の為にも。
「分かりました。ご主人様の意のままに」
若干不安ではあるが能力は疑いようがない。
任せるとしましょう。

                  続く
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