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第五章 もうゲームとは別物です。
記憶の果てー③
しおりを挟む私達はすんなり公爵邸に潜り込めた。ダルさんの能力様様で。
精神支配って便利。心底から思った。
ダルさんは見張りの騎士達の記憶を操作しただけだ。
「ちょっと数分間の記憶が抜けた程度なので精神への悪影響はないよ」と笑って教えてくれた。優しい人。
「旦那様! 奥様!」
お嬢様の身に何が起こったのか私は縋るようにお二方に事情を説明した。
お咎めは覚悟の上だ。失くすものなど無いに等しい。
話を聞いたのにお二人は驚かない。事情をご存じでいらっしゃるのではと思うほど冷静だった。
「そう。そんなことがあったのね」
奥様の口調は穏やかだった。私の方が拍子抜けした。
旦那様は別室にいるジオルド様のお相手のためお部屋を出られた。
今は奥様と私だけ。奥様は事の顛末を教えて下さった。
お嬢様は自力でエリックの元から逃げ出したこと。
帝国側の専属侍女達と合流して潜伏していること。
飛伝の使用が可能なこと。
お嬢様は貴族のご令嬢だったよね? 自力で? えっ? 信じられない。
予想外過ぎて驚いた。流石、お嬢様逞し過ぎる。
だけどご無事で良かった。心底そう思う。ホッとした私に奥様は優しい眼差しを向けて下さる。
結果的に裏切った私でも奥様は以前と変わりない態度で接して下さった。
「貴女も被害者よ。それよりも潜り込んだネズミを捕まえましょう」と怖い笑顔で仰った。奥様は怖い。
ーーーーーーーー
「それでねぇ。僕もちょっと関わっちゃったねぇ。だから事情を教えてくれるかな? 僕との利害が一致するなら協力は惜しまないよ。どう?」
ジオルド様はどうにも軽いイメージが目立つ。
旦那様も奥様も慣れた感じで対応されていらっしゃる。
やっぱりこの方々は馴染な関係なんだ。何故だか腑に落ちた。
旦那様はお悩みになられたが奥様の一声で事情を説明することになった。
やっぱり奥様は強い。そして笑顔だけど怖い。
説明は関わった私からとなってエリックとグレインから誘われた経緯からした。
私達三人の共通は復讐だった。
エリックはザックバイヤーグラヤス公爵家に。私達はオルレアン様に。
理由は家族の敵討ちだった。
「エリックの家族? 彼の両親の死は我が家は無関係なはずだが‥‥」
旦那様は不可解だと言わんばかりに不愉快にされていた。
奥様もグレインの家族は健在なのにとこちらも不可解に思われていた。
どうやら私達は利用されただけだった。
話を聞いていたジオルド様が「エリックと言う青年に会ったが彼は術の影響を受けていなかった。両親の敵だと言う話は誰かに吹き込まれたのではないのか?」と仰ったが、まだ何やら言いたげなご様子だった。
うぅんと唸りながら顎をさすって悩まれているのがわかる。
その態度に奥様がキレた。
「ヒトの家に来てまで出し惜しみしないで! さっさと白状しなさい!」
やっぱり奥様は怖い。
「はぁ~~~。カレンシア夫人は相変わらずだねぇ。そうだね隠していても仕方ないか。彼が公爵家に復讐心を持っている以上は避けられないか。どの道バレるしねぇ」
「彼は先代国王の忘れ形見だよ。僕の異母弟だ」
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