本当はあなたを愛してました

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第三部

弔い

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「あ、あの」

先頭にたちスタスタと進む男性を追いかけるように私達は進んでいた

最近は商会の仕事に慣れるために、動きやすいように簡素なワンピースが多かった為、久々にドレスを着たこともあって思うように歩けない

着慣れない喪服というこもあり前方の男性に声をかける


お名前はなんとおっしゃったかしら

見惚れていて聞き逃したのかもしれない

もう一度声をかけようとした私に気付き、マリが前方へ小走りして男性を呼び止めた


男性は「気づかずにすまない」と一言詫びるとそれからはゆっくりと歩調を合わせてくれた

ダーニャお姉さまは活動的な方だったし、
この国では女性をエスコートする習慣がないのね


庭園をしばらく歩いていると開けた場所が見えてきた

そのままガゼボまで辿り着くと男性は「こちらです」と一角を指差す

「ダーニャはこの辺りに眠っています」


周囲を見回しても墓標らしきものはない
形状が違い認識できないのかと目を凝らしてみる

側に控えているマリに目配せするが、マリも首を横に振るだけ
いったいどこにお墓があるのかしら

護衛の者にも尋ねようかと逡巡していると
男性が言葉を発する

「この辺りです。ダーニャの遺骨を撒いたのは。寂しくないようにダリヤの花を植えました。秋になればとても鮮やかな景色がみられるでしょう。彼女を思わせる紅い色が。どうかされましたか?」


遺骨?
撒く?

いったいこの方は何を言っているの?

「ダーニャは自由を好んでいたので、もしも自分が死んだら海に撒いて欲しいと言っえいたのですが…最近は海への散骨が禁止になりましてね。」

男性は話し続けていたけれど、まるで見えない壁に遮られたように何も聞こえてこなかった


人が亡くなると棺に入れられて、皆に見送られながら埋葬する。
誰しもが子供の頃から認識している常識

土葬以外の弔い方法があるなど、考えたこともなかったサラにとって、受け入れ難いショックなことだった



お姉さまは安らかに眠られているの?
お姉さまの体はいったい…?

「あ、あの、お話しの途中で大変失礼かと思いますが、どうしても気になることがありまして」

「構いませんよ。何でしょう?」

「ところでお姉さまのお身体はどちらに?」


「この辺りです。あぁ、正確な場所をお知りになりたいのですね。ちょうどこの辺りから2.3歩かな、いや4歩くらいか…ここからこうして撒きました。」

「いえ、そういうことではなくて、お身体のことを」

「…」
「…」

怪訝な顔をした男性と見つめ合ったのは一瞬のこと

「あぁ、もしかして、火葬をご存知ないのでしょうか?」


無言で頷き肯定する  

「火葬とは、亡くなった人を…燃やして、荼毘に伏すことです」


「燃やす…」

口に出してその言葉の意味に思い至ると

サァーっと全身から血の気が引いていくのを感じた時には遅かった

そこでぷっつりと意識が途絶えたから

「お嬢様!お嬢様!」

意識が途絶える時に誰かに抱き止められた
気がする

暗闇の中マリの必死の声だけが頭に響いていた


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