本当はあなたを愛してました

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第三部

異国

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✳︎✳︎✳︎

遠い異国の地、ドリス国に到着したのはもうすぐ正午になろうかという頃だった

宿の手配を済ませると、2人の護衛とマリと共にダーニャお姉さまの邸へと向かった
他の者達には自由時間を与えた

黒い喪服に着替えると、哀しみが襲ってくる


「お嬢様、場所を確認してきました。ここから遠くありません。こちらです」


宿の者に道を尋ねてきたマリの案内で、私達はダーニャお姉さまの邸宅へと向かう

「マリ、花を購入してから行きましょう」


「お嬢様、追悼式には間に合いますでしょうか?」

「いいえ
考えてもみて、もう1週間もたつのだもの。とっくに終わっているわ。お姉さまの最後のお姿は見れなくても、墓前にせめてお花をお供えしたいわ」


「そうですよね…遠い道のりでしたね
あ、お嬢様こちらではないでしょうか
呼び鈴を鳴らしてきます」

レンガ造りの建物が並んでいた街中とは違い、この辺りは異国の雰囲気を感じられなかった


門の造りなど自国と変わらい
この辺りはドリス国出身以外の者達がすんでいるのかもしれない

そんなことを考えながら周囲を見回しているとにぎやかな声が聞こえてきた

「呼び鈴の返事がありません」

「あちらから声がするわ。ちょっと行ってみましょう」

「あ、お嬢様お待ちください」

声のする方に進んで行くと、泣いている赤ちゃんを囲んで人だかりができていた



「ふぎゃぁー、ふぎゃぁ」
「おー、よしよし、いい子だ、よーしよーし」

「あ、旦那様、そんなに揺らしては危のうございます」

「そ、そうか、どうすればいい?」

「あ、あの、失礼致します」

振り向いたのは若い男性だった
自分と同じくらいの年代だろうか

その男性は背中まで流れるようなまっすぐなシルバーの髪を一つに束ねていた。中世的な顔立ちで不覚にも綺麗だと思った

赤ちゃんを抱いている姿も可愛らしくて、マリに声をかけられるまで思わず見惚れていたほどに


「あ、呼び鈴を鳴らしたのですが…」
慌てて意識を戻して説明を始める

「気づかずに申し訳ございません」

執事と思しき人物が赤ちゃんを男性から預ると、何やら言葉を交わした後に赤ちゃんを連れて去って行った

「あなた方は?」
服装の乱れを整えた男性に向かい、深呼吸をしてから挨拶をする 

「申し送れました。私、サラ・ゴーデルと申します。ダーニャお姉さまにお別れをのご挨拶をさせていただきたく参りました」


「あぁ、あなたが、手紙は受け取っています。遠い所をわざわざありがとう

騒がしくて…すまない。
ダーニャからサラ嬢、いや、ゴーデル嬢のことはよく聞いているよ。君達姉妹のことを話す時はいつも楽しそうだったからね。ダーニャは…」

男性は赤ちゃんを抱いていた腕の温もりを確かめるように、そっと両腕をさすると、誰に聞かせるでもなく小声でつぶやく
「先に逝ってしまうなんて…」

その姿を見て、この方もダーニャお姉さまを慕っていたのだと、同志なのだと勝手に親近感を覚えた

この方はいったい…?


ダーニャお姉さまは
ご結婚されたとは聞いた覚えはないし

見たところ私とエミリアお姉さまくらい年が離れている

ご兄弟にしては髪色に違和感が

よく考えてみたら、ダーニャお姉さま自身のことは何も知らない

知ろうとしなかったのかもしれない

ここはダーニャお姉さまの生家なのかしら

それにこの方はダーニャお姉さまとどういう関係なのかしら




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