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自由の国『リーデンベルグ』
25 まるでメリダさんがいるような準備のよさ
しおりを挟む動く馬車の中でクリスに組み敷かれた。
それ自体を嫌だと思ってない自分にも驚く。
でも、こればかりはどうかと思う。
何かに怒っているのに怒ってないっていうクリス。
不機嫌さは隠そうともせず、笑ったまま俺の制服を脱がして、ズボンも引き抜いた。
……お城に戻る馬車の中で、まさか裸に剥かれるとは思ってなかった。
……しかも、ほどかれて布になった俺の下着で、俺の息子の根本を縛ってくるなんて。
お仕置きって言ってくるクリス。
……俺が、格好いいを連呼したのが悪いって。
俺、エルスターでもことあるごとに口に出してた気がしたけど、クリス的に今回のは許せなかったみたい。
多分、クリスが傍にいないのに、他の人を褒めちぎったから。いつもなら、そういうとき、クリスが俺の腰を抱いたり、手を繋いだりしてるから。
でも、でもさ。
クリスが何を心配して、何を不安に思っているのか、俺はいまいちわかっていないかもしれないけど、チェリオ君が俺の頭をなでようとしたとき、無意識に避けたんだよ。俺、クリス以外に触れられること拒否したんだよ。
……ギルマスとかメリダさんとか例外な人も多いけど、俺が触れてほしい人はクリスだけなんだよ。
クリスだってそれはわかってる。けど、どうしようもない感情が奥底にあって、それが爆発することはわかってる。お仕置きっていうけど、痛みが強いことも、俺が本当に受け入れられないことはしないから。
でも、ほんとにさ、ほんとに、これは、どうかと思うんだ……。
「やだ……っ、も、だしたいぃっ」
「駄目」
俺は射精しちゃ駄目って。
でも、クリスのは、もう俺のお腹の奥にそそがれてる。
熱くて甘いクリスの魔力が俺の体を満たして、同時に与えれる強い快感に意識が持ってかれる。
解されもせずクリスの怒張を迎え入れたそこだけど、痛みなんてない。……俺の体、いつでもクリスを迎え入れることができるようになったのか。それはそれで、嬉しいような恥ずかしいような。
「アキ……アキ……」
「ひぁ…っ」
ごりゅ、って、俺のお腹の奥をこすられた。
そこはいつもちゃんと思考を保っておけなくなる場所。イきっぱなしになって、苦しくて、でも気持ちよすぎて、目がチカチカして、涙が止まらなくなって、クリスの背中をかきむしる場所。
俺がクリスにつける傷は、クリスの癒しでは消えない。クリスが自分自身にその力を使わないから。だから、クリスの背中に引っかき傷が残っているのを見ると、恥ずかしくてたまらなくなる。
「ぅぅ……っ」
「…っ、アキっ」
また、クリスの熱がはじけた。
あと何回。
このままじゃ、俺、クリスの魔力に酔ってしまう。
「……一度抜くからな」
「ひん……っ」
ずりゅりゅって抜かれていくときの感触に、背筋のぞわぞわが止まらない。
クリスは軽く俺の体とクリスの体をハンカチでぬぐうと、自分の身なりを整えて、俺に脱いでいた服を着せてくれた。……でも、下着だった布はそのままだし、きっちり着せられた感じじゃなく、羽織らされたというか着崩してる感じの。
俺は起き上がる気力も、服を直す気力もない。
むしろ、動いたら体の疼きに変な声が出そうだし、吸収しきれないクリスのものが溢れて出てきてしまう。
……俺、このまま城に戻るの?
ってちょっと遠い目をしてしまった。
「アキ、じっとしてて」
「くりす…?」
ぐったり体を投げ出していたら、クリスポーチから取り出したらしい毛布で、体をぐるぐる巻きにされた。
足先と、首から上しか出ていない。
その状態で抱き上げられて、座席に座りなおしたクリスの膝の上に抱えられる。
「……もしかして、このままお城に戻る感じですか……」
「ああ」
「……洗浄魔導具」
「使わない」
「……」
クリス、まだお仕置きモードだ。
もういいや。
仕方ない。
馬車はそれから間もなく止まった。
外から開けてくれたのは、迎えに来てくれたベルエルテ伯爵だった。
伯爵は毛布ぐるぐるでクリスに抱かれてる俺を見て、「おや」って眉を寄せる。
「どこか具合でも?」
「ああ、問題ない。初めての学院で少し疲れたようだ」
「お疲れですか。具合が悪いわけでなくてよかったですね。夕食は予定通りで?」
「構わない。このまま部屋に下がるとグレゴリオ殿下に伝えてほしい」
「承知いたしました」
なんて会話を、目を閉じて聞いた。
部屋につくまで目は開けない。下手に開けて恥ずかしい思いをするのは嫌だ。
クリスの足取りは迷いがなくて、安心する。
ほどなく立ち止まり、扉を開く気配。
「ういすぱぱ!」
「マシロ」
って声に出迎えられて、目を開いた。
「あきぱぱ」
マシロが俺たちに近づいてくる。
クリスは俺を抱いたまま膝を折り、マシロと俺の視線の高さが同じになった。
「いちゃい?」
「ううん。ちょっと疲れただけ。ただいま、マシロ」
「おかえぃ!」
「いい子にしてた?」
「う!」
可愛いマシロ。
マシロのすぐ後ろに、怖いくらい穏やかな笑顔のリアさんがいる。
「マシロちゃん、アキラさんとっても疲れてるようだから、お部屋でましょうか」
「う…、いっしょ、め?」
「アキが休めないだろ?夕食まで待ってろ」
「ういす……、やくそく?」
「約束」
「う。……ましろ、まってる」
マシロが少し寂しそうな顔をしたけれど、でも笑って俺の頬にキスをした。
「ねんね、ね?あきぱぱ、おやすぃ」
「うん。おやすみ。後でね、マシロ」
「う!」
マシロはリアさんに手を引かれて、隣の部屋に戻っていった。
その姿を見送ってから、クリスは俺をベッドに降ろす。
「夕食に、か」
あ、クリスの笑みが、悪いものになった。
「ペニス縛られて、勃てたまま、よく普通に話せたな」
「……だって」
クリスが毛布をはぎ取った。
中途半端になっていた制服をまた取り去ったとき、俺に毛布を掛けなおして扉の方を向いた。
「……セシリア、下がれ」
「あら」
いつの間に戻ってきていたのか、そこにリアさんがいて滅茶苦茶驚いた。扉が開いた音とか、したっけ?
「果実水も軽食も用意してありますが、他に何かご入用なものはありませんか」
「これで十分だ。俺たちには構わなくていい。マシロを優先しろ」
「残念――――、あ、いえ。もちろんマシロちゃんは優先いたしますが、そのマシロちゃんがアキラさんのことを心配していますから。それに、メリダさまからも、殿下とアキラさんをしっかりとお助けするよう言われておりますし」
ほほほ……って笑うリアさん。
でも、その目がキランと光って、酷く楽しそうに細められた。
「紐などはご入用ではありませんか?流石に攻め具の用意はできませんが、紐や縄でしたら、今すぐにでも」
……ちょっと待って。
それ、多分、ご令嬢が口にするアイテムじゃない。
それに、紐とか、縄とか、リアさん、もしかして、もしかしてだけど、俺がされてること、なんか勘づいてる…!?
「……セシリア」
「はい」
クリスの声は、今日一番低かった。
「下がれ」
「残念です」
普通の人だったらすくみ上りそうな声なのに、リアさんは心底残念って感じで溜息をついてから、カーテシーを披露して部屋を出ていった。
「油断ならない……」
頭を抱えたクリス。
ああ……うん。なんていうか……リアさん、すごい、ね。
クリスは天蓋ベッドのカーテンを全部しっかり締め切って、その上で遮音魔導具を起動させた。
溜息をつきながらも、俺に触れる手は熱くて、俺はあっという間に息が上がる。
結局、クリスの『お仕置き』は、夕食近くまで続いた。
俺は体力は削がれたけど、痛みとかはないいつも通りな感じで。
時々、リアさんが準備していた果実水とかも飲まされたから、のどの渇きも酷くなかった。なんか、メリダさんがいるような、そんな感じがするほどの準備のよさだった。
それでもリアさんの妙にニコニコした笑顔に、ちょっと警戒したのは……仕方ないよね?
*****
「セシリア、下がれ」
を、書きたかっただけ……( ´艸`)
応援ありがとうございます!
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