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自由の国『リーデンベルグ』
24 アキは俺だけの ◆クリストフ
しおりを挟む自国でのアキの評価は低い。
本人があまり前に出たがらない性格な上に、アキの能力自体が周知させるには厄介なものだからだ。従って、一部の貴族の間では未だに『男娼』と卑下されている。
けれど、アキと接し、共に時間を過ごした者たちは、アキに全幅の信頼を寄せる。
身分に関係なく接するアキの姿が、大勢に受け入れられるのだ。
元々身分制度のない世界…国で生活していたアキには、王族だから、貴族だから、平民だからという思考がそもそもないのだ。
皆、同じ人間だから、身分での優劣をつけるのはおかしい。
その思いが現実になり始めているのはやはり魔法師団か。
魔法師長の座に就くこと、魔法師団を再編成すること。今我が国でそれが出来るのは確かにアキしかいない。けれどそれはアキと触れ合う時間が減ることと、アキを知る者が増えることにほかならない。
それでも俺は、すべてを受け入れ、すべてを飲み込み、アキを補佐していくことを選んだ。
自分の醜い嫉妬で、アキの行動を阻害してはならない。アキが悩んだとき、立ち止まったとき、力になれる存在でいなければならない。
何よりも、アキの俺への想いが変わることはないと、確信もしているから。
嫉妬はするが、それは仕方ない。アキを愛しているのだから、アキと接する時間が増えた他者に対し、その感情を抱かないなど無理な話だ。それを、表に出すかは別の話だ。
それに、アキの傍にいる者たちは、俺がアキを溺愛していることをよく知っている。余計な触れ合いはしてこないし、俺がアキを攫っても嫌な顔はされず温かく見守ってくれていた。
……だからこそ、過度な嫉妬に狂うことはないのだが。
「くりす、や、やだ、ほどいて…っ」
緩く拘束した両手首。
アキによく似合う下着の紐を解き、ただの布になったそれで、頭をもたげていたアキのペニスの根本を縛り付けた。
「や……や……っ」
「痛くはないだろ?」
「い、たくな、いけど、これ、やだぁ…っ」
羞恥で涙を流すアキが綺麗で可愛らしい。
馬車はカーテンをしているから、外から見られることもない。
「くりす…っ」
「アキ、あまり大きな声を出すと外に聞こえる」
「……っ」
真っ赤な顔でアキが口を閉じた。
涙を流しながら俺を睨みつけてくるが、全く怖くない。
「アキ」
俺がすることに口では抵抗するのに、本気で拒絶することはない。アキは無条件で俺を受け入れる。
「愛してるよ」
狭い馬車の中で、狭い座席の上で。
制服を剥き、足を開かせ、その間に体を押し込む。
唇に口付けを落とせば、頑なに閉じていた唇は徐々に開き、俺の舌を迎え入れる。
「ふ………、っ、ぅ…ぁ」
たっぷりと唾液を飲ませ、アキの舌がおずおずと応え始めた頃を見計らい、片足を持ち上げ蠢く蕾に己の滾った物を擦りつけた。
「ん、うっ」
逃げようとしたアキを抑え込み、切っ先を熱くうねる内腔に押し込んで――――一息に奥までを突き上げた。
「ひ――――っ、あ、んん、んんんっ」
あがった悲鳴は口付けで奪う。
慣らさずともアキのアナルは俺の形を覚え、先走り程度のぬめりで難なく口を開け飲み込んでいく。
アキの体がビクビク震えた。
根本を拘束しているペニスの先端からは、つぷりと雫が浮かぶだけだ。
アキが達していることはわかっている。
それでも腰を穿つことをやめない。狭い馬車内に、腰を打ち付ける破裂音が響く。
アキの閉じた目元から、幾筋も涙が落ちる。それを唇で拭い、また、嬌声を吸い取るために唇を奪った。
アキがリーデンベルグの魔法学院に通うことになった。
用意された制服に袖を通しながら、嬉しそうに笑うアキ。
……なにもそこまでする必要はないだろうと思いながらも、それを言葉にすることはできなかった。
アキが望んでいることだから、叶えてやりたい。楽しそうにしているのだから、水を差したくない。
「どんな感じかたくさん見てくるから!」
はしゃぐアキは、出かけに俺の頬に口付け、マシロを抱きしめた。
そして、レヴィの実弟であるベルエルテ伯爵と共に学院に向かった。
……だが、結局アキのことが気になってしまい、学院の視察をねじ込んでしまった。
アキは学院生の視点で見て、俺が外側から学院を見れば、無駄なく視察が出来るはずだ。
グレゴリオからも特に反対もなく、俺たちは学院へ向かった。
護衛は最低限に留め、俺の方はオットーのみを連れて行くことにした。グレゴリオも側近が二名だけだ。
学院生が萎縮しないよう、オットーたち護衛は学院の中までは入らない。
突然訪れた俺たちに対して学院長は追い返すことなく、学院長自ら学院の説明と案内をしてくれた。
アキは最高学年に所属しているため、初学年などの情報は得にくいはずだ。だから、俺が視察に来ることは理に適っている。
……アキに知られたときの言い訳のように感じ、思わず苦笑してしまった。
アキは大丈夫だろうか。嫌な思いはしていないだろうか。
俺にしては珍しく、もやもやとそんな不安を持っていたが、学院生たちが昼食を摂る食堂でアキの姿を見つけたとき、その不安は嫉妬へと色を変えた。
アキが見知らぬ男子学生と談笑していた。他にも話しかけたそうにそわそわしている者たちが大勢いる。
そして俺と目が合ったとき、アキは驚き、困ったような顔をして、すぐに目をそらした。
隣の男子学生とは楽しげに話しているのに。
……わかってる。
身分と出身を偽っているのだから、視察に来ている俺と知り合いだと思われることがまずいことだというのは、わかっている。普通の学院生としての視察が成り立たなくなるから。
……わかってはいるが、腹立たしい。俺以外に笑いかけるアキの姿も、当然のように隣りにいる見知らぬ学院生も、俺の悋気を掻き立てるには十分な要素だった。
そして極めつけが――――、訓練場で繰り返される「格好いいよ!」の、声。不特定多数に向けられた言葉だが、声は高く、目を輝かせ、まさに全身でそれを表している。
周りには若干頬を染めた者や、アキに近づこうとソワソワし始める者が出始めた。
……ああ、そうだ。
アキの言葉に計算はない。全部が素直に本心から出てくる言葉だ。だから、聞いたものに響き、受け入れられる。
それにここは魔法学院だ。魔法に関することを全肯定するアキが、嫌われるはずもない。むしろ、好意がよせられるのは、明白なことだった。
「だから、お仕置きしないとな?」
「もぉ…………や、らぁ、ゆる、して、くりす、ぉ、ねがいぃ」
「駄目だ。あんなこと言って……許せるはずがないだろ?」
「ひぁ……っ、ぁっ、んん、んんっ」
吐精できないアキのペニスは真赤になっている。
いじって甘噛を繰り返した乳首も、すでに赤い。
「これ以上『格好いい』を連呼するな。アキがそう言っていいのは俺だけだ。……わかった?」
「んぅぅ」
無邪気な笑顔を振りまいて、その笑顔に懸想する連中を増やしたくない。
アキは、俺だけのものなのだから――――
*****
クリスよ………
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