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3巻
3-3
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「そ、それは良いとして、つまりは私がお父様のところに向かうと……拘束されると?」
「ええ。本物の可能性もあるというのもあって、丁重に保護されるでしょうね。ですが、皇帝と貴女の義理の父との戦争のシロクロがつくまでは……皇帝との面通しはかなわないでしょう」
くっそ……。
義理の父に対してこんなことは思いたくはない。けど、どこまで人に迷惑をかける……ダメな大人なのっ!
義理ながら、我が父として本当に情けないよ……とほほん。
「つまりは、私はお父様に近寄ることすらできないと?」
「そういうことですね」
「でも、超高速で一気に……皇帝の野営地の本丸まで行くとかはどうなんでしょう?」
魔法で空を飛んだり、あるいはジャンプしたりね。
私ってば、走り幅跳びで数キロくらいならジャンプするのは余裕だし。
「却下です。物理防御結界が張られていますし、それを破壊した時点で皇帝は緊急転移魔法陣で安全なところに逃げるでしょう」
「じゃ、じゃあ、正面突破は? ああ、もちろん人は殺さないし、警備兵がちょっと怪我するくらいの形でなら……」
と、そこまで言って私は自分のアホさ加減に気がついた。
物理防御結界が崩された時点で緊急避難で転移しちゃうなら、騒動を起こした時点でアウトだ。
そもそも、手加減がまともにできないから、私の実力行使が難しいって話でもある。
でも、それならどうすれば?
うーん。うーん……。ダメだ。会う方法が思い浮かばない。
でも、考えてみればそりゃそうか。
相手は一国の皇帝陛下だ。娘というか、庶子とはいえ皇女という立場が使えないなら、私ごときが会えるはずもない。
しかも現在は軍事行動の真っ最中。
仮にそれなりのコネがあったとしても、今の状況では面談は不可能だろう。
「でも、それじゃあアルマさんは本当に……?」
「その通りです。もはや平和的解決は私の命を捧げることしかないのですよ」
それはダメでしょアルマさん。
やっぱり、もうこうなったら私が十万の大軍を相手に立ち回るしかない。
それで、ちょっとくらい怪我してもらうのは前提で、全員を殺さないように無力化するしか……。
いや、ダメだ。
私は日常生活での力の制御すらおぼつかない。
乱戦で殺さないように手加減なんて、そんな器用なことができるわけないよ。
「ア、アルマさん! 結論を出す前にもう少し考えましょうよ!」
「色々と考えましたが、もうこの方法しかありません。私は――残された二週間をこの小屋で平穏に暮らすことに決めたのです」
「二週間?」
「ええ。皇帝はこの国全土に総攻撃の時間を事前に触れ回っています。つまりは民間人の被害を出さないために、戦闘地域に巻き込まれそうな人は避難なさいと」
うーん、お父様……。
そこまでちゃんとしてるなら、アルマさんの話を聞いてあげてよー。
と、そこで私は「ひょっとして……」との前置きでアルマさんに尋ねてみた。
「戦闘地域を事前に知らせているってことですよね? そこまでやってるなら、進軍ルートも分かるのでは?」
「ええ、進軍ルートも当然触れ回っていますよ」
「ってことは……進軍ルートの場所によっては、私がお父様に直談判できるのでは?」
「クリスの言いたいことは……例えば、隊列が伸びきるような細い道のような場所のことですよね。その状況であれば取り巻きの警備隊列も薄くなります。それに移動中であれば転移魔法陣も使えません。ですが……当然、それも考えましたが無理でしょう」
やっぱりダメかー。
と、私はガックリと肩を落とした。
「でも、どうしてダメなんです?」
「該当しそうな場所は迷いの森……そこで一か所ありましたが、既にそこは帝国軍の支配地域です。あそこを自由に動き回れる一般人は、暴れ回る魔物を狩ったりする治安維持目的の者に限られるのです。例えば――ギルドからの討伐依頼証を持った冒険者であるとかね」
「冒険者?」
「クリスも冒険者ですがランクは最低ランクです。迷いの森における討伐依頼は、最低でもAランク以上の冒険者ライセンスがないと、受けたりはできません。無論、皇帝を待ち伏せしようものなら、許可のない怪しい者が森をうろついているということで索敵魔法の網にかかって即時に拘束されるでしょう」
「あの……アルマさん?」
「何でしょうかクリス?」
「だったら私……二週間でAランク冒険者になれば良いのでは?」
「ふふ。駆け出し冒険者がランクをAに上げるなんて馬鹿げています。最速でも五年はかかりますよ?」
「でも、私は普通じゃないですよね?」
と、そこでアルマさんは大きく目を見開いた。
「確かにそうですね……可能性はあります。これは気づきませんでした」
「ふふ、アルマさん。さっきシリアスな状況では頭は回ると言ってたじゃないですか」
ところがどっこいポンコツだ。
やっぱこの人はどこか抜けてるよなー。
そんなことを思っていると、アルマさんは恥ずかしげに首を左右に振ったのだ。
「ダメですね。この年まで生きて、大抵のことが自身の力でどうにかなる立場で居続けると――人に頼るという選択肢が無意識に頭の中から排除される傾向があるようです」
その時、アルマさんの目にうっすらと涙が溜まっていくことに私は気がついた。
「クリス、お願いします。私ではもうどうにもなりません。もしも人が傷つかない方法があるのであれば……私を助けてください」
そう言うと、アルマさんは目から涙を流し始めた。
整った顔は崩れていき、すぐに彼女はぐちゃぐちゃの顔になって私に抱き着いてきたのだった。
「アルマさん。何だかんだ言って……怖かったんですね」
「……当たり前でしょうに」
うん。やっぱ無理してたんだね。
――自分の命を捧げる。
そんなことを当たり前に考えられる人間なんて、やっぱりこの世には存在しなかった。
そりゃあアルマさんは長く生きてる。それに、人よりは達観してるところはあるかもしれない。
けれど、死ぬのはやっぱり怖い。
そして、自分でどうにもならないならば、人にも頼りたいだろう。
泣きじゃくる彼女を見て、私はそんなことを思ったのだった。
3 クリスの冒険者ギルド巡り旅 ~カメ吉最強伝説~(前編)
さて、やってきましたよ冒険者ギルド。
何度も訪れている場所だけど、今回は気合いが違う。
今までの私の冒険者活動は、お遊び感覚で特に目的もなかった。
事実として、何となくオーロラさんたちと半分遊びでやってきただけだもんね。
っていうか、力の扱い方とか、常識を習う的な意味合いでの話だったんだよ。
でも、今回は違うんだ。
私がミスれば、アルマさんが大変なことになっちゃうんだもんね。
ってことで、今回のミッションをまとめてみよう。
期限は二週間。
Fランク冒険者から、Aランク冒険者になるのが至上命令だ。
ちなみにギルド依頼の結果報告については、基本的にはどこのギルドでも受け付けている。
なので、依頼を受けてはランクアップしながら、次から次に街を渡り歩く。
そうして、最終目的地は実の父……というか、皇帝の進軍ルートである迷いの森にAランク冒険者としてたどり着くのが目的となる。
けれど、ここで問題が発生する。
私のギルドランクは現在Fなんだ。
けど、自身のギルドランク以上の依頼を受けるには、パーティーでの参加が必須だったりする。
理由については単純明快。
自身のランク以上の仕事を受けるだけでも危険なのに、しかもソロプレイとは何事だというお話だ。
ってことで――
「オーロラさん! オリヴィアさん! そういう事情なのでよろしくお願いします!」
まあ、そんなこんなで私はギルドの食事処で、無茶を承知で二人にお願いしているわけだ。
「うーむ……クリス。君の助けになりたいのはやまやまなんだがな。私には事情があってこの地を離れるわけにはいかんのだ」
「事情とはどういうことでしょうか?」
そう尋ねると、オーロラさんは苦虫を噛み潰したような表情を作った。
「私の一族が東方の島国出身ということは知っているな?」
「ええ、そういうふうに以前に聞いたことがありますね」
「実は……私の一族の目的は、かつて西方より襲来した強大な魔物を討伐することにあるのだ」
ん? どうにもワケアリって感じだね。
はてさて、これは一体どういうことなんだろう?
「ええと、具体的にはどういうことなんでしょうか?」
「そうだな。クリスになら説明しても良いだろう。その昔――東方の島国に強大にして凶悪な魔獣が出現したのだ」
「ふむふむ」
「防人として、サムライマスターとも呼ばれている我が一族の当主がいたのだが……」
おお、サムライマスター!
どうにも話が東方の国っぽくなってきたよ!
「それでだ……彼は軍勢を率いてこの魔物を逃走させることに成功した。が、たくさんの犠牲が出たのだ。そして、死亡という意味での人的被害だけではなく……都の周辺一帯に呪いがかけられてしまったのだ」
「呪いですか?」
と、そこでオーロラさんは沈痛な面持ちを作った。
「東方から定期的に手紙は届くが、今でもなかなかに酷い現況だ。呪いのせいで田園地帯は不作続き……餓死者は出ていないものの、かつての豊かな大地は見る影もない。そこで、魔獣を逃したことに責任を感じていた我が一族の長……サムライマスターより私は魔獣探索を命じられているのだ」
「……なるほど。それで?」
「最近になって、ついに奴の尻尾を掴んだのだ……魔王軍四天王の一柱、ケルベロスの気配をな」
「魔王軍四天王の一柱、ケルベロス? 物凄い大物っぽい感じのする肩書と名前ですね」
ん?
なんかケロちゃんが急に尻尾をへなって下げて、私の足にすり寄ってきたよ?
うーん……。ケロちゃん? 今は大事な話してるから大人しくしといてね。
「まあ、都の防人たちを壊滅に追い込んだ強者だからな」
「しかし、とんでもない悪者ですね。呪いもあるって話ですし、それは絶対に退治しなきゃですねっ!」
「その通りだクリス。ケルベロスは今でも、東方の民を不作の呪いで苦しめているのだからな」
そこでケロちゃんは急にブルブルと震え出した。
そうして、哀願するような瞳で私を見上げて「クゥーン……」と、何だか申し訳なさそうな感じで声をあげてきたんだ。
いや、だからケロちゃん、今は大人の話をしているからね。
あとでビーフジャーキーあげるから黙っててね。
「でも、どうやってケルベロスを見つけるんですか?」
オーロラさんは懐からコンパスを取り出した。
「この通り私は長から特殊なアイテムを授かっていてな」
「コンパスですか?」
「ああ、ケルベロスの痕跡をたどることのできるアイテムだ。それでここ最近、この地域でその反応がとんでもないことになっているのだ」
コンパスの針の先端は赤く色が塗られていて、くるくると回転している。
そこでオーロラさんが念を込めた。と、同時、コンパスの針はケロちゃんの方向を指して、ピタリと止まったのだ。
「よし、どうやらケルベロスは北の方角にいるようだな。まあ、こんなふうにこの道具は対象の大まかな位置を指し示すのだ。そして、その結果……奴はこの近辺にいると判明している」
「なるほどー。でも、オーロラさんは大変な使命を帯びていたんですね。そんなふうには全然見えませんでした」
「ああ、私の使命は西方の地にて強者を雇い、奴を八つ裂きにすることだ。あるいは、奴の所在を確定させてから後、本国に連絡して討伐隊をこの地に招き入れることとなるわけだ」
「お任せください! そんなに悪い魔物だったら、やっつけるなら私もアルマさんも協力しますよ!」
「ふふ、これは百人力……いや、一万人力の心強い援軍だな!」
「ええ、全力でぶっ飛ばしちゃいますよ! 悪い奴ならぶっ飛ばして良いってアルマさんも言ってますし!」
と、そこで私が気がついた。
どうにも、ケロちゃんの様子がおかしい。
さっきまで哀願しながら「クゥーン……」とションボリしていた感じだったのに、今ではお腹を見せて完全服従のポーズを取っている。
ちなみに、尻尾は垂れ下がってお尻の穴が完全に隠れてしまっている状態だ。
あと、全身をガクガクブルブルと震わせている。
はてさて、一体……ケロちゃんは何に怯えているんだろう?
「ところでオーロラさん。このコンパスって良くできていますね」
「そうだろう? 我が一族に伝わる家宝でもあるからな……ああ、クリスなら触っても良いぞ」
「あ、ありがとうございます」
コンパスを受け取って、マジマジと眺める。
それと同時に、赤い印の指し示す場所が物凄い勢いで変わっていく。
「めっちゃ動きますね、赤い印」
「ん? めっちゃ動く? これは遠くにいるケルベロスの大まかな方向を指し示す魔道具だぞ? 一度北を指せば、もちろん北を指し続けるはずだが……」
「え?」
疑問に思ったので、私はその場を回るように歩き始めた。
うん、やっぱりだ。
私が動くと同時に赤い印はくるくると回り、常に一定の方向を指し示している。
それはつまり――ケロちゃんの方角だった。
「何を遊んでいるのだクリス」
「遊んでません。いや……ちょっと待ってくれないですか? 私……もうちょっとで何かに気がつきそうなんです」
「気づく? 何にだ?」
「それが分からないから、もう少しで気づきそうっていう表現になっているんですよ……」
「ともかくだなクリス。それ故に私はこの地を離れることができない。おそらくはエルフの森辺りに奴が潜伏していることは確かだ」
「まあ、確かにその事情じゃ……仕方ないですよね」
打倒ケルベロス。
それは一族の悲願的な感じだろう。私のワガママに付き合わせるわけにはいかないよね。
「まあ、そういうことならオーロラさんの同行については無理強いはしません」
「すまんなクリス。私も君を助けたいのはやまやまなんだが……」
「いや、良いんですよ。だってそれって、オーロラさんの生きる目標みたいなものなんでしょう?」
そう言うと、オーロラさんは「申し訳ない」とペコリと頭を下げた。
うーん、オーロラさんは何だか複雑な表情をしているね。
どうにもオーロラさん的にも、私……というか、アルマさんの力になりたいという気持ちは本当みたい。
と、そこでケアルちゃんが声をかけてきた。
「ねえちゃーねえちゃー」
「ん? どうしたのケアルちゃん?」
「けろちゃんはけるべろすですよー?」
ん? 何を言っているのだこの子は?
ともかく、私たちは大人の話をしているんだよ。
だから、ごめんね。
ケアルちゃんとかケロちゃんみたいな、純正メルヘンワールドの住人は……今はちょっと大人しくしておいてね。
そんなことを思っていると、オーロラさんは「はてな?」と小首を傾げた。
「ケロ……ケルベロス……?」
そうして、オーロラさんは「うーむ……」と訝しげな様子でケロちゃんをマジマジと見つめ始めた。
「魔道具を返してくれクリス」
「あ、はいどうぞ」
渡すや否や、オーロラさんはコンパスの赤い印の指し示す方向を凝視し始めた。
そして、コンパスとケロちゃんを交互に見つめて、先ほどの私と同じように周囲を歩き回り始めた。
「ふーむ……」
「どうしたんですかオーロラさん?」
「クリス……。この犬を拾った経緯を教えてほしい。まさかとは思うが……」
「え? ケロちゃんとの出会いですか?」
確か、私が召喚術式か何かを使った時だったかな?
それと同時に魔王軍四天王を名乗る魔獣が現れたんだよね。
で、ケットシーさんたちとの激闘の末に、その魔獣――ケルベロスはアルマさんに魔力を封印されて、カワイイ無害な犬になったんだ。
そう、それがケロちゃんと私の馴れ初めとなる。
と、そこで私は「あっ!」と声をあげてしまった。
そうなんだ。
ケロちゃんの昔の名前とオーロラさんが追っている一族の敵の名前は一致する。それはつまり……。
「魔王軍四天王、ケルベロス……それ、ケロちゃんです!」
「何だと……っ!」
オーロラさんは驚愕の表情を作る。
そして、ほんの少しの間を置いて、腰の剣に手をかけた。
「ケルベロス……っ! 弱体化している今であれば、私の未熟な腕でも一族の悲願を達成することはできるはずだっ! 覚悟するが良い!」
ダメだ!
完全にオーロラさんは頭に血が上ってしまっている。
っていうか、ヤバいよ!
今のケロちゃんはケアルちゃんと同程度の力だから、剣なんかで斬られたら一撃で死んでしまうよ!
これはまずい! と、その時、衝撃の光景が私の眼前に繰り広げられた。
「た……助けてほしいワン」
しゃべった!
ケロちゃんがしゃべったよ! これはまさかの展開だよ!
「何!? 助けてほしいだと?」
「僕、悪いケルベロスじゃないワン!」
いやいやケロちゃん。
そんな、悪いスライムじゃないみたいなこと言っても通用しないと思うよ?
確かに今は悪いケルベロスじゃないって私は保証できる。
でも、昔のヤンチャしてた頃は悪いケルベロスだったという事実は変わらないんだもん。
人の恨みって怖いし、過去の罪って簡単には消えないんだよ?
「都の防人と貴様との勝負。これについては武人同士の勝ち負けの話だ。そこは不問にするとしても、貴様は罪なき民……その生活を支える田園に呪いをかけただろうがっ!」
「そ、それなら呪いは解除するワンっ!」
「解除だと? どうやって解除すると言うんだ!?」
「こ、こうやるワンっ!」
すると、ケロちゃんは「キャインっ!」と情けない声をあげた。
と、同時、ドス黒い拳大のオーラが東方に向けて飛び去っていったんだ。
「これで解除されたワン! 助けてほしいワン!」
いやいやケロちゃん。
オーロラさんは敵を追いかけて、東の果てからこんなところまでやってきたような人間なんだよ?
まず、本当に呪いが解除されているかどうかも分かんないからね。
しかも、そんなことだけで許してくれなんて……ムシが良すぎるよ。
初めて会った時のケロちゃんて、なんか本当に悪者みたいな感じだったし。と、なると、極悪非道の残虐ファイトが東の国で行われたことも想像に難くない。
実際に、呪いとかもかけてるしね。
っていうか、ヤバいなー。
だって、昔のこととはいえ、ケロちゃんのやらかした悪事の話だもんね。正義はオーロラさんにあるし、私としても「やめてください!」とは言いにくい。
でも……。ケロちゃんが斬られるだなんて、そんなのは絶対に無理だ。
はてさて、どうしたものかと困っていると、オーロラさんは大きく頷いた。
「ならば、問題はない! これで過去のことはすべて水に流そう!」
流しちゃうんだ!?
っていうか、そんな軽いことなの!?
「オーロラさん! 流しちゃって良いんですか!?」
「ああ。元々は……我が国の帝が、無茶な森林伐採をやったのがすべての原因だからな」
「森林伐採?」
「その通りだ。商人から賄賂を受けた京の都の貴族たち……それを発端とする無茶な都市計画による森林伐採が行われたのだ。帝と貴族は毎晩毎晩女を呼んで酒を飲んでの酒池肉林だったという。そしてその私利私欲のために森は焼かれ、獣たちは住処を追いやられ、逆らう魔獣たちは血祭りにあげられたのだ」
ん?
なんか東の国でのケルベロスの戦いって……。
私が想像しているのと違う話の流れになってきているような……?
「ええ。本物の可能性もあるというのもあって、丁重に保護されるでしょうね。ですが、皇帝と貴女の義理の父との戦争のシロクロがつくまでは……皇帝との面通しはかなわないでしょう」
くっそ……。
義理の父に対してこんなことは思いたくはない。けど、どこまで人に迷惑をかける……ダメな大人なのっ!
義理ながら、我が父として本当に情けないよ……とほほん。
「つまりは、私はお父様に近寄ることすらできないと?」
「そういうことですね」
「でも、超高速で一気に……皇帝の野営地の本丸まで行くとかはどうなんでしょう?」
魔法で空を飛んだり、あるいはジャンプしたりね。
私ってば、走り幅跳びで数キロくらいならジャンプするのは余裕だし。
「却下です。物理防御結界が張られていますし、それを破壊した時点で皇帝は緊急転移魔法陣で安全なところに逃げるでしょう」
「じゃ、じゃあ、正面突破は? ああ、もちろん人は殺さないし、警備兵がちょっと怪我するくらいの形でなら……」
と、そこまで言って私は自分のアホさ加減に気がついた。
物理防御結界が崩された時点で緊急避難で転移しちゃうなら、騒動を起こした時点でアウトだ。
そもそも、手加減がまともにできないから、私の実力行使が難しいって話でもある。
でも、それならどうすれば?
うーん。うーん……。ダメだ。会う方法が思い浮かばない。
でも、考えてみればそりゃそうか。
相手は一国の皇帝陛下だ。娘というか、庶子とはいえ皇女という立場が使えないなら、私ごときが会えるはずもない。
しかも現在は軍事行動の真っ最中。
仮にそれなりのコネがあったとしても、今の状況では面談は不可能だろう。
「でも、それじゃあアルマさんは本当に……?」
「その通りです。もはや平和的解決は私の命を捧げることしかないのですよ」
それはダメでしょアルマさん。
やっぱり、もうこうなったら私が十万の大軍を相手に立ち回るしかない。
それで、ちょっとくらい怪我してもらうのは前提で、全員を殺さないように無力化するしか……。
いや、ダメだ。
私は日常生活での力の制御すらおぼつかない。
乱戦で殺さないように手加減なんて、そんな器用なことができるわけないよ。
「ア、アルマさん! 結論を出す前にもう少し考えましょうよ!」
「色々と考えましたが、もうこの方法しかありません。私は――残された二週間をこの小屋で平穏に暮らすことに決めたのです」
「二週間?」
「ええ。皇帝はこの国全土に総攻撃の時間を事前に触れ回っています。つまりは民間人の被害を出さないために、戦闘地域に巻き込まれそうな人は避難なさいと」
うーん、お父様……。
そこまでちゃんとしてるなら、アルマさんの話を聞いてあげてよー。
と、そこで私は「ひょっとして……」との前置きでアルマさんに尋ねてみた。
「戦闘地域を事前に知らせているってことですよね? そこまでやってるなら、進軍ルートも分かるのでは?」
「ええ、進軍ルートも当然触れ回っていますよ」
「ってことは……進軍ルートの場所によっては、私がお父様に直談判できるのでは?」
「クリスの言いたいことは……例えば、隊列が伸びきるような細い道のような場所のことですよね。その状況であれば取り巻きの警備隊列も薄くなります。それに移動中であれば転移魔法陣も使えません。ですが……当然、それも考えましたが無理でしょう」
やっぱりダメかー。
と、私はガックリと肩を落とした。
「でも、どうしてダメなんです?」
「該当しそうな場所は迷いの森……そこで一か所ありましたが、既にそこは帝国軍の支配地域です。あそこを自由に動き回れる一般人は、暴れ回る魔物を狩ったりする治安維持目的の者に限られるのです。例えば――ギルドからの討伐依頼証を持った冒険者であるとかね」
「冒険者?」
「クリスも冒険者ですがランクは最低ランクです。迷いの森における討伐依頼は、最低でもAランク以上の冒険者ライセンスがないと、受けたりはできません。無論、皇帝を待ち伏せしようものなら、許可のない怪しい者が森をうろついているということで索敵魔法の網にかかって即時に拘束されるでしょう」
「あの……アルマさん?」
「何でしょうかクリス?」
「だったら私……二週間でAランク冒険者になれば良いのでは?」
「ふふ。駆け出し冒険者がランクをAに上げるなんて馬鹿げています。最速でも五年はかかりますよ?」
「でも、私は普通じゃないですよね?」
と、そこでアルマさんは大きく目を見開いた。
「確かにそうですね……可能性はあります。これは気づきませんでした」
「ふふ、アルマさん。さっきシリアスな状況では頭は回ると言ってたじゃないですか」
ところがどっこいポンコツだ。
やっぱこの人はどこか抜けてるよなー。
そんなことを思っていると、アルマさんは恥ずかしげに首を左右に振ったのだ。
「ダメですね。この年まで生きて、大抵のことが自身の力でどうにかなる立場で居続けると――人に頼るという選択肢が無意識に頭の中から排除される傾向があるようです」
その時、アルマさんの目にうっすらと涙が溜まっていくことに私は気がついた。
「クリス、お願いします。私ではもうどうにもなりません。もしも人が傷つかない方法があるのであれば……私を助けてください」
そう言うと、アルマさんは目から涙を流し始めた。
整った顔は崩れていき、すぐに彼女はぐちゃぐちゃの顔になって私に抱き着いてきたのだった。
「アルマさん。何だかんだ言って……怖かったんですね」
「……当たり前でしょうに」
うん。やっぱ無理してたんだね。
――自分の命を捧げる。
そんなことを当たり前に考えられる人間なんて、やっぱりこの世には存在しなかった。
そりゃあアルマさんは長く生きてる。それに、人よりは達観してるところはあるかもしれない。
けれど、死ぬのはやっぱり怖い。
そして、自分でどうにもならないならば、人にも頼りたいだろう。
泣きじゃくる彼女を見て、私はそんなことを思ったのだった。
3 クリスの冒険者ギルド巡り旅 ~カメ吉最強伝説~(前編)
さて、やってきましたよ冒険者ギルド。
何度も訪れている場所だけど、今回は気合いが違う。
今までの私の冒険者活動は、お遊び感覚で特に目的もなかった。
事実として、何となくオーロラさんたちと半分遊びでやってきただけだもんね。
っていうか、力の扱い方とか、常識を習う的な意味合いでの話だったんだよ。
でも、今回は違うんだ。
私がミスれば、アルマさんが大変なことになっちゃうんだもんね。
ってことで、今回のミッションをまとめてみよう。
期限は二週間。
Fランク冒険者から、Aランク冒険者になるのが至上命令だ。
ちなみにギルド依頼の結果報告については、基本的にはどこのギルドでも受け付けている。
なので、依頼を受けてはランクアップしながら、次から次に街を渡り歩く。
そうして、最終目的地は実の父……というか、皇帝の進軍ルートである迷いの森にAランク冒険者としてたどり着くのが目的となる。
けれど、ここで問題が発生する。
私のギルドランクは現在Fなんだ。
けど、自身のギルドランク以上の依頼を受けるには、パーティーでの参加が必須だったりする。
理由については単純明快。
自身のランク以上の仕事を受けるだけでも危険なのに、しかもソロプレイとは何事だというお話だ。
ってことで――
「オーロラさん! オリヴィアさん! そういう事情なのでよろしくお願いします!」
まあ、そんなこんなで私はギルドの食事処で、無茶を承知で二人にお願いしているわけだ。
「うーむ……クリス。君の助けになりたいのはやまやまなんだがな。私には事情があってこの地を離れるわけにはいかんのだ」
「事情とはどういうことでしょうか?」
そう尋ねると、オーロラさんは苦虫を噛み潰したような表情を作った。
「私の一族が東方の島国出身ということは知っているな?」
「ええ、そういうふうに以前に聞いたことがありますね」
「実は……私の一族の目的は、かつて西方より襲来した強大な魔物を討伐することにあるのだ」
ん? どうにもワケアリって感じだね。
はてさて、これは一体どういうことなんだろう?
「ええと、具体的にはどういうことなんでしょうか?」
「そうだな。クリスになら説明しても良いだろう。その昔――東方の島国に強大にして凶悪な魔獣が出現したのだ」
「ふむふむ」
「防人として、サムライマスターとも呼ばれている我が一族の当主がいたのだが……」
おお、サムライマスター!
どうにも話が東方の国っぽくなってきたよ!
「それでだ……彼は軍勢を率いてこの魔物を逃走させることに成功した。が、たくさんの犠牲が出たのだ。そして、死亡という意味での人的被害だけではなく……都の周辺一帯に呪いがかけられてしまったのだ」
「呪いですか?」
と、そこでオーロラさんは沈痛な面持ちを作った。
「東方から定期的に手紙は届くが、今でもなかなかに酷い現況だ。呪いのせいで田園地帯は不作続き……餓死者は出ていないものの、かつての豊かな大地は見る影もない。そこで、魔獣を逃したことに責任を感じていた我が一族の長……サムライマスターより私は魔獣探索を命じられているのだ」
「……なるほど。それで?」
「最近になって、ついに奴の尻尾を掴んだのだ……魔王軍四天王の一柱、ケルベロスの気配をな」
「魔王軍四天王の一柱、ケルベロス? 物凄い大物っぽい感じのする肩書と名前ですね」
ん?
なんかケロちゃんが急に尻尾をへなって下げて、私の足にすり寄ってきたよ?
うーん……。ケロちゃん? 今は大事な話してるから大人しくしといてね。
「まあ、都の防人たちを壊滅に追い込んだ強者だからな」
「しかし、とんでもない悪者ですね。呪いもあるって話ですし、それは絶対に退治しなきゃですねっ!」
「その通りだクリス。ケルベロスは今でも、東方の民を不作の呪いで苦しめているのだからな」
そこでケロちゃんは急にブルブルと震え出した。
そうして、哀願するような瞳で私を見上げて「クゥーン……」と、何だか申し訳なさそうな感じで声をあげてきたんだ。
いや、だからケロちゃん、今は大人の話をしているからね。
あとでビーフジャーキーあげるから黙っててね。
「でも、どうやってケルベロスを見つけるんですか?」
オーロラさんは懐からコンパスを取り出した。
「この通り私は長から特殊なアイテムを授かっていてな」
「コンパスですか?」
「ああ、ケルベロスの痕跡をたどることのできるアイテムだ。それでここ最近、この地域でその反応がとんでもないことになっているのだ」
コンパスの針の先端は赤く色が塗られていて、くるくると回転している。
そこでオーロラさんが念を込めた。と、同時、コンパスの針はケロちゃんの方向を指して、ピタリと止まったのだ。
「よし、どうやらケルベロスは北の方角にいるようだな。まあ、こんなふうにこの道具は対象の大まかな位置を指し示すのだ。そして、その結果……奴はこの近辺にいると判明している」
「なるほどー。でも、オーロラさんは大変な使命を帯びていたんですね。そんなふうには全然見えませんでした」
「ああ、私の使命は西方の地にて強者を雇い、奴を八つ裂きにすることだ。あるいは、奴の所在を確定させてから後、本国に連絡して討伐隊をこの地に招き入れることとなるわけだ」
「お任せください! そんなに悪い魔物だったら、やっつけるなら私もアルマさんも協力しますよ!」
「ふふ、これは百人力……いや、一万人力の心強い援軍だな!」
「ええ、全力でぶっ飛ばしちゃいますよ! 悪い奴ならぶっ飛ばして良いってアルマさんも言ってますし!」
と、そこで私が気がついた。
どうにも、ケロちゃんの様子がおかしい。
さっきまで哀願しながら「クゥーン……」とションボリしていた感じだったのに、今ではお腹を見せて完全服従のポーズを取っている。
ちなみに、尻尾は垂れ下がってお尻の穴が完全に隠れてしまっている状態だ。
あと、全身をガクガクブルブルと震わせている。
はてさて、一体……ケロちゃんは何に怯えているんだろう?
「ところでオーロラさん。このコンパスって良くできていますね」
「そうだろう? 我が一族に伝わる家宝でもあるからな……ああ、クリスなら触っても良いぞ」
「あ、ありがとうございます」
コンパスを受け取って、マジマジと眺める。
それと同時に、赤い印の指し示す場所が物凄い勢いで変わっていく。
「めっちゃ動きますね、赤い印」
「ん? めっちゃ動く? これは遠くにいるケルベロスの大まかな方向を指し示す魔道具だぞ? 一度北を指せば、もちろん北を指し続けるはずだが……」
「え?」
疑問に思ったので、私はその場を回るように歩き始めた。
うん、やっぱりだ。
私が動くと同時に赤い印はくるくると回り、常に一定の方向を指し示している。
それはつまり――ケロちゃんの方角だった。
「何を遊んでいるのだクリス」
「遊んでません。いや……ちょっと待ってくれないですか? 私……もうちょっとで何かに気がつきそうなんです」
「気づく? 何にだ?」
「それが分からないから、もう少しで気づきそうっていう表現になっているんですよ……」
「ともかくだなクリス。それ故に私はこの地を離れることができない。おそらくはエルフの森辺りに奴が潜伏していることは確かだ」
「まあ、確かにその事情じゃ……仕方ないですよね」
打倒ケルベロス。
それは一族の悲願的な感じだろう。私のワガママに付き合わせるわけにはいかないよね。
「まあ、そういうことならオーロラさんの同行については無理強いはしません」
「すまんなクリス。私も君を助けたいのはやまやまなんだが……」
「いや、良いんですよ。だってそれって、オーロラさんの生きる目標みたいなものなんでしょう?」
そう言うと、オーロラさんは「申し訳ない」とペコリと頭を下げた。
うーん、オーロラさんは何だか複雑な表情をしているね。
どうにもオーロラさん的にも、私……というか、アルマさんの力になりたいという気持ちは本当みたい。
と、そこでケアルちゃんが声をかけてきた。
「ねえちゃーねえちゃー」
「ん? どうしたのケアルちゃん?」
「けろちゃんはけるべろすですよー?」
ん? 何を言っているのだこの子は?
ともかく、私たちは大人の話をしているんだよ。
だから、ごめんね。
ケアルちゃんとかケロちゃんみたいな、純正メルヘンワールドの住人は……今はちょっと大人しくしておいてね。
そんなことを思っていると、オーロラさんは「はてな?」と小首を傾げた。
「ケロ……ケルベロス……?」
そうして、オーロラさんは「うーむ……」と訝しげな様子でケロちゃんをマジマジと見つめ始めた。
「魔道具を返してくれクリス」
「あ、はいどうぞ」
渡すや否や、オーロラさんはコンパスの赤い印の指し示す方向を凝視し始めた。
そして、コンパスとケロちゃんを交互に見つめて、先ほどの私と同じように周囲を歩き回り始めた。
「ふーむ……」
「どうしたんですかオーロラさん?」
「クリス……。この犬を拾った経緯を教えてほしい。まさかとは思うが……」
「え? ケロちゃんとの出会いですか?」
確か、私が召喚術式か何かを使った時だったかな?
それと同時に魔王軍四天王を名乗る魔獣が現れたんだよね。
で、ケットシーさんたちとの激闘の末に、その魔獣――ケルベロスはアルマさんに魔力を封印されて、カワイイ無害な犬になったんだ。
そう、それがケロちゃんと私の馴れ初めとなる。
と、そこで私は「あっ!」と声をあげてしまった。
そうなんだ。
ケロちゃんの昔の名前とオーロラさんが追っている一族の敵の名前は一致する。それはつまり……。
「魔王軍四天王、ケルベロス……それ、ケロちゃんです!」
「何だと……っ!」
オーロラさんは驚愕の表情を作る。
そして、ほんの少しの間を置いて、腰の剣に手をかけた。
「ケルベロス……っ! 弱体化している今であれば、私の未熟な腕でも一族の悲願を達成することはできるはずだっ! 覚悟するが良い!」
ダメだ!
完全にオーロラさんは頭に血が上ってしまっている。
っていうか、ヤバいよ!
今のケロちゃんはケアルちゃんと同程度の力だから、剣なんかで斬られたら一撃で死んでしまうよ!
これはまずい! と、その時、衝撃の光景が私の眼前に繰り広げられた。
「た……助けてほしいワン」
しゃべった!
ケロちゃんがしゃべったよ! これはまさかの展開だよ!
「何!? 助けてほしいだと?」
「僕、悪いケルベロスじゃないワン!」
いやいやケロちゃん。
そんな、悪いスライムじゃないみたいなこと言っても通用しないと思うよ?
確かに今は悪いケルベロスじゃないって私は保証できる。
でも、昔のヤンチャしてた頃は悪いケルベロスだったという事実は変わらないんだもん。
人の恨みって怖いし、過去の罪って簡単には消えないんだよ?
「都の防人と貴様との勝負。これについては武人同士の勝ち負けの話だ。そこは不問にするとしても、貴様は罪なき民……その生活を支える田園に呪いをかけただろうがっ!」
「そ、それなら呪いは解除するワンっ!」
「解除だと? どうやって解除すると言うんだ!?」
「こ、こうやるワンっ!」
すると、ケロちゃんは「キャインっ!」と情けない声をあげた。
と、同時、ドス黒い拳大のオーラが東方に向けて飛び去っていったんだ。
「これで解除されたワン! 助けてほしいワン!」
いやいやケロちゃん。
オーロラさんは敵を追いかけて、東の果てからこんなところまでやってきたような人間なんだよ?
まず、本当に呪いが解除されているかどうかも分かんないからね。
しかも、そんなことだけで許してくれなんて……ムシが良すぎるよ。
初めて会った時のケロちゃんて、なんか本当に悪者みたいな感じだったし。と、なると、極悪非道の残虐ファイトが東の国で行われたことも想像に難くない。
実際に、呪いとかもかけてるしね。
っていうか、ヤバいなー。
だって、昔のこととはいえ、ケロちゃんのやらかした悪事の話だもんね。正義はオーロラさんにあるし、私としても「やめてください!」とは言いにくい。
でも……。ケロちゃんが斬られるだなんて、そんなのは絶対に無理だ。
はてさて、どうしたものかと困っていると、オーロラさんは大きく頷いた。
「ならば、問題はない! これで過去のことはすべて水に流そう!」
流しちゃうんだ!?
っていうか、そんな軽いことなの!?
「オーロラさん! 流しちゃって良いんですか!?」
「ああ。元々は……我が国の帝が、無茶な森林伐採をやったのがすべての原因だからな」
「森林伐採?」
「その通りだ。商人から賄賂を受けた京の都の貴族たち……それを発端とする無茶な都市計画による森林伐採が行われたのだ。帝と貴族は毎晩毎晩女を呼んで酒を飲んでの酒池肉林だったという。そしてその私利私欲のために森は焼かれ、獣たちは住処を追いやられ、逆らう魔獣たちは血祭りにあげられたのだ」
ん?
なんか東の国でのケルベロスの戦いって……。
私が想像しているのと違う話の流れになってきているような……?
応援ありがとうございます!
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