34 / 52
ファルスカ王国王女 ファリア
噂の料理
しおりを挟む
王宮の料理人すら再現不可能な至極の料理を、料理人でもない一介の冒険者がファルスカ王国内で店を開き提供しているという噂が流れていた。
ワタシは食べることが非常に好きだ。ファルスカ王国内でわたくしの知らない料理の噂が耳に入って来れば、料理人を呼び出して店で一番高級で一番自信のある料理を作らせていた。それがどんなにマズい料理だったとしても、ファルスカ王国の食べ物は制覇しないと気が済まないのだ。
そんなわたくしの食事好きは王国中に知れ渡っている。いつしか、新作料理を出すとなったらまずわたくしに相談に来るのが、ファルスカで料理店を出すに当たっての約束になっていた。
王女のわたくしが食べたことのないファルスカ王国の料理なんてあってはならないとすら思っている。
そんなわたくしが一度も聞いたことのない料理が最近巷で出回っていると聞いたら、居ても立っても居られなくなるのは、致し方無いところだと思うのだ。
わたくしは噂を聞きつけた瞬間に部下に向かって料理人を連れてくるように命令した。そして、その回答が今しがた返ってきていた。
『ファリア王女殿下
先に仰せ付かった噂の料理の件でありますが、地下ダンジョンダルゴニア第7階層内に店を構える聖龍軒の料理のことだと判明いたしました。
王女殿下の御下命とあり、王宮への招集を掛けましたが、拒否されました。
理由は、事情により食材を地上に運べないためとのことでございます。
僭越至極ながら不肖私めには如何様にもいたしかねます。』
と走書で書かれている。伝令兵の話によれば、現在も部下たちはダンジョンダルゴニア内で店主に王宮への出頭を再三頼み込んでいるようだが、未だに拒絶されるばかりなのだそうだ。
わたくしの命令ということはつまり勅令にあたるのだが、それを断わるとはよっぽどのことだ。ダンジョンの中に店があるなら本当に食材を地上に運べないのかもしれないが、地上の食材で代用して作るとか、転移魔術をうまく使って食材やら料理をうまく移動させるとか、やりようは絶対にあるはずである。それにしたってわたくしの言うことを聞かないなんてホントに許せない。
わたくしも暇ではないのだし、こんな料理一つのことでわたくしの大事な時間を消費させられて凄く腹が立っている。それでも、やはり知らない料理は食べたくなるし、わたくしの命令に背いてまで頑なにダンジョンから出てこない店主のことも、無性に腹立たしいが、非常に気になる。
「ねぇ、ダンジョン第7階層までは行けますかしら」
侍女に聞くと、確認しますと言って出ていった。まぁ、騎士団やら冒険者やら色々と雇ったりも必要だろう。即答できないことは分かっていた。ただ、わたくしが機嫌を損なわないように周りの大人たちがワラワラと動き出すこの光景を見たかった。これが普通の反応だ。ダンジョンに店を構える店主も少しは痛い目を見た方が良い。流石にわたくし店を訪れて来たら、店主も驚いて以後はわたくしの命令を聞くに違いない。
まだ見ぬ店主の顔を想像するとわたくしも少し楽しくなっていた。
ワタシは食べることが非常に好きだ。ファルスカ王国内でわたくしの知らない料理の噂が耳に入って来れば、料理人を呼び出して店で一番高級で一番自信のある料理を作らせていた。それがどんなにマズい料理だったとしても、ファルスカ王国の食べ物は制覇しないと気が済まないのだ。
そんなわたくしの食事好きは王国中に知れ渡っている。いつしか、新作料理を出すとなったらまずわたくしに相談に来るのが、ファルスカで料理店を出すに当たっての約束になっていた。
王女のわたくしが食べたことのないファルスカ王国の料理なんてあってはならないとすら思っている。
そんなわたくしが一度も聞いたことのない料理が最近巷で出回っていると聞いたら、居ても立っても居られなくなるのは、致し方無いところだと思うのだ。
わたくしは噂を聞きつけた瞬間に部下に向かって料理人を連れてくるように命令した。そして、その回答が今しがた返ってきていた。
『ファリア王女殿下
先に仰せ付かった噂の料理の件でありますが、地下ダンジョンダルゴニア第7階層内に店を構える聖龍軒の料理のことだと判明いたしました。
王女殿下の御下命とあり、王宮への招集を掛けましたが、拒否されました。
理由は、事情により食材を地上に運べないためとのことでございます。
僭越至極ながら不肖私めには如何様にもいたしかねます。』
と走書で書かれている。伝令兵の話によれば、現在も部下たちはダンジョンダルゴニア内で店主に王宮への出頭を再三頼み込んでいるようだが、未だに拒絶されるばかりなのだそうだ。
わたくしの命令ということはつまり勅令にあたるのだが、それを断わるとはよっぽどのことだ。ダンジョンの中に店があるなら本当に食材を地上に運べないのかもしれないが、地上の食材で代用して作るとか、転移魔術をうまく使って食材やら料理をうまく移動させるとか、やりようは絶対にあるはずである。それにしたってわたくしの言うことを聞かないなんてホントに許せない。
わたくしも暇ではないのだし、こんな料理一つのことでわたくしの大事な時間を消費させられて凄く腹が立っている。それでも、やはり知らない料理は食べたくなるし、わたくしの命令に背いてまで頑なにダンジョンから出てこない店主のことも、無性に腹立たしいが、非常に気になる。
「ねぇ、ダンジョン第7階層までは行けますかしら」
侍女に聞くと、確認しますと言って出ていった。まぁ、騎士団やら冒険者やら色々と雇ったりも必要だろう。即答できないことは分かっていた。ただ、わたくしが機嫌を損なわないように周りの大人たちがワラワラと動き出すこの光景を見たかった。これが普通の反応だ。ダンジョンに店を構える店主も少しは痛い目を見た方が良い。流石にわたくし店を訪れて来たら、店主も驚いて以後はわたくしの命令を聞くに違いない。
まだ見ぬ店主の顔を想像するとわたくしも少し楽しくなっていた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
134
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる