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194 また、作りたいと思った

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 喜んでくれた、良かった、と一太はほっとした。抱きしめてくれる松島の背中に手を回して、安堵の笑みを浮かべる。ふわふわの綿が入ったジャンバーは、着るとあんなに暖かいのに、外側から触るとしゃかしゃかとして冷たかった。

「ジャンバー脱いで」

 そのまま一太を持ち上げて移動しかけた松島の背中をぽんぽん叩いて、促す。手も洗っていないじゃないか。

「あ、そうだった」

 苦笑いしながら帰宅後のいつもの手順に戻る松島に、手順を忘れるくらい喜んでくれたのかな、と一太は思う。そうならいいな。

「いただきます」

 ようやく落ち着いて手を合わせた後でコーンスープを飲んで、松島はほう、と息を吐いた。

「美味しい」
「お湯を入れただけだよ」

 よく利用している、袋の中味をマグカップに開けて、指定量のお湯を注ぐだけのコーンスープだ。

「でも、美味しい」
「うん」

 確かに美味しい。

「僕の好物ばっかりだ」
「うん。あの、カンニング……」
「カンニング?」
「陽子さんに、教えてもらった、から……」
「僕が喜ぶようにって調べてくれたんでしょ? すごく嬉しい」
「そう?」
「そうだよ」

 良かった。二人で、にこにこ、にこにこと笑いあってしまう。
 普段、松島は、一太が何を作っても、美味しい美味しい、と食べる。学食では、日替わりランチを選んでいることが多い。一番好きな料理が何なのか、という事が分かりにくかった。
 思い切って陽子さんに聞いてみたら、これらの料理を教えてくれたのだ。揚げるだけでいい冷凍のエビフライがとても美味しいのよ、とも。一太は最近、揚げるだけの冷凍ポテトってすごく美味しいな、と思っていた所だったので、ありがたく使わせてもらうことにした。手抜きしているような気がしたけれど、エビを買って自分で衣を付けるより見栄えが良くできた。値段も安かったので、これからも使わせてもらおうと思う。

「揚げただけだから、その、恥ずかしいんだけど」

 あまりに喜んで食べてくれる松島に一太が言うと、

「揚げてくれたのがすごい」

 と、褒めてくれた。
 レタスもちぎっただけ。チキンライスだって、大した手間じゃない。でも。

「美味しい。いつも美味しいけど、今日はもっと美味しい気分。僕の好きな料理を、簡単そうに作って並べてくれるいっちゃんは本当にすごい! 僕、すごく幸せだー」

 晃くんが、褒めて褒めて褒め倒してくれるから。
 こんなんでいいんだなあ、と思って。これからも、たくさん作ってあげたいな、と思う。
 幸せなのは、俺の方だ、と一太は松島を見た。来年もこのメニューを並べて、晃くんに、誕生日おめでとうと言いたいな。
 
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