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153.敬慕

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「あらあら、なぁに? ちょっと騒がしいわよ」

 そのスピナが放つ一言一言にビクビクと反応してしまう、部屋にいる者たち。それから蒼褪めていく、顔色。

 しかし今のスピナにはそんなこと、どうでも良かった。此処で何を言われようと自分が主役となれるお茶会が、自信となっている。加えてオニキスが出席しないという(出来ない日を選んだ)自分に都合の良い状況に、口元は緩むばかりだ。

「はい。奥様より仰せつかりました、ノワです。皆様、只今より私の指示に従い、動いて下さい。そして、これよりお茶会までの準備期間――勝手な行動は慎むよう願います」

 淡々と話すノワの声はか細く小さいはずなのに全員の耳に入り、頭の中で響く。ぼわっとする視界と、意識を持っていかれそうだと皆が感じ始めた、その時。

「ま、待ってください奥様! ノワ様は私たち中でも仕事が早く素晴らしい技術をお持ちですが、しかし!! この屋敷に来てからの日も浅く――『ベルメルシア家の茶会』の経験もありません。ですので――」

「ちょ、ちょっと、ラミ!!」
「へぇ~何? このスピナ様に、盾突くなんてねぇ……」
「えふっ……あ、あぁぁ、えっと」
 同僚の制止する声にハッと我に返ったラルミの瞳は恐怖で、生気を失う。

「お前は誰……何、どの立場で? んっ? この私に指図すると言うの?」
 スーッと見下したスピナの視線はまるで、刃物ナイフのようだ。
 ラルミは少しでも動けば喉元を切られるような感覚に陥り全身はその場で固まったまま、目が離せない。

(ど、どうしよう。でも、でも)
 ギュッ――。
「……ぁ」
 汗ばむ手のひらをギュッと握ったラルミはまだ微かに残るアメジストの優しさに癒しと、護りを感じる。

――そう。それでも私は、負けたくない!
「わ、わわ私は……尊きベリル様に一生仕え、亡きベリル様をお慕いする者でございます。そして」

「ほぉ、言うわね。お前、覚悟はできているんでしょうね?」

(仕えるべき御方は、自分で決めるわ!)
「い、うぅ。いえ、それでも、言わせて頂きます!! そして私が今お仕えしているのは、あーあ、あぁなたではなく……ベリル様とオニキス様が愛を育みお生まれになったお嬢様! 私の尊き御方は――アメジスト様です!!」

「なッ!? お前、今なんと!!」

 大切な思い出――かつての当主たちが築き上げてきた『ベルメルシア家の素敵なお茶会』を壊されてしまうと無意識に危機を感じたラルミは思わず、その言葉を口に出してしまったのである。
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