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突然の異世界
向き合う私
しおりを挟む次の日も私は朝からオクティマの部屋へと向かった。
「おーーい!
オクティマさん??
聞こえてますかー??」
とりあえずオクティマに呼びかけてみる。
・・・反応なし。
もともと静かな部屋がさらに静かに感じる。
だめか・・。
あまり期待はしてなかったが、他に方法も思いつかない。
この球体から声が聞こえたなんて、自分でも信じられないし可笑しいことを言ってるのかもしれない。
でも確かに聞こえたから。一度聞こえてしまったら何故なのかどうしても気になってくる。
暫く話しかけてみたが相変わらず反応はなかった。
「もう!
あんなに話しかけてきたくせに!
あれは何だったの??」
話しかけるのにも疲れてオクティマにもたれかかる。ぼーっと天井を見ながらどうするか考えていた・・はずなのに気づくと日本でのことを思い出していた。
毎朝決まった時間に出社して、必死に働いてそれでもうまくいかなくて、それでも必死に働いて、、
何かに怯えるように、追われるように、、
私は、自分が役立たずだと思われることが怖い。
誰かの役に立たなければ、必要とされなければ置いていかれる。
上司に、同僚に、仲間に、友人に、最愛の人に。
頑張らなきゃひとりぼっちになる。
もう、優しく微笑んでくれる院長先生はいない。
お前はいらない子だと、価値なんかないと思われることが何よりも怖い。
小さい頃は、寂しくても院長先生がいれば何も怖くなかった。
でも私が成長していくにつれて、院長先生は年老いていった。それなりに友達もいたけど寂しさは埋められなくて、どんなに笑っていても心は空虚だった。
家族や友達に囲まれてキラキラ笑う・・皆が当たり前にある幸せが私にはないと妬んでいた。
今はもうそんな風に羨ましがったりすることはないけれど、たまにどうしても心が苦しくて苦しくて泣きたくなる。
しーんと静まりかえった部屋で小さくうずくまる。
あのときのように。
自分という存在がどんどん小さくなる。
「役に立たなきゃ意味なんかない」
ぼそっと呟いた。
そっと眼を開けると、足元に草原が広がる。
あれ?
私、外にいたんだっけ?
何だか頭がぼんやりする。
周りを見渡してみるが、薄い霧がかかっていて数歩先も見えない。
草原と霧が広がる世界をぼんやり眺めていると、
薄靄の中に誰かがいることに気づいた。
男性なのか女性なのかもわからない。
誰か分からないけど、不思議と怖さもなくそれどころか何故か心が温かい。
誰なの?
言葉にしたはずなのに声は出ない。
その人影は何か伝えようとしているのか、口を動かしている。
眼を細めてみても輪郭はぼんやりとしていて、よく見えない。
なに?
何て言っているの?
あなたは誰?
次第に足元の草原が流れる。
その誰かはだんだんと遠くなる。
待って!あなたは誰?
その人影の口元がまた動く。
ア・・
ア・・イ・・?
「・・・さん」
「ア・・イさん」
「アオイさん!!」
はっと気づくと目の前には、焦る顔のミズキくんがいた。
「アオイさん、大丈夫?
なかなか意識が戻らなかったから」
どうやら、あのまま寝てしまったみたいだ。頭はぼーっとしているのに心臓はバクバクと音を立てている。
「あ、うん。。
大丈夫。寝ちゃってたみたい・・」
へらっと笑いながらミズキくんを見上げる。
「うん、よかった。
体調でも悪いのかと思って・・
心配した」
はあーと息をつきながら隣に座って安心したように笑うミズキくん。
顔が火照ってくるのが分かる。
いや、いや、チョロすぎだよ。わたし。
そ、そんなことより
「なんでミズキくんがここに?
もしかしてもうかなり遅い時間なの?」
オクティマの部屋には時計も窓もないから、
時間経過がわからない。
昨日は何となくお昼かな?と推測して部屋から出てきていた。
寝ている間にかなりの時間が経ってしまったのかもしれないと焦る。
「今は夕方17時ごろだから大丈夫だよ。
今日の訓練が終わって夕食を一緒にどうかなと思ってアオイさんを探してたら、執事のネロさんに会ってここを教えてくれたんだ」
・・・なるほど。
ミズキくん。ごめん。
大丈夫じゃない。
貴重な一日がただ寝て終わってしまったよ!
明日は国王陛下が城へ戻る日!
私の存在価値を証明をする日!
何もできずに終わった。。
頭を抱える私に
「アオイさん?大丈夫?」
とミズキくんがまたもや心配そうに私を見つめる。
「もしかして、嫌かな。。
僕と一緒に夕食。1人の方が気楽に食べられるし・・そうだよね」
少し悲しそうに俯くミズキくんが目に入った瞬間、
ガシっとミズキくんの手首を掴む。
「そんなわけないでしょ。
絶対一緒にご飯食べます」
ほぼ本能で応えたせいで謎の宣言をしてしまった。
またまた顔が熱くなる。
「ふふ。
うん!一緒にご飯食べよ」
たがらミズキくん、その笑顔は反則だよ。。
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