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昔話

⑥昔話、くろ

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 あれから、暖かくなったり、雨が降ったり、寒くなったり、色々変わっていった。

 時々花を持って、兄弟達の寝ている場所にいってくれた。

 なんで、花を持っていくのかなって思ったけど、これは挨拶なんだよって、教えてくれた。
 花を持っていって、今きたよと寝ている人に挨拶する。
 大事なことだと教えてくれた。

 そうやって、時々兄弟が寝ている所と、もう一つの場所に花を持っていく。
 なんだろうと思ったら、ここには、大事な人がいるんだよっていってた。

 大事な人?  兄弟達みたいなのかな。季節が変わる折々に、咲いている花を摘んで持っていった。


 季節が変わり、ちょっと大きくなった。
 いっしよに畑に行ったり、沢に行って魚取ったり。夜になったら僕は見張り番して、畑の獣を追い払って。そうやって、二人で暮らしていった。

 食べるものもあんまりない時もあったし、少し寒くなる前には、色んなものがいっぱいあって、お腹いっぱいになることもあった。


 何回か季節が巡り、多少は人の言っていることも、わかるようになってきた。
 畑の見回りをしている時に、他の村人の話が聞こえてきた。

「他の場所で、洪水があった」
「水源近くのここでもそのうち」
「他の村でずっと雨が降っている」
「ここにもそのうち降るのかも」

 そんな話だった。洪水がなんなのかわからないけど、良くない気配はしていたと思う。
 話をしている人達は、みんな暗い顔をして、あまりいいことだとは思えなかった。


 それでも、ずっと二人で暮らしていけると思う。
 だって今は、雨は降ってないし、
 食べるものだってあるから、困ってないし大丈夫。


 そう思ってた。僕は。




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