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幕間 シルヴィー 後編
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※残酷な描写(主に虐待に関する描写)があります。
苦手な方はプラウザバックしてください。幕間は読んでいなくても本編に支障はありません。
ルーク。私達の愛の結晶なのだから、きっと希望の光になると思った。だから、産まれる前にルークって名前を付けた。
だけど、生まれてきたのは、無表情で反応もない冷たい子どもだった。
子どもってニコニコしてるものじゃないの?
しかも、無表情なだけでも恐ろしいのに、子どもの周りでは怪奇現象ばかり起きた。
コップが持ち上がったり、椅子が動いたり……気味が悪かった。
あまりに立て続けに起こるから子どもを連れてクリフォードに相談した。でも、クリフォードは……。
「子育ては君の仕事だろう? 何故、俺に相談するんだ?」
「え、だって、私達の子どもでしょう?」
「そうかもしれないが……なぁ? このつまらない話をいつまですればいいんだ?
シルヴィー、君がやるべき事を私に押し付けようとしてないか?」
「えっ……違うわ! ただ私、貴方と……!」
その時、私はもしかしたら初めてクリフォードの顔をよく見たかもしれない。
クリフォードは……うんざりした顔をしていた。
私への愛が目減りしていっている目をしていた。
私は慌てて言い直した。
「ご、ごめんなさい……私が間違っていたわ。
ただどうすればいいか誰にも相談出来なくて……ここの人達、みんな冷たいし。
頼れる人、貴方しかいないから」
ようやく目減りしていたそれが止まる。でも、ほっと出来たのも束の間だった。
「そうか。私だけか、私だけしかいないのか」
「え、えぇ、だから、助けてほ……」
「1人で頑張ってくれ」
「…………え?」
私はただ呆然となった。当然のように、常識のように、そう語る彼に、私の心のどこかが壊れた気がした。
「なに、言って……」
「だから、1人で頑張ってくれ。私の仕事ではないから、子育てなんて知らないしな。俺ではシルヴィーの助けにはならないよ」
「えっ、えっ、でも、相談ぐらいは聞いてよ……。それか、一緒に子育てを学ぼうよ、そしたら……」
「シルヴィー?」
また私への愛が目減りしてる。私を残念なものでも見る目で見てる。冷たくて、冷たくて、怖い……。
私の体は震えて仕方がなかった。
私の王子様、こんなだったっけ……?
「シルヴィー、面倒くさいよ? いつもの私を称えて褒めて愛してくれる君はどこに行ったんだ?
そんなに子どもがうるさいなら、殴ればいい。あんなの黙らせるなんて簡単なんだ。
この話は終わりだ。つまらない。
そんなのより君には大切な事があるだろう?」
「大切な事……?」
「ほら? 私を理解している君なら分かるだろう?
私を愛せよ。子どもが産まれてからずっと私を放ったらかしで本当悪い子だよな、君は。前みたく私に尽くしてくれ。出来るだろう?」
「……っ」
この人は本当に心の底から子どもなんてどうでもいいんだ……。いや、もしかしたら、私すらもどうでもいいのかもしれない。自分さえ良ければ良くて、それ以外どうでも良くて……。
そんな……! 私の王子様はどこに行ったの? 真実の愛だって言っていたのに、この人にとって、私、私……私は……。
頭が真っ白になって、その後、どうクリフォードと過ごしたか分からない。
どうにか子どもを連れて部屋に戻った。
そこで私の部屋がいつの間にか子ども部屋になってることに気づいた。
散乱したオムツ、何枚も重なった汚れた布巾、ごみ捨ても行けずに積まれているゴミ袋、汚れたまま放置されたベビーベッド……そして、誰もいない冷たい空気。
脳裏にぬるま湯のようなあの生活が蘇る。
いつも綺麗な私の部屋。キラキラ光る化粧道具、クローゼットいっぱいのひらひらのドレス、テーブルの上に置かれたツヤツヤしたケーキ、いつもふわふわにしてくれていたベッド……そして、優しい温かい神官長様達……。
「シルヴィー、今日も頑張ったね」
「一緒にお茶でもどうかしら?」
優しい声がする。私の好きな声が……。
「……私、全部、間違えた」
そう言葉にすれば止まらなかった。
「全部、全部……! 間違えた!
クリフォードは王子様じゃなかった!
真実の愛なんてなかった!
私、全部、間違えたの!
熱が欲しかった! でも、私、こんな、こんな汚いのは欲しくなかった!
私、ただ、ただ幸せになりたかった!
こんなの違う! 違うの!
誰か助けて……私を優しい世界に連れてって! 私はこんなの望んでない! 誰か……!」
……私は子どもみたいに泣いた。
ゴミ屋敷みたいな部屋で一人ぼっちでずっと……。
そんな時、子どもが珍しく泣いた。
うるさかった。
私が悲しんでいるのが分からないのが腹が立った。
私が泣いているのだから、空気読んでよ。
だから、私は……。
子どもを叩いた。
叩いたら、叩いた分だけ、子どもは泣いた。
でも、一頻り泣いたらすぐ黙った。
静かになった。
私はほっとした。
熱も消えていつの間にか冷めちゃった世界、せめて静かであって欲しかった。
クリフォードの言葉は正しかったんだと心の底から思った。
でも、何にもよくならなかった!
それから怪奇現象は酷くなった。ガタガタと音を立てて家具が私に向かって飛んできたり、突然、冷たい水を浴びせられたり、散々だった。
怪奇現象の度に叩いた。
叩いたら終わった。
でも、暫くしたらまた何か起こる。
床に散らばった布巾が襲ってきたり、花瓶が私に向かって落ちてきたり……。
次第に私は子どもを子どもだと思えなくなっていった。恐ろしくて仕方がなかった。
普通の子どもじゃない。私が産んだのは悪魔だったと気づいた時には、私は、私は……気が狂っていた。
「もういやぁぁぁっ!!」
私に熱々の料理が降り掛かった夜だった。
屋敷の侍女の人達は、やけどして汚れた私なんか一瞥もしないで床に散乱した料理を片付けるだけ。私を心配することもなかった。
その場に居合わせたクリフォードは私が鈍臭いから料理を頭から被ったと思ったみたいで、早く湯浴みしたら?と不快そうに言った。
子どもの姿をした悪魔は泣いていなかった。でも、無表情に私を見つめてきた。
誰も優しくない。誰も助けてくれない。誰も……私を……。
「……もう、いや……こんなのあんまりよ……」
こんなの耐えられない。でも、国王陛下の言葉が過ぎる。
私はクリフォードから捨てられたら終わり……。
ここから追い出されたら、もっと酷いことになる。
だから、逃げるなんて出来なかった。でも……。
私は子どもを見た。
これさえ、これさえいなくなればマシになる?
私の不幸は全部これのせい!
何が真実の愛よ! みんなから嫌われて、悪魔しか産まない愛なんて愛じゃない!
せめて、これだけはどうにかしなくちゃ。
でも、どうすれば……。悪魔の殺し方なんて分からない。聖女の頃に習ったのは人の救い方だけ。悪魔を倒す方法なんて分からない。
大体そんな汚れるようなことしたくない。
そんな時、脳裏に浮かんだのが、マリィというクリフォードの奥さんになった人だった。
1度だけ彼女が本邸にやってきた時、こっそり見た。
とっても美人な人。元は男爵令嬢って聞いたけど公爵夫人にぴったりな雰囲気の人だった。でも、クリフォードとも険悪だし、望んで公爵家に嫁いだわけじゃないみたい。
その人なら……この悪魔を代わりに殺してくれるかも……。
クリフォードも公爵家も嫌いなら、この悪魔も嫌いなはず。私は聖女だから殺せないけど、その辺の人間である彼女なら殺せるはず。
私の代わりに汚れてくれるはず……。
私は悪魔を彼女に押し付けた。
彼女から何度か手紙が来たけど、全部無視した。きっと引き取りに来いって言っているんだと思う。何を言われても絶対に引き取るなんて嫌! あんな悪魔、存在するだけで不幸になる。
無視し続けたら次第に連絡が来なくなった。
死んだかもしれない。
私はほっとした。
クリフォードは子どもがいなくなったことに気づきもしなかった。
子どもを手放したことでクリフォードに怒られるかもと思って罪悪感から私が何度か打ち明けようとしても、君が考えることだと言って聞いてくれなかった。
本当にどうでもいいみたいだった。
今となってはそれがありがたかった。
もう誰も私にあの悪魔を見ろって言われない。
私はクリフォードに愛されることだけ考えたらいい。
気分を損ねないように、捨てられないように……。
私は終わりたくないの……。
そう思っていたのに、クリフォードは次第にマリィを気にかけるようになっていった。
あれだけマリィから嫌われているのに、クリフォードには私より魅力的に見えるみたい。
真実の愛はどこに行ったの?
私達は運命じゃないの?
私の王子様は……どうして……。
耳障りの良い言葉だけ並べて身体でも何でも使って彼を引き止める。
マリィの方には行かないように私は頑張った。
そしたら、また子どもが出来た。
どうして?
望んでない。
確かに子供を欲しいってクリフォードに言った。でも、それはクリフォードの気を少しでも良くするためで、ただの方便でしかなかった。
それに、避妊薬だってちゃんと飲んだのに。
流れて欲しいって何度願ってもダメだった。
私はクリフォードのいないところで泣くしかなかった。
国王陛下の言葉をまた思い出す。
「国民も、シスターも、神官長も、そして……神も……君を悪だと判断した。
君なんて誰も好きじゃないし大嫌いだ。
君は嫌われた。嫌われるようなことをした。人が嫌うことをした……」
神様……。
そう、神様。私が聖女だった頃、ずっと祈っていた相手……。
神様、私、あの暖かい場所に戻りたいの。
でも、どうして叶えてくれないの?
もう戻れないぐらい貴方に嫌われたの?
だから、私、こんなに不幸なの……?
私、それだけ悪いことをしたってこと……?
苦手な方はプラウザバックしてください。幕間は読んでいなくても本編に支障はありません。
ルーク。私達の愛の結晶なのだから、きっと希望の光になると思った。だから、産まれる前にルークって名前を付けた。
だけど、生まれてきたのは、無表情で反応もない冷たい子どもだった。
子どもってニコニコしてるものじゃないの?
しかも、無表情なだけでも恐ろしいのに、子どもの周りでは怪奇現象ばかり起きた。
コップが持ち上がったり、椅子が動いたり……気味が悪かった。
あまりに立て続けに起こるから子どもを連れてクリフォードに相談した。でも、クリフォードは……。
「子育ては君の仕事だろう? 何故、俺に相談するんだ?」
「え、だって、私達の子どもでしょう?」
「そうかもしれないが……なぁ? このつまらない話をいつまですればいいんだ?
シルヴィー、君がやるべき事を私に押し付けようとしてないか?」
「えっ……違うわ! ただ私、貴方と……!」
その時、私はもしかしたら初めてクリフォードの顔をよく見たかもしれない。
クリフォードは……うんざりした顔をしていた。
私への愛が目減りしていっている目をしていた。
私は慌てて言い直した。
「ご、ごめんなさい……私が間違っていたわ。
ただどうすればいいか誰にも相談出来なくて……ここの人達、みんな冷たいし。
頼れる人、貴方しかいないから」
ようやく目減りしていたそれが止まる。でも、ほっと出来たのも束の間だった。
「そうか。私だけか、私だけしかいないのか」
「え、えぇ、だから、助けてほ……」
「1人で頑張ってくれ」
「…………え?」
私はただ呆然となった。当然のように、常識のように、そう語る彼に、私の心のどこかが壊れた気がした。
「なに、言って……」
「だから、1人で頑張ってくれ。私の仕事ではないから、子育てなんて知らないしな。俺ではシルヴィーの助けにはならないよ」
「えっ、えっ、でも、相談ぐらいは聞いてよ……。それか、一緒に子育てを学ぼうよ、そしたら……」
「シルヴィー?」
また私への愛が目減りしてる。私を残念なものでも見る目で見てる。冷たくて、冷たくて、怖い……。
私の体は震えて仕方がなかった。
私の王子様、こんなだったっけ……?
「シルヴィー、面倒くさいよ? いつもの私を称えて褒めて愛してくれる君はどこに行ったんだ?
そんなに子どもがうるさいなら、殴ればいい。あんなの黙らせるなんて簡単なんだ。
この話は終わりだ。つまらない。
そんなのより君には大切な事があるだろう?」
「大切な事……?」
「ほら? 私を理解している君なら分かるだろう?
私を愛せよ。子どもが産まれてからずっと私を放ったらかしで本当悪い子だよな、君は。前みたく私に尽くしてくれ。出来るだろう?」
「……っ」
この人は本当に心の底から子どもなんてどうでもいいんだ……。いや、もしかしたら、私すらもどうでもいいのかもしれない。自分さえ良ければ良くて、それ以外どうでも良くて……。
そんな……! 私の王子様はどこに行ったの? 真実の愛だって言っていたのに、この人にとって、私、私……私は……。
頭が真っ白になって、その後、どうクリフォードと過ごしたか分からない。
どうにか子どもを連れて部屋に戻った。
そこで私の部屋がいつの間にか子ども部屋になってることに気づいた。
散乱したオムツ、何枚も重なった汚れた布巾、ごみ捨ても行けずに積まれているゴミ袋、汚れたまま放置されたベビーベッド……そして、誰もいない冷たい空気。
脳裏にぬるま湯のようなあの生活が蘇る。
いつも綺麗な私の部屋。キラキラ光る化粧道具、クローゼットいっぱいのひらひらのドレス、テーブルの上に置かれたツヤツヤしたケーキ、いつもふわふわにしてくれていたベッド……そして、優しい温かい神官長様達……。
「シルヴィー、今日も頑張ったね」
「一緒にお茶でもどうかしら?」
優しい声がする。私の好きな声が……。
「……私、全部、間違えた」
そう言葉にすれば止まらなかった。
「全部、全部……! 間違えた!
クリフォードは王子様じゃなかった!
真実の愛なんてなかった!
私、全部、間違えたの!
熱が欲しかった! でも、私、こんな、こんな汚いのは欲しくなかった!
私、ただ、ただ幸せになりたかった!
こんなの違う! 違うの!
誰か助けて……私を優しい世界に連れてって! 私はこんなの望んでない! 誰か……!」
……私は子どもみたいに泣いた。
ゴミ屋敷みたいな部屋で一人ぼっちでずっと……。
そんな時、子どもが珍しく泣いた。
うるさかった。
私が悲しんでいるのが分からないのが腹が立った。
私が泣いているのだから、空気読んでよ。
だから、私は……。
子どもを叩いた。
叩いたら、叩いた分だけ、子どもは泣いた。
でも、一頻り泣いたらすぐ黙った。
静かになった。
私はほっとした。
熱も消えていつの間にか冷めちゃった世界、せめて静かであって欲しかった。
クリフォードの言葉は正しかったんだと心の底から思った。
でも、何にもよくならなかった!
それから怪奇現象は酷くなった。ガタガタと音を立てて家具が私に向かって飛んできたり、突然、冷たい水を浴びせられたり、散々だった。
怪奇現象の度に叩いた。
叩いたら終わった。
でも、暫くしたらまた何か起こる。
床に散らばった布巾が襲ってきたり、花瓶が私に向かって落ちてきたり……。
次第に私は子どもを子どもだと思えなくなっていった。恐ろしくて仕方がなかった。
普通の子どもじゃない。私が産んだのは悪魔だったと気づいた時には、私は、私は……気が狂っていた。
「もういやぁぁぁっ!!」
私に熱々の料理が降り掛かった夜だった。
屋敷の侍女の人達は、やけどして汚れた私なんか一瞥もしないで床に散乱した料理を片付けるだけ。私を心配することもなかった。
その場に居合わせたクリフォードは私が鈍臭いから料理を頭から被ったと思ったみたいで、早く湯浴みしたら?と不快そうに言った。
子どもの姿をした悪魔は泣いていなかった。でも、無表情に私を見つめてきた。
誰も優しくない。誰も助けてくれない。誰も……私を……。
「……もう、いや……こんなのあんまりよ……」
こんなの耐えられない。でも、国王陛下の言葉が過ぎる。
私はクリフォードから捨てられたら終わり……。
ここから追い出されたら、もっと酷いことになる。
だから、逃げるなんて出来なかった。でも……。
私は子どもを見た。
これさえ、これさえいなくなればマシになる?
私の不幸は全部これのせい!
何が真実の愛よ! みんなから嫌われて、悪魔しか産まない愛なんて愛じゃない!
せめて、これだけはどうにかしなくちゃ。
でも、どうすれば……。悪魔の殺し方なんて分からない。聖女の頃に習ったのは人の救い方だけ。悪魔を倒す方法なんて分からない。
大体そんな汚れるようなことしたくない。
そんな時、脳裏に浮かんだのが、マリィというクリフォードの奥さんになった人だった。
1度だけ彼女が本邸にやってきた時、こっそり見た。
とっても美人な人。元は男爵令嬢って聞いたけど公爵夫人にぴったりな雰囲気の人だった。でも、クリフォードとも険悪だし、望んで公爵家に嫁いだわけじゃないみたい。
その人なら……この悪魔を代わりに殺してくれるかも……。
クリフォードも公爵家も嫌いなら、この悪魔も嫌いなはず。私は聖女だから殺せないけど、その辺の人間である彼女なら殺せるはず。
私の代わりに汚れてくれるはず……。
私は悪魔を彼女に押し付けた。
彼女から何度か手紙が来たけど、全部無視した。きっと引き取りに来いって言っているんだと思う。何を言われても絶対に引き取るなんて嫌! あんな悪魔、存在するだけで不幸になる。
無視し続けたら次第に連絡が来なくなった。
死んだかもしれない。
私はほっとした。
クリフォードは子どもがいなくなったことに気づきもしなかった。
子どもを手放したことでクリフォードに怒られるかもと思って罪悪感から私が何度か打ち明けようとしても、君が考えることだと言って聞いてくれなかった。
本当にどうでもいいみたいだった。
今となってはそれがありがたかった。
もう誰も私にあの悪魔を見ろって言われない。
私はクリフォードに愛されることだけ考えたらいい。
気分を損ねないように、捨てられないように……。
私は終わりたくないの……。
そう思っていたのに、クリフォードは次第にマリィを気にかけるようになっていった。
あれだけマリィから嫌われているのに、クリフォードには私より魅力的に見えるみたい。
真実の愛はどこに行ったの?
私達は運命じゃないの?
私の王子様は……どうして……。
耳障りの良い言葉だけ並べて身体でも何でも使って彼を引き止める。
マリィの方には行かないように私は頑張った。
そしたら、また子どもが出来た。
どうして?
望んでない。
確かに子供を欲しいってクリフォードに言った。でも、それはクリフォードの気を少しでも良くするためで、ただの方便でしかなかった。
それに、避妊薬だってちゃんと飲んだのに。
流れて欲しいって何度願ってもダメだった。
私はクリフォードのいないところで泣くしかなかった。
国王陛下の言葉をまた思い出す。
「国民も、シスターも、神官長も、そして……神も……君を悪だと判断した。
君なんて誰も好きじゃないし大嫌いだ。
君は嫌われた。嫌われるようなことをした。人が嫌うことをした……」
神様……。
そう、神様。私が聖女だった頃、ずっと祈っていた相手……。
神様、私、あの暖かい場所に戻りたいの。
でも、どうして叶えてくれないの?
もう戻れないぐらい貴方に嫌われたの?
だから、私、こんなに不幸なの……?
私、それだけ悪いことをしたってこと……?
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