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家族が増えました

第407話

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 皆に続いてお店に入る、その前にキーちゃんから降りないとね。

「キーちゃんありがとうね」
「うるる」

 では店内を覗いてみよう。

『じいすっごいねぇ』
「スーパーじじだ」
「ありがとうございます」

 遅れて店に入ったらシャムスとアー君が執事長さんを絶賛していた。
 奥行きがあるね、狭さがファンタジーっぽくて楽しい!

 ひやりとした空気は肉を傷めないためのもの、分かる。
 入口付近はウィンナーやハム、様々な肉の加工食材が綺麗に並べられ、その一角には肉料理のレシピ本が陣取っていた。

 奥へ進むとカウンターとショーケース。
 カウンターなのだろうか、なんか血塗れなんですけど。

「おぅ次」
「はいっ!」

 人がいた。
 気付かなかったけど人がいました。

 一振りで魔物を屠れるような肉切り包丁を片手に、スキンヘッドのおじさまが魔物の肉を捌いているところでした。
 その後ろで子供がせっせと肉を運んだり、スライムに渡したり……スライム?

 カウンターではなく肉の加工台、ショーケースはスライムの仕事場だった。
 渡された肉を体内でこねこねして排出、ひき肉の出来上がり。
 シャムス、この子うちにも欲しい。

 ウィンナーやハムもやけに綺麗な形だと思ったけど、まさかあれもスライム製?
 どこまで万能なんだろう、ドリちゃん並みに性能が広がっている気がする。

『お仕事スライム』
「おみくじで当てたのか、艶もいいし相当可愛がられてるなコイツ」

 艶どころか大きさも二倍になってない?
 おみくじで当たるスライムって確かみんな掌サイズだよね、この子両手で持っても溢れそうな大きさだよ。
 あっ、分離した。

 本体から離れたスライムはショーケースから出ると、カウンターに向かって魔法を放って血を綺麗に消し去った。
 おじさまが一つ頷き、次の肉を台の上に置いて捌く。
 連携が完璧ですね。

「きゅぅぅぅん」
「今日は見学だけだからね」

 アカーシャの一言にエムとローが絶望的な表情で固まった。
 肉を前に見るだけは、確かにこの子達には辛いかもねー。

「母さん、あっちの棚は埋まったよ」
「わかった」

 ……今、なんて?
 まぁいい、次に行こう、次だ。

 さらに奥に足を進めたら顎が外れそうになった。

「吹き抜け? んんん?」

 えぇぇ。
 二階があるんですけど。

 螺旋階段を使って上がってみたら、飲食スペースになっておりました。
 ここって異世界だよね、海外のマーケットじゃないよね!?

 建物の外観と中の構造が合わない、あれこの技術?って刀国内では当たり前なの?

『おやつひとつー』
「メニューはないのか?」
「ははは、まだ開店しておりませんよ」

 一番近くのテーブルに座ろうとしたシャムスとアー君はさっと回収され、再びお兄ちゃんの背中に戻されていた。
 今の執事長さんの動き、見えなかったのですが。

「うん、イメージ通りのデザインだね、いつ頃開店出来るかな」
「一両日中には」

 現実逃避が間に合わない。
 アカーシャが凄いのか、執事長さんが凄いのか、何だかよく分からなくなってきた。

「奥様が足を運ぶ必要はありません、肉が欲しければ足を運ばせれば良いのです」

 その発想はなかった。
 シェル君、とりあえずお肉を売る事は出来そうだよ。

 小上がりの和風スペースもあり、そちらはもふもふズも利用可能。
 開店前から利用客にカウントされておる……。
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