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13話

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はい?
シルヴィアに手渡された服に首をかしげた。
出掛けるわよと言われてまず連れていかれたのがシルヴィアの執務室だった。
差し出されたのはタイトなワンピース。

「着替えて。その妙な服で出掛けられるのは困るわ」

シルヴィアが言っているのは美南が着てきていたシャツと、ベルゴッドが持ってきた布の巻きスカート。
やっぱりこの格好は可笑しいのだ。

「大丈夫よ、私のだから……兄が選んだものよりはマシだからね」

着てみてと言われて躊躇う。

「もう少し大人しいデザインのものはありませんか?出来ればズボンとか……」
「騎士団の制服以外にズボンは無いわね!大人しいデザインでしょ?」

何処が!?
美南は発狂しそうになる。
確かに足元まで隠れる長さの裾。
マキシ丈のワンピースだが、胸元と背中が広く開いたデザインなのだ。
これに合わせるのは同系色のボレロだが、それでも胸元は見えてしまう。
シルヴィアみたいに整った容姿ならば気にも留めない事なのだろうが、美南にとってはあり得ない。

「大丈夫よ、そんなにサイズは変わらないわよ!着るだけでもいいから着てみなさい」

そう言われてしまうと、美南は元来の日本人なのだ。
イエスマン。
着たくは無いが、強く言われてしまうと美南は諦めてシャツを脱いだ。

「あら、不思議な下着!」

シルヴィアが近い距離でこちらを見てくる。

「繊細な刺繍なのね…これはどうなってるの?」

肩紐を触ったりあろうことかパチンと金具を外される。

「きゃあっ!」

初めて上げた悲鳴。
次の瞬間、入口の扉か開いてそこにいたのはベルゴッド。

「……あ」

止まった時間。
慌てて美南は胸を隠したが、見られたかもしれない……いや、昨夜の事を考えれば見られているのだろうけれど……。

「す、すまないっ!!」

かなりの大音量で謝罪したベルゴッドは、バタンと大きな音を立てて廊下に出た。
他に見た人がいなければ良いのだが…
それにしても……シルヴィアを睨むと、女同士だもの大丈夫よね?と、まるで気にもとめていない。
下着を返して貰うとつけ直してからワンピースを身につける。
胸元は問題ないがやはり露出度が高い。
あまり気はのらなかったが、自分が着ていたシャツを着てからその上にワンピース。
昔流行った重ね着みたいに見えるが仕方ない。

「あら、面白いわね……」

シルヴィアが背中のリボンを調節して結び直してくれた。
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