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母娘丼W003 天使たちのピンチを救う

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№3 天使たちのピンチを救う

 入社の挨拶をして1ヶ月。仕事にはまだ慣れない。覚えることがいろいろあって、日々の研修内容に追われていた。与えられたことを、何とかこなすのが精いっぱいの新人研修期間だった。

 1ヶ月の新人研修が終わり、今日は初めての平日休み。これから毎週金曜が俺の平日休みだ。

 近所のスーパーに買い出しに行って、食材を買い込んで来た。
 この研修期間の1ヶ月は、コンビニ弁当や外食ばっかりだったから、自炊もしっかり始めないとな。親戚の伯父さんちの洋食屋でのバイトで、いろいろ仕込まれたから料理はかなり得意だし。

 買い出しを終えて帰宅途中、公園に差し掛かると、何やら子供たちが揉めている。喧嘩か?っておい、男子3人に囲まれてるのって、社宅の両隣の部屋に住む天使ふたりじゃんか!
 そう言えば、ジェニファーさんやニコルさんが言ってたいじめっ子の男子3人組があいつらかな。とっちめてやる。
 俺はスマホの録音ボタンを押して、揉めてる子供5人のところに行った。

「お前、生意気なんだよ。」
「生意気って何よ。悪口言うのやめなよって言っただけでしょ。」なるほど、男子3人組に食って掛かってるのは活発で面倒見のいいアリスちゃんね。悪口を言われたプリシラちゃんを庇っているところか。
「悪口じゃねぇよ。ほんとのことじゃん。」
「銀髪に紅眼って、吸血鬼だろ。」
「吸血鬼じゃないもん!」おっと、引っ込み思案で人見知りの激しいプリシラちゃんも、流石に言い返したね。
「そうよ。」
「うるせぇな。ゲームじゃそうなんだよ。」
「金髪の碧眼だって、呪いの人形じゃないか。」
「私たちをゲームの話と一緒にしないでよ。」
「やーい、吸血鬼に呪いの人形!」
「「やーい、吸血鬼に呪いの人形!」」
 リーダーっぽいのに合わせて、子分ふたりが天使たちを冷やかした。もはや許せん!クソガキどもめ、とことん追い込んでやる。

「おい、クソガキども、男3人で女の子ふたりをいじめるとは、お前ら、ゲームに出て来るチンピラの雑魚キャラかよ。」
 ゲームの話で天使たちに絡んでたいじめっ子の男子3人組に、ゲームの話で切り返してやった。真っ赤になるクソガキ3人組。お、怒ったね。いや、図星で恥ずかしいのかな?

「お前、何なんだよ。」「関係ねぇだろ?」
「俺?お前らの好きなゲーム的には、雑魚キャラのお前たちをやっつけるヒーローキャラでしょ。」
 くすっとアリスちゃんとプリシラちゃんが笑って、クソガキ3人組がヒートアップした。
「この野郎。俺は、議員の息子だかんな。」
「「そうだぞ。」」
「なるほどねぇ。お前のお父さんは議員さんで偉い訳だ。でもな、偉いのはお父さんだろ?お前が偉い訳じゃないよな。お前みたいのを何て言うか知ってるか?虎の威を借る狐って言うんだぜ。覚えとけよ。」
「なんだと?」
「それとお前らふたり。こいつの子分なの?こいつさ、威張ってるけど、こいつが偉いんじゃなくて、こいつのお父さんが偉いんぜ。偉くもないこいつの子分なの?だっせー。」
「「なんだと?」」

「さて、お前ら3人よく聞けよ。今のやり取りはこのスマホで録音している。これがどう言うことか分かるか?」俺はスマホを取り出して見せた。RECの赤いマークが点灯している。
「「「え?」」」
「まずな、お前のお父さんの議員事務所に行くだろ。で、『お宅のお子さん、男子3人掛りで女の子ふたりをいじめてましたよ。』って言ってこの音声データを聞かせる訳。お前のお父さん、どうすると思う?」
「…。」そりゃ答えられないわな。
「でさ、議員の息子がいじめっ子ってどうよ?お前のお父さんの立場ないよなぁ。そうそう、お前さ、リコールって知ってるか?お前のお父さん、お前のせいでリコールされて、議員をクビになっちゃうかもよ。」
「え?」

「それといじめてた内容な。容姿のことを口にしてたから、これって外国人差別になるんだよ。議員の息子が差別発言をするってことは、議員自身が差別意識を持ってるって世間は評価するだろうな。マスコミにこの録音データをリークしちゃおうか?お前のお父さんの議員生命は終わりだな。」
「お父さんは差別なんかしない。」
「でもお前がしてるじゃん。髪の色がどうとか、眼の色がどうとかってさ。息子が差別発言をするのはそう言う教育を親がしたからだって世間は思うんだよ。こうなるとな、事実なんかどうでもよくて、噂がほんとのこととして世間から信じられちゃうんだぜ。」
「うー。」

「それからこの音声データをネットにばらまいちゃおうか?あっという間に拡散されてお前ら3人、この町の人たちから雑魚キャラ認定な。もうどっか遠いとこに引っ越すしかないんじゃない?」
「「「やめて!」」」
「じゃあネットにばらまくのは待ってやるからさ、まずはこの子たちに謝れ。」
「「「ごめんなさい。」」」
「それとな、交番に行って自首しろよ。『僕たち、同級生の女の子ふたりをいじめました。逮捕して下さい。』って言ってな。それができなきゃ、お前の父親の議員事務所に行くし、ネットに流すし、マスコミにもリークしてやる。」
「「「うわーん、ごめんなさい。許してー。」」」クソガキ3人組が泣き出した。どうせウソ泣きだろうけどな。

「はいはい、クソガキは泣けば何とかなると思ってるのな。でも世間はそんなに甘くないの。この子たちふたりが悪口言うのやめてって言ったとき、お前ら悪口言うのやめたっけ?」
「「「うわーん!」」」泣きまね?が強くなった。ほんとに泣いてるのかな?どっちでもいいけどな。
「返事しないんだ。シカトされちゃったから早速ネットに流しちゃおうかなー。」
「待って!」「ごめんなさい。」
「うう…、ひっく…、交番に…ぐすっ…行きますぅ。」議員の息子は観念したようだな。てことは子分ふたりもな。
「よし、俺が付いて行って、お前らが交番に自首するところをしっかり見届けてやる。」
「「「ううう。」」」

「ジョージさん、もう許して上げてくれませんか?」
「反省しているみたいだし、謝ってくれたから、許してもいいです。」
 クソガキ3人組を追い込んでいた俺に、天使ふたりがストップを掛けて来た。
「アリスちゃんとプリシラちゃんは許すんだ。やさしいねぇ。」
 3人の顔がぱぁっと明るくなったが…、

「でも俺は許さないよ。この子たちのためにね。ここで多少なりとも痛い目を見とかないと、この子たちはまた同じ過ちを繰り返すからね。ふたりをいじめなくなっても、ほとぼりが冷めたら別の誰かをいじめるだろうね。交番に自首して、逮捕されて、罰を受けないと心底懲りないよ。」
 ずーんと、落ち込むクソガキ3人組。
「それとさ、さっきふたりに謝ったのだって、悪口言ったのを反省したからじゃなくて、自分たちの悪さが明るみに出るのが嫌だからでしょ。自首して刑務所に行って…、あ、子供だから少年院か。しっかり反省して来ればいいんじゃないかな。なまじ情けを掛けると、この子たちの更生の機会を奪っちゃうことになるよ。分かった?」
「「はい。」」

「じゃぁクソガキども、交番に行こうか。」
 アリスちゃんとプリシラちゃんとは公園で別れ、クソガキ3人組を交番の手前まで連行した。

 クソガキどもが交番に自首するのを見届けた俺は、そのまま自宅に帰った。

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 メインの2作品はファンタジーで、ラブコメはこの作品が初めてです。

 本日は1時間おきに5話投稿します。明日は19時から1時間おきに4話投稿します。

 以下の2作品も合わせてよろしくお願いします。
「射手の統領」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/541586735
「精霊の加護」https://www.alphapolis.co.jp/novel/121143041/836586739

 カクヨム様、小説家になろう様にも投稿します。

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