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次期社長と紡ぐ未来のために
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立花さんに別れを告げてから二週間が過ぎた。
いまだに胸の痛みも和らぐことなく、心にぽっかりと穴があいたみたいだ。
偽装恋愛を解消した時とは比にならないぐらい気持ちが沈んでいた。
会社で立花さんを見かけるたびに胸が痛む。
自分から言い出したことなんだから、私が傷つく資格はないだろうと何度も言い聞かす。
でも、ことあるごとに立花さんと過ごした日々を思い出してしまう。
仕事終わりに私の部屋に来て、手料理を美味しそうに食べてくれた。
優しい笑顔で『梨音ちゃん』と呼んでくれた。
立花さんの腕の中は温かくて居心地がよかった。
本当に毎日が楽しくて幸せだった。
別れた直後は会社を辞めて、どこか立花さんのいないところに行ってしまおうかなんて考えた。
だけど、私が辞めたことを知った立花さんが自分を責めてしまうかもしれない。
それだけは駄目だと思い、踏みとどまっている。
立花さんの縁談、進んでいるんだろうか。
もし、彼の結婚が決まれば私はおとなしく会社を去ろうと思う。
さすがに、そこまで居座れる根性は私には持ち合わせていない。
「……の、河野!」
「へ?」
「お前、大丈夫か?」
隣りの席の宮沢が心配そうに聞いてくる。
「何が?」
「何がって、自分のパソコンの画面を見て見ろよ」
そう言われ、画面を見て驚愕した。
打ち込んだ文章の途中から画面には「t」の文字が並んでいた。
「あっ……」
「何かあったのか?最近の河野、変だぞ。やたら残業しているだろ。一生懸命仕事に取り組んでいる姿勢はいいけど、無理してないか?」
「無理なんてしてないよ。いろいろと思いついた企画を忘れないうちに形にしたいなと思ってるだけだから」
確かに宮沢の言う通り、仕事ばかりしていた。
これといった趣味があるわけではないので、気を紛らわせるものがない。
仕事に逃げる訳ではないけど、何かに打ち込んでいたら立花さんのことを考えなくても済むんだ。
「それならいいけど。あと、玲奈もお前の元気がないって心配してる」
玲奈が?
私の変化に気づいて心配してくれる同期がいてくれたことに嬉しさを覚える。
それと同時に申し訳なさもある。
「心配してくれてありがとう。でも、何でもないから」
私は笑顔を浮かべた。
「本当か?」
「ホントだよ。そうだ!久々に同期会しようよ。最近、やってないよね」
「それならいいけど。そうだな、またみんなで予定を合わせて決めようか」
「うん」
私も落ち込んでばかりはいられない。
少しでも前を向いていかなきゃ。
心配してくれる頼もしい同期がいてくれるだけで救われた気持ちになった。
そういえば、宮沢は普通に玲奈って呼んでるよね。
二人が上手くいっている証拠で喜ばしいことだ。
私は気持を切り替え、まずはパソコンの画面の「t」の字を消していった。
いまだに胸の痛みも和らぐことなく、心にぽっかりと穴があいたみたいだ。
偽装恋愛を解消した時とは比にならないぐらい気持ちが沈んでいた。
会社で立花さんを見かけるたびに胸が痛む。
自分から言い出したことなんだから、私が傷つく資格はないだろうと何度も言い聞かす。
でも、ことあるごとに立花さんと過ごした日々を思い出してしまう。
仕事終わりに私の部屋に来て、手料理を美味しそうに食べてくれた。
優しい笑顔で『梨音ちゃん』と呼んでくれた。
立花さんの腕の中は温かくて居心地がよかった。
本当に毎日が楽しくて幸せだった。
別れた直後は会社を辞めて、どこか立花さんのいないところに行ってしまおうかなんて考えた。
だけど、私が辞めたことを知った立花さんが自分を責めてしまうかもしれない。
それだけは駄目だと思い、踏みとどまっている。
立花さんの縁談、進んでいるんだろうか。
もし、彼の結婚が決まれば私はおとなしく会社を去ろうと思う。
さすがに、そこまで居座れる根性は私には持ち合わせていない。
「……の、河野!」
「へ?」
「お前、大丈夫か?」
隣りの席の宮沢が心配そうに聞いてくる。
「何が?」
「何がって、自分のパソコンの画面を見て見ろよ」
そう言われ、画面を見て驚愕した。
打ち込んだ文章の途中から画面には「t」の文字が並んでいた。
「あっ……」
「何かあったのか?最近の河野、変だぞ。やたら残業しているだろ。一生懸命仕事に取り組んでいる姿勢はいいけど、無理してないか?」
「無理なんてしてないよ。いろいろと思いついた企画を忘れないうちに形にしたいなと思ってるだけだから」
確かに宮沢の言う通り、仕事ばかりしていた。
これといった趣味があるわけではないので、気を紛らわせるものがない。
仕事に逃げる訳ではないけど、何かに打ち込んでいたら立花さんのことを考えなくても済むんだ。
「それならいいけど。あと、玲奈もお前の元気がないって心配してる」
玲奈が?
私の変化に気づいて心配してくれる同期がいてくれたことに嬉しさを覚える。
それと同時に申し訳なさもある。
「心配してくれてありがとう。でも、何でもないから」
私は笑顔を浮かべた。
「本当か?」
「ホントだよ。そうだ!久々に同期会しようよ。最近、やってないよね」
「それならいいけど。そうだな、またみんなで予定を合わせて決めようか」
「うん」
私も落ち込んでばかりはいられない。
少しでも前を向いていかなきゃ。
心配してくれる頼もしい同期がいてくれるだけで救われた気持ちになった。
そういえば、宮沢は普通に玲奈って呼んでるよね。
二人が上手くいっている証拠で喜ばしいことだ。
私は気持を切り替え、まずはパソコンの画面の「t」の字を消していった。
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