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次期社長と紡ぐ未来のために
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企画書をまとめる為に一時間ぐらい残業し、片づけを済ますとバッグを手に席を立った。
「お先に失礼します」
企画部のフロアを出ると更衣室に向かい、ロッカーからコートとマフラーを手に取った。
マフラーを首に巻きながらエレベーターホール向かうと、そこには高柳課長と立花さんの姿があった。
二人は雑談していて、私は思わず足を止めた。
「そういえば、最近は手作り弁当は食べてないらしいな」
高柳課長の言葉にドキッとする。
私がいることに気づいていないから盗み聞きしているみたいで居心地が悪いけど、二人の会話が気になることも事実だ。
「それがどうしたんだよ」
「いや、彼女ともう別れたのかと思って」
「何で弁当を食べてないだけでそんな風に思うんだ。大きなお世話だよ。それに彼女とは別れていない」
えっ、彼女とは別れていない?
キッパリと言い放つ立花さんの言葉に唖然とした。
「だったら喧嘩中か?」
「別に喧嘩なんてしてないよ。お前、そのミーハーなところ改善しろ。顔と言動が合ってないんだよ」
「翔真、それは失礼だろ。あ、河野さん今帰り?」
私に気づいた高柳課長が笑顔で声をかけてきた。
気まずくて立花さんの顔が見れない。
「はい。お疲れさまです」
「気をつけて帰りなよ。翔真、行こうか」
私はお辞儀をして二人の横をドキドキしながら通り過ぎた。
エレベーターのボタンを押すとすぐにポーンという音と共にドアが開き、それに乗り込む。
正面を向くと、立花さんがまだその場に立ち止まってこちらを見ていた。
(あれ、高柳課長と向こうに行ったはずでは?)
久しぶりに立花さんと目が合い、胸が騒ぐ。
彼は何かを決意したような強い眼差しを私に向けてきて、視線を逸らすことができない。
どうしてそんな目で私を見るんだろう。
「おい、翔真。何してるんだ?」
高柳課長に呼ばれた立花さんが顔をそちらに向けると、エレベーターの扉が閉まった。
高鳴る気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
さっきの立花さんの表情は何?
どうして彼女と別れていないと言ったんだろう。
私たちは別れたはず……だよね?
もう私の頭の中はグチャグチャだ。
キャパオーバーになった私はあれこれ考えることを放棄し、会社を出て駅に向かう。
街中はクリスマスムード一色だ。
イルミネーションがキラキラと輝いている。
立花さんと付き合っている時、クリスマスはお互いにプレゼント交換しようという話をしていた。
だけど、今となってはそれは叶わぬ夢。
はぁ、と白い息を吐きながら見上げた夜空は澄みきっていて、星が綺麗に輝いている。
そういえば、花火大会の日に立花さんと見た空を思い出す。
あぁ、まただ……。
ことあるごとに立花さんのことを思い出してしまう。
この胸の痛みはいつになったら癒えるんだろう。
冷たい風にブルリと震え、マフラーに顔を埋めて家路へと急いだ。
「お先に失礼します」
企画部のフロアを出ると更衣室に向かい、ロッカーからコートとマフラーを手に取った。
マフラーを首に巻きながらエレベーターホール向かうと、そこには高柳課長と立花さんの姿があった。
二人は雑談していて、私は思わず足を止めた。
「そういえば、最近は手作り弁当は食べてないらしいな」
高柳課長の言葉にドキッとする。
私がいることに気づいていないから盗み聞きしているみたいで居心地が悪いけど、二人の会話が気になることも事実だ。
「それがどうしたんだよ」
「いや、彼女ともう別れたのかと思って」
「何で弁当を食べてないだけでそんな風に思うんだ。大きなお世話だよ。それに彼女とは別れていない」
えっ、彼女とは別れていない?
キッパリと言い放つ立花さんの言葉に唖然とした。
「だったら喧嘩中か?」
「別に喧嘩なんてしてないよ。お前、そのミーハーなところ改善しろ。顔と言動が合ってないんだよ」
「翔真、それは失礼だろ。あ、河野さん今帰り?」
私に気づいた高柳課長が笑顔で声をかけてきた。
気まずくて立花さんの顔が見れない。
「はい。お疲れさまです」
「気をつけて帰りなよ。翔真、行こうか」
私はお辞儀をして二人の横をドキドキしながら通り過ぎた。
エレベーターのボタンを押すとすぐにポーンという音と共にドアが開き、それに乗り込む。
正面を向くと、立花さんがまだその場に立ち止まってこちらを見ていた。
(あれ、高柳課長と向こうに行ったはずでは?)
久しぶりに立花さんと目が合い、胸が騒ぐ。
彼は何かを決意したような強い眼差しを私に向けてきて、視線を逸らすことができない。
どうしてそんな目で私を見るんだろう。
「おい、翔真。何してるんだ?」
高柳課長に呼ばれた立花さんが顔をそちらに向けると、エレベーターの扉が閉まった。
高鳴る気持ちを落ち着けようと深呼吸した。
さっきの立花さんの表情は何?
どうして彼女と別れていないと言ったんだろう。
私たちは別れたはず……だよね?
もう私の頭の中はグチャグチャだ。
キャパオーバーになった私はあれこれ考えることを放棄し、会社を出て駅に向かう。
街中はクリスマスムード一色だ。
イルミネーションがキラキラと輝いている。
立花さんと付き合っている時、クリスマスはお互いにプレゼント交換しようという話をしていた。
だけど、今となってはそれは叶わぬ夢。
はぁ、と白い息を吐きながら見上げた夜空は澄みきっていて、星が綺麗に輝いている。
そういえば、花火大会の日に立花さんと見た空を思い出す。
あぁ、まただ……。
ことあるごとに立花さんのことを思い出してしまう。
この胸の痛みはいつになったら癒えるんだろう。
冷たい風にブルリと震え、マフラーに顔を埋めて家路へと急いだ。
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