次期社長と訳アリ偽装恋愛

松本ユミ

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気づきたくなかった気持ち

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意識が浮上し目を開けた。
起き上がり、ぐっと伸びをしながらあくびをする。

平日はスマホのアラームをかけているけど、休日は自然に目が覚めるまで寝ている。
そんな今日は土曜日だ。

風邪で熱を出したのは先週のこと。
やっぱり健康が一番だと実感すると同時に、立花さんの優しさが心に染みた。
心細かったので甘えすぎたかなという思いはあるけど。

時計を見ると、十時過ぎ。
昨日は映画を観ていて夜更かしをしたので、いつも以上に寝てしまった。

カーテンを開けて飛び込んできた眩しい光に目を細めた。
昼から何をしようかぼんやりと考える。
天気もいいし洗濯が済んだら買い物にでも出かけよう。
そうと決まれば活動開始だ。

家の用事を済ませると、朝昼兼用のご飯を食べたあと服を着替えた。
花柄のトップスに黒のサテン生地のマーメイドスカート。
メイクはいつものナチュラルメイク。
靴はバックストラップのサンダルを履いて部屋を出た。

夏の日差しが容赦なく照りつける。
こんな真っ昼間に出掛けたら暑いに決まってる。
まぁ、夏だから暑いと文句を言っても仕方ない。
折り畳みの日傘をさしていても額にうっすら汗が滲み、ハンドタオルで拭きながら歩く。

最寄りの駅に着くと電車に乗り、大型ショッピングモールのある駅で降りた。
この駅は通勤でも利用している。
駅から歩いて十分のとろこにショッピングモールがあり、いろいろ見て回った。

ファンデーションが残り少なくなっていたので購入したり、気に入った服を試着してみたりして買い物を楽しんでいたらあっという間に時間は過ぎて夕方になっていた。
休憩のためベンチに座ってコーヒーを飲んでいたら、スマホに玲奈から着信があった。

「もしもし」
『もしもし梨音!あー、出てくれてよかった。今って暇?何してるの?』

矢継ぎ早に言われ、若干戸惑いながら答える。

「今は一人で買い物してるけど」
『じゃあ、この後の予定は?』
「買い物が済んだら帰るだけだけど」
『お願い、助けて!』

焦ったように言う玲奈。
しかも助けてとか、ただ事じゃないのかも知れない。

「どうしたの?なにがあったの?助けてってどういうこと?」
『私を助けると思って、十八時に会社の最寄り駅の銅像の前に来て!』
「だから、一体何があったの?」
『今は何も聞かないで。待ってるから絶対に来てね。お願いよ、約束だからね』
「あ、玲奈っ」

ツーツーツーという機械音が流れる。
今は何も聞かないでってどういうことだろう。
一応、電話をかけ直すと留守電に繋がった。
ホントに意味が分からなくて疑問ばかりが浮かぶ。

強引に押しきられ、断ることも出来なかった。
このあとの予定がないからいいけど。
取りあえず、言われた場所に行けばいいってことか。
約束の時間まであと少し、荷物を家に置いてくるのは時間的に無理だろう。
時間になるまでベンチでボーっとすることにした。
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