109 / 259
第15章 四家vs.アーネスト軍団
イチャイチャしてたらムカついた
しおりを挟む
ぼーっとした顔のまま、いきなり涙腺が決壊した僕に仰天した双子は、
「どうした!? どっか痛いのか! それとも腹減ったか!?」
「馬鹿寒月! てめえが乱暴に扱うからだ!」
「マジか! すまん! よしよし、痛いの痛いの飛んでけ~」
などと大騒ぎして、ああでもない、こうでもないと言いながら、宝ものみたいに丁寧に僕を抱き上げると、「あそこの暖炉が一番でかい」「焼き菓子も置いてあったはず」と応接間に運んでくれた。
……いや、寒くてひもじいから泣いたわけじゃないからね?
いくら僕でも、愛する人たちとようやく再会できた瞬間、「お腹がすいた」と泣き出したりしないよ。どんな大人だ。
でも暖かな部屋で上着を脱がせてもらって、暖炉の前にいくつも置かれたクッションに腰をおろして、左右から双子に肩と腰を抱かれるうちに、ようやく『日常』を取り戻せたのだという安堵が実感を伴って押し寄せてきた。
なんだか無闇に涙が浮かんでくるので、双子がお菓子を食べさせようとするのを断り、気になっていたことを尋ねた。
「本当にもう大丈夫なの? 頭痛は?」
「おう、そうなんだよ! 頭痛って立派な武器だよな。頭が痛いだけで、あれほどつらいとは。本体は痛みに呻いてるのに、ちんこだけは元気にいきり勃ってるしよ。そのうちひとり勃ちしたコイツが、俺を置いて旅立つんじゃないかと……わりと本気で考えたぜ……」
「そんなことを……。よっぽどつらかったんだね……」
寒月と僕のやり取りを聞いていた青月は、「共感できん」と呟いたけど、
「だが俺はアーネストと会えたら、いつの間にか頭痛も消えたぞ」
とろけそうなほど優しい微笑みを見せてくれて。うう、ドキドキする。
すると寒月も、「俺だって!」と愉快そうに笑った。
「アーネストは存在自体が癒しだよ」
垂れ目のイケメンの甘い笑顔も、破壊力が凄すぎる……!
いやいや、うっとり見惚れてないで、大事な話をせねば。
「きみたちはおそらく、レイオウとコチネクトを使った危険な催淫薬を飲まされていたんだ。だからあとで必ず、解毒薬を飲んでね?」
「アーネストが飲めと言うなら、猛毒でも飲んでやる」
そんなことを言ってチュッと唇をついばんできた寒月に、「もうっ」と怒ってやったけど……我ながら声に力がこもってない。
いつだって元気と体力の塊みたいな双子に、異変が起きていると聞いてから、ずーっと、石を飲み込んだみたいに重苦しかった。
それに加えて令嬢たちの突撃裸祭りで。
本当に気が気じゃなかった。
だから今こうして、すっかり元通りの二人の腕の中で、何度も何度もキスを求められるのが、本当に幸せで……。
「……体調はいつから回復していたの?」
キスの合間に尋ねると、双子は僕の頭上で視線を交わした。
「「いつだっけ」」
「おぼえてないほど日が経ってるの!?」
思い出しながら語った双子によると、頭痛は離宮に来てからずっと続いていたものの、躰の重だるさは繁殖期に入って四日目辺りから軽減したらしい。
令嬢たちが忍び込んできた一度目は、まだ上手く躰が動かなかった。しかし二度目からは意識も明瞭だったという。
ただ、繁殖期は通常より長く続いたままだったし、令嬢たちが迫って来るしで、『これは薬物を盛られている』と気づいた二人は、打ち合わせたわけでもないのに同様に、
「その後も躰がだるいフリをしておいた」
だそうだ。
そのほうが令嬢たちも油断して、敵方の情報を漏らすんじゃないかと。
「絶対あいつらのオヤジが支援してるに決まってると思ってよ。けど肝心なことは言わねえのよなー。子種がどうのと、人のちんこ握ってハアハアするばっかりでよ」
「俺も遠慮なく罵ってやったが、感情的になってボロを出すということも無かったな。子種をくれと騒いで、人のちんこの上でハアハアするばかりだった」
うんうんと頷き合う双子は、僕があぜんとして二人を見ていることに気づいていない。
「……ということは、きみたち、抵抗できたの……?」
ゆっくりと確かめるように問うと、寒月はものすごく得意そうに答えた。
「おう、当然だ! あんなん、いつでもどけようと思えばどけられた。ま、暇つぶしだな。どうせ繁殖期で部屋から出られんかったしよ。馬鹿ヅラ晒して盛ってる奴らを見物してた」
……何なんだ、その『どうよ、褒めてくれ』と言わんばかりの顔は。
僕がどんどん不機嫌になっていることに、彼はまったく気づいていない。
「僕はきみたちのことが心配で、胸が潰れそうだったのに……その頃きみたちは、裸族の人たちにあえてちんこを触らせたり、またがらせたりしていたわけか……」
低く呟くと、青月はさすがに察したらしく、あわてて付け加えた。
「誤解しないでくれ、アーネスト。情報を得るためだ。そして俺たちは交尾行動は一切していない。女どもを跳ねのける以外は触れていないし、勃っていたのも薬のせいだ。奴らに性的興奮をおぼえたわけでは無いぞ、絶対に!」
じっとりと青月を見つめ返す僕を見て、寒月も『やばい』とようやく気づいたらしい。「そ、そうだぞ!」とあわてて言い募った。
「どれほどデカいパイオツを揺らされようが、股間を押しつけられようが、俺たちはずーっと、お前だけを抱きたいと思ってた。お前の平らな胸と桃尻と、やたら綺麗なちんこほどエロ尊いものは、ほかの誰とも比較になら」
「もがーっ!」
思わず奇声を発して、寒月の口を手でふさいだ。
僕のちんこ評をしてほしいわけじゃない! 顔から火が出そうだ。
わかってる。
理性では二人の言いたいことも、二人の誠実さも、よくわかってる。
でも、でも。
あの生々しい裸族……令嬢たちの躰が、双子に触れたのかと考えると。
双子のぶ厚い筋肉に覆われた胸に、彼女たちが頬を寄せたり、逞しい腕や脚に自分たちのそれを絡みつけたり、おまけに、おまけに、秘すべきところを全部見せあって、あろうことか、ちんこを好きに触らせていたのかと思うと……!
「て、抵抗できないから、供物になったんだと思ってたのにー!」
思わず叫んだら、またもぽろっと涙がこぼれた。
双子は「供物!?」とギョッとしているが、かまっていられない。
「きみたちも『同意の上だった』と彼女たちが言っても、そんなわけ、ないって、し、信じてたんだよ!? それなのにっ、う、うあぁぁぁ」
なんだこれ。どうしてこんなに号泣しているんだ僕は。
泣くことないだろう……でも泣けて泣けてしょうがない。
毒を盛られても動じない双子まで血相を変えて、
「ギャーッ! すまん! ほんとごめんなさい、俺らが悪かった!」
「反省する。二度と誰にも触れさせない。そうだよな、嫌だよな。ごめん」
「同意はほんとにしてないから……」
「頼むから泣かないでくれ……」
おろおろしながら謝られると、余計に泣けてきてしまう。
なぜこんなに泣いてるのか、自分でもわからない。
僕って奴は……ほんと、どんな大人だ……。
「どうした!? どっか痛いのか! それとも腹減ったか!?」
「馬鹿寒月! てめえが乱暴に扱うからだ!」
「マジか! すまん! よしよし、痛いの痛いの飛んでけ~」
などと大騒ぎして、ああでもない、こうでもないと言いながら、宝ものみたいに丁寧に僕を抱き上げると、「あそこの暖炉が一番でかい」「焼き菓子も置いてあったはず」と応接間に運んでくれた。
……いや、寒くてひもじいから泣いたわけじゃないからね?
いくら僕でも、愛する人たちとようやく再会できた瞬間、「お腹がすいた」と泣き出したりしないよ。どんな大人だ。
でも暖かな部屋で上着を脱がせてもらって、暖炉の前にいくつも置かれたクッションに腰をおろして、左右から双子に肩と腰を抱かれるうちに、ようやく『日常』を取り戻せたのだという安堵が実感を伴って押し寄せてきた。
なんだか無闇に涙が浮かんでくるので、双子がお菓子を食べさせようとするのを断り、気になっていたことを尋ねた。
「本当にもう大丈夫なの? 頭痛は?」
「おう、そうなんだよ! 頭痛って立派な武器だよな。頭が痛いだけで、あれほどつらいとは。本体は痛みに呻いてるのに、ちんこだけは元気にいきり勃ってるしよ。そのうちひとり勃ちしたコイツが、俺を置いて旅立つんじゃないかと……わりと本気で考えたぜ……」
「そんなことを……。よっぽどつらかったんだね……」
寒月と僕のやり取りを聞いていた青月は、「共感できん」と呟いたけど、
「だが俺はアーネストと会えたら、いつの間にか頭痛も消えたぞ」
とろけそうなほど優しい微笑みを見せてくれて。うう、ドキドキする。
すると寒月も、「俺だって!」と愉快そうに笑った。
「アーネストは存在自体が癒しだよ」
垂れ目のイケメンの甘い笑顔も、破壊力が凄すぎる……!
いやいや、うっとり見惚れてないで、大事な話をせねば。
「きみたちはおそらく、レイオウとコチネクトを使った危険な催淫薬を飲まされていたんだ。だからあとで必ず、解毒薬を飲んでね?」
「アーネストが飲めと言うなら、猛毒でも飲んでやる」
そんなことを言ってチュッと唇をついばんできた寒月に、「もうっ」と怒ってやったけど……我ながら声に力がこもってない。
いつだって元気と体力の塊みたいな双子に、異変が起きていると聞いてから、ずーっと、石を飲み込んだみたいに重苦しかった。
それに加えて令嬢たちの突撃裸祭りで。
本当に気が気じゃなかった。
だから今こうして、すっかり元通りの二人の腕の中で、何度も何度もキスを求められるのが、本当に幸せで……。
「……体調はいつから回復していたの?」
キスの合間に尋ねると、双子は僕の頭上で視線を交わした。
「「いつだっけ」」
「おぼえてないほど日が経ってるの!?」
思い出しながら語った双子によると、頭痛は離宮に来てからずっと続いていたものの、躰の重だるさは繁殖期に入って四日目辺りから軽減したらしい。
令嬢たちが忍び込んできた一度目は、まだ上手く躰が動かなかった。しかし二度目からは意識も明瞭だったという。
ただ、繁殖期は通常より長く続いたままだったし、令嬢たちが迫って来るしで、『これは薬物を盛られている』と気づいた二人は、打ち合わせたわけでもないのに同様に、
「その後も躰がだるいフリをしておいた」
だそうだ。
そのほうが令嬢たちも油断して、敵方の情報を漏らすんじゃないかと。
「絶対あいつらのオヤジが支援してるに決まってると思ってよ。けど肝心なことは言わねえのよなー。子種がどうのと、人のちんこ握ってハアハアするばっかりでよ」
「俺も遠慮なく罵ってやったが、感情的になってボロを出すということも無かったな。子種をくれと騒いで、人のちんこの上でハアハアするばかりだった」
うんうんと頷き合う双子は、僕があぜんとして二人を見ていることに気づいていない。
「……ということは、きみたち、抵抗できたの……?」
ゆっくりと確かめるように問うと、寒月はものすごく得意そうに答えた。
「おう、当然だ! あんなん、いつでもどけようと思えばどけられた。ま、暇つぶしだな。どうせ繁殖期で部屋から出られんかったしよ。馬鹿ヅラ晒して盛ってる奴らを見物してた」
……何なんだ、その『どうよ、褒めてくれ』と言わんばかりの顔は。
僕がどんどん不機嫌になっていることに、彼はまったく気づいていない。
「僕はきみたちのことが心配で、胸が潰れそうだったのに……その頃きみたちは、裸族の人たちにあえてちんこを触らせたり、またがらせたりしていたわけか……」
低く呟くと、青月はさすがに察したらしく、あわてて付け加えた。
「誤解しないでくれ、アーネスト。情報を得るためだ。そして俺たちは交尾行動は一切していない。女どもを跳ねのける以外は触れていないし、勃っていたのも薬のせいだ。奴らに性的興奮をおぼえたわけでは無いぞ、絶対に!」
じっとりと青月を見つめ返す僕を見て、寒月も『やばい』とようやく気づいたらしい。「そ、そうだぞ!」とあわてて言い募った。
「どれほどデカいパイオツを揺らされようが、股間を押しつけられようが、俺たちはずーっと、お前だけを抱きたいと思ってた。お前の平らな胸と桃尻と、やたら綺麗なちんこほどエロ尊いものは、ほかの誰とも比較になら」
「もがーっ!」
思わず奇声を発して、寒月の口を手でふさいだ。
僕のちんこ評をしてほしいわけじゃない! 顔から火が出そうだ。
わかってる。
理性では二人の言いたいことも、二人の誠実さも、よくわかってる。
でも、でも。
あの生々しい裸族……令嬢たちの躰が、双子に触れたのかと考えると。
双子のぶ厚い筋肉に覆われた胸に、彼女たちが頬を寄せたり、逞しい腕や脚に自分たちのそれを絡みつけたり、おまけに、おまけに、秘すべきところを全部見せあって、あろうことか、ちんこを好きに触らせていたのかと思うと……!
「て、抵抗できないから、供物になったんだと思ってたのにー!」
思わず叫んだら、またもぽろっと涙がこぼれた。
双子は「供物!?」とギョッとしているが、かまっていられない。
「きみたちも『同意の上だった』と彼女たちが言っても、そんなわけ、ないって、し、信じてたんだよ!? それなのにっ、う、うあぁぁぁ」
なんだこれ。どうしてこんなに号泣しているんだ僕は。
泣くことないだろう……でも泣けて泣けてしょうがない。
毒を盛られても動じない双子まで血相を変えて、
「ギャーッ! すまん! ほんとごめんなさい、俺らが悪かった!」
「反省する。二度と誰にも触れさせない。そうだよな、嫌だよな。ごめん」
「同意はほんとにしてないから……」
「頼むから泣かないでくれ……」
おろおろしながら謝られると、余計に泣けてきてしまう。
なぜこんなに泣いてるのか、自分でもわからない。
僕って奴は……ほんと、どんな大人だ……。
応援ありがとうございます!
51
お気に入りに追加
6,039
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。