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第7章 薬草研究の賜物
この夜、この場所で
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口にしてしまった直後、顔から火を噴くかと思った。
なんてことを言っているのだ、僕は。
真摯に愛を捧げてくれる二人と、心身共にひとつになれたら……と。
そう願ってきたことは、事実なのだけれど。
でもこの躰がポンコツなのは変えようがないし、二人が我慢してくれていることも、我慢させてしまうことも、今は仕方ないと自分に言い聞かせていたはずなのに。
「アーネスト……」
「頼むからそんな顔して、そんなことを言わないでくれ。止められなくなる」
切なげに眉根を寄せた寒月と、しっとりと色気をまとった青月の懇願。
密着した二人の雄は怖いほど硬さを増していて、逃げ出したくなる気持ちと、ごまかしようのない喜びが胸を突き抜け、ぶるっと震えた。
胸の鼓動が早鐘を打つ。
どうしよう。今なら引き返せる、けれど。
僕は二人から離れて、再び湯の中へ足を踏み入れた。
「「アーネスト」」
呼ぶ声に困惑が滲んでいるが、すぐに二人も追ってきた。
ドキドキしすぎて、心臓が飛び出しそう。
でも、さっきからずっと、何かが僕の心を揺さぶっている。
『この夜、この場所で』
そんな声が聞こえる気すらして。
やっぱり満月のせいだ。
満月の魔力が、僕をおかしくさせてる。
おかげで、マルム茸が温泉に入っている幻まで見えるし。
…………ん?
視線の先を、マルム茸が流れていった。
月の魔力の幻覚などではなく、本当にぷかぷかと浮いている。
しかも水面を埋め尽くすほど大量に、ぷかぷかと。
その光景は、マルムの輪ならぬマルムの湯。
「いつのまにっ!?」
いきなり叫んだ僕に、双子も「なんだ!?」「どうした!」と驚愕の声を上げた。
「マルム茸がいっぱい……」
震える指で湯を示すと、二人もようやく気づいたようで、「「うわっ!」」と大声を上げた。
「ちょっと前まで、なかったよね?」
「なかった。絶対なかった」
「ひとつもなかった」
寒月と青月も強く首肯してくれたが、もう何が何だか。
それこそ『妖精の書』の世界に入り込んで、いたずら好きの妖精たちに、からかわれているみたいだ。
でも、不思議と悪い気はしない。
『この夜、この場所で』
優しい波のようなこの声の主は、マルムたちなのではないか……なんて、おかしなことを考えてしまったり。
やっぱり満月のせいだ。
『このお湯を三人で飲んで』
『三人でマルムを食べて』
そんな言葉まで、頭の中に優しく響く。
だから僕はその声に従い、流れるお湯を両手ですくった。
「「アーネスト?」」
……おいしい。すごくおいしい。
果実のような甘さと爽やかさが、喉を潤し、躰中にしみわたっていく。
「二人も飲んでみて」
「ど、どうしたんだ、いきなり」
「お前が飲めと言うなら飲むが……」
寒月も青月も戸惑いつつも、すぐに口に含んでくれた。
そうして、その目が驚きに見ひらかれる。
「なんだこれ……すげえうまい」
「今までも温泉の湯を飲んだことはあるが、こんなにうまいのは初めてだ。これはマルム茸の味なのか?」
青月に問われて、首を横に振る。
「わからない。僕も初めて食べるんだ……」
「えっ! それ食うのか? 今!?」
温泉に入るだけでも躊躇していた僕だから、寒月があわてたのも無理はない。
でも僕は迷いなく、湯からすくい上げたマルムの真ん丸い笠に、さくりと歯を立てた。
次の瞬間、目を瞠る。
嘘みたい。
僕の大好物の、ダースティンでよく食べていた、果物がたっぷり入ってしっとりふわふわのケーキみたいな味と食感。
「アーネスト? 大丈夫か?」
感激していたら、心配そうな青月の声で我に返った。
僕はすぐさま、二人にも薦めた。
「すごくおいしいから食べて。三人で食べないとダメなんだ」
「三人で?」
「ダメって何のことだ?」」
首をかしげながらも、二人はちゃんと食べてくれて。
そしてやっぱり、あまりに美味で驚いていた。
「あり得ない。謎すぎる」
青月が呟くと寒月もうなずき、けれど急に吹き出した。
「どうしたの寒月」
「いや。股間にキノコの俺たちが、キノコを食べているという、このシュールな光景がなんとも」
途端、青月までプッと吹き出したが、僕は急に羞恥心を取り戻し、あわてて前を隠した。
その手に、寒月の大きな手が重なる。
「……もっと、するか?」
翠玉の瞳には、あふれんばかりの優しさと、飢えた獣の激しさが混在している。
怖い。
この一線を超えたら、どうなってしまうんだろう。
「……する」
答えた僕の顔は、二人にはどう映ったのか。
寒月は優しく僕の髪を梳いてから、いきなり、貪るように口づけてきた。
「んっ、……ふっ」
いつもより荒々しい口づけに翻弄されて、脚の力が抜けていく。
今立っている場所は膝程度の深さしかないので、いっそ座り込んでしまいたかったが……すかさず青月にうしろから支えられ、うなじから腰まで、やわらかくキスされた。そしてときおり、強く吸われる。
漏らしかけた喘ぎを噛み殺すと、寒月が壮絶な色気をにじませて微笑んだ。
「俺はやっぱり、お前を味わうほうがいい」
そう言って膝をつき、僕の性器を口に含んだ。
「やっ! だめ、そんな……ひあっ!」
絡めとるような舌と熱い粘膜で扱かれて、初めての強烈な快感に、すぐに立っていられなくなった。
なのに青月が僕の胸に腕をまわし、しっかりと抱えて離さない。
腰は寒月に固定され、巧みな口淫に内腿がひくつく。
すぐに達してしまいたい欲望と戦いながら、金色の髪を引っ張った。
「だ、め……だめ!」
「んあ?」
ぬるりと、熱い口内から解放された。
それでも寒月は、先端にチュッと音をたててキスしたり、吸ったりするのはやめぬまま、「どうした?」と問うてきた。
「遠慮せず、そのまま出していいんだぞ?」
「ちっ、ちがっ」
端整な顔の横で、ものほしげに先走りを溢れさせている自分のものを見ていられず、ぎゅっと目をつぶって一気に言った。
「僕ばかりイかせられるのは嫌だ。ちゃ、ちゃんとする……!」
なんてことを言っているのだ、僕は。
真摯に愛を捧げてくれる二人と、心身共にひとつになれたら……と。
そう願ってきたことは、事実なのだけれど。
でもこの躰がポンコツなのは変えようがないし、二人が我慢してくれていることも、我慢させてしまうことも、今は仕方ないと自分に言い聞かせていたはずなのに。
「アーネスト……」
「頼むからそんな顔して、そんなことを言わないでくれ。止められなくなる」
切なげに眉根を寄せた寒月と、しっとりと色気をまとった青月の懇願。
密着した二人の雄は怖いほど硬さを増していて、逃げ出したくなる気持ちと、ごまかしようのない喜びが胸を突き抜け、ぶるっと震えた。
胸の鼓動が早鐘を打つ。
どうしよう。今なら引き返せる、けれど。
僕は二人から離れて、再び湯の中へ足を踏み入れた。
「「アーネスト」」
呼ぶ声に困惑が滲んでいるが、すぐに二人も追ってきた。
ドキドキしすぎて、心臓が飛び出しそう。
でも、さっきからずっと、何かが僕の心を揺さぶっている。
『この夜、この場所で』
そんな声が聞こえる気すらして。
やっぱり満月のせいだ。
満月の魔力が、僕をおかしくさせてる。
おかげで、マルム茸が温泉に入っている幻まで見えるし。
…………ん?
視線の先を、マルム茸が流れていった。
月の魔力の幻覚などではなく、本当にぷかぷかと浮いている。
しかも水面を埋め尽くすほど大量に、ぷかぷかと。
その光景は、マルムの輪ならぬマルムの湯。
「いつのまにっ!?」
いきなり叫んだ僕に、双子も「なんだ!?」「どうした!」と驚愕の声を上げた。
「マルム茸がいっぱい……」
震える指で湯を示すと、二人もようやく気づいたようで、「「うわっ!」」と大声を上げた。
「ちょっと前まで、なかったよね?」
「なかった。絶対なかった」
「ひとつもなかった」
寒月と青月も強く首肯してくれたが、もう何が何だか。
それこそ『妖精の書』の世界に入り込んで、いたずら好きの妖精たちに、からかわれているみたいだ。
でも、不思議と悪い気はしない。
『この夜、この場所で』
優しい波のようなこの声の主は、マルムたちなのではないか……なんて、おかしなことを考えてしまったり。
やっぱり満月のせいだ。
『このお湯を三人で飲んで』
『三人でマルムを食べて』
そんな言葉まで、頭の中に優しく響く。
だから僕はその声に従い、流れるお湯を両手ですくった。
「「アーネスト?」」
……おいしい。すごくおいしい。
果実のような甘さと爽やかさが、喉を潤し、躰中にしみわたっていく。
「二人も飲んでみて」
「ど、どうしたんだ、いきなり」
「お前が飲めと言うなら飲むが……」
寒月も青月も戸惑いつつも、すぐに口に含んでくれた。
そうして、その目が驚きに見ひらかれる。
「なんだこれ……すげえうまい」
「今までも温泉の湯を飲んだことはあるが、こんなにうまいのは初めてだ。これはマルム茸の味なのか?」
青月に問われて、首を横に振る。
「わからない。僕も初めて食べるんだ……」
「えっ! それ食うのか? 今!?」
温泉に入るだけでも躊躇していた僕だから、寒月があわてたのも無理はない。
でも僕は迷いなく、湯からすくい上げたマルムの真ん丸い笠に、さくりと歯を立てた。
次の瞬間、目を瞠る。
嘘みたい。
僕の大好物の、ダースティンでよく食べていた、果物がたっぷり入ってしっとりふわふわのケーキみたいな味と食感。
「アーネスト? 大丈夫か?」
感激していたら、心配そうな青月の声で我に返った。
僕はすぐさま、二人にも薦めた。
「すごくおいしいから食べて。三人で食べないとダメなんだ」
「三人で?」
「ダメって何のことだ?」」
首をかしげながらも、二人はちゃんと食べてくれて。
そしてやっぱり、あまりに美味で驚いていた。
「あり得ない。謎すぎる」
青月が呟くと寒月もうなずき、けれど急に吹き出した。
「どうしたの寒月」
「いや。股間にキノコの俺たちが、キノコを食べているという、このシュールな光景がなんとも」
途端、青月までプッと吹き出したが、僕は急に羞恥心を取り戻し、あわてて前を隠した。
その手に、寒月の大きな手が重なる。
「……もっと、するか?」
翠玉の瞳には、あふれんばかりの優しさと、飢えた獣の激しさが混在している。
怖い。
この一線を超えたら、どうなってしまうんだろう。
「……する」
答えた僕の顔は、二人にはどう映ったのか。
寒月は優しく僕の髪を梳いてから、いきなり、貪るように口づけてきた。
「んっ、……ふっ」
いつもより荒々しい口づけに翻弄されて、脚の力が抜けていく。
今立っている場所は膝程度の深さしかないので、いっそ座り込んでしまいたかったが……すかさず青月にうしろから支えられ、うなじから腰まで、やわらかくキスされた。そしてときおり、強く吸われる。
漏らしかけた喘ぎを噛み殺すと、寒月が壮絶な色気をにじませて微笑んだ。
「俺はやっぱり、お前を味わうほうがいい」
そう言って膝をつき、僕の性器を口に含んだ。
「やっ! だめ、そんな……ひあっ!」
絡めとるような舌と熱い粘膜で扱かれて、初めての強烈な快感に、すぐに立っていられなくなった。
なのに青月が僕の胸に腕をまわし、しっかりと抱えて離さない。
腰は寒月に固定され、巧みな口淫に内腿がひくつく。
すぐに達してしまいたい欲望と戦いながら、金色の髪を引っ張った。
「だ、め……だめ!」
「んあ?」
ぬるりと、熱い口内から解放された。
それでも寒月は、先端にチュッと音をたててキスしたり、吸ったりするのはやめぬまま、「どうした?」と問うてきた。
「遠慮せず、そのまま出していいんだぞ?」
「ちっ、ちがっ」
端整な顔の横で、ものほしげに先走りを溢れさせている自分のものを見ていられず、ぎゅっと目をつぶって一気に言った。
「僕ばかりイかせられるのは嫌だ。ちゃ、ちゃんとする……!」
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