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29.誰かが仕組んだことだとしても問題はない。(side 修斗)
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もし、誰かが俺に「もう一度俊哉と会わせてやる。‥だけど、それはお前も死ぬってことだけど」って言ったとしたら‥俺は喜んでそれに従う。
これから先、俊哉のいない世界で一人で生きていることを考えたら、死んでいるのも変わらないって思うから。
それは今だけだ。いつか俊哉を失った傷は癒えて、別の大事な人が出来て、生きててよかったって日は来る。‥そう自分に言い聞かせたところで、‥そんな自分も嫌でもう‥叫び出したくなる。
俊哉を忘れるのは、嫌だ。
俊哉を忘れないって自分に言い聞かせる自分は‥もっと嫌だ。
だって‥俺が忘れたら俊哉は‥もうどこにもいなくなる。
「貴方が考える俊哉は随分と可哀そうな子なのね」
くすくすと‥まるで鈴がなるように笑う「可愛い」声。
女の子の作ったような声じゃない。
子供の甲高い声でもない。
耳に心地よい‥そう‥まるで鈴がなるような「声」。
俺はその声のした方を見た。
「大丈夫よ。俊哉は今は幸せに暮らしてる。私、俊哉と友達になったの。俊哉はいい子ね。私大好きになったわ」
にこっと笑う‥見覚えのないはずの女の子。
だけど、俺はその子を見た瞬間、その子のことを「まるで以前から知っている」様に感じたんだ。
‥人間そんなに個性があるわけじゃない。誰もが誰かにどこか似ている。それは、無意識に他人から受けた影響のせいだったり、考え方が似てるせいだったり‥理由はいろいろあるだろうが‥結果として、「どこか誰かに似てる」って人間はよくいる。
だけど、その子はそういうのとは違った。
‥懐かしい?
それと
また会えた。
そういう感情だった。
まるで昔無くしてしまった「思い出の」ぬいぐるみに‥ふと「出会えた」様な‥そんな感情。
俺は‥不覚にも‥泣いてしまった。
「‥やっと会えた」
って‥意味の分からない言葉が自然と口から出た。その子はだけど、ちっとも不思議そうな顔なんてしなかった。
「そうだね。‥久し振りだね」
って‥俺を抱きしめてくれた。
抱きしめられてるのに、‥まるで柔らかい毛布にくるまれてるような‥そんな感触だった。
その暖かさに包まれた時‥俺は‥耐え切れなくて泣いた。
‥ああ、俺は今まで‥泣きたかったんだ。泣きたかったのに‥泣けなかったんだ‥って思った。
「‥俊哉に会いたい。俊哉には会える? 」
泣きつかれて‥落ち着いたら急に恥ずかしくなった。
大の男が子供みたいに人に抱き着いて泣くなんて‥今までの俺からは考えられない。
‥今までの俺って‥否「今まで俺はこんな人間って思って来た」俺って‥だけどそもそも本当の俺だったんだろうか?
ふいに不安になる。
女の子は‥まるで「全部の不安を受け止めるよ」っていう風に優しく微笑んで
「そうね。この世界のどこかに俊哉はいるわ。ホントに貴方が会いたいと思って、俊哉も貴方に会いたいって思ってたとしたらきっと会えるわ」
って言った。
‥この世界?
ここは‥天国のようなところなのだろうか? ‥死んでしまった俊哉がいるんだからそうなのだろう。
じゃあ‥俺は死んだのか?
不安な気持ちにはなったが‥別にそれでも構わないって思った。
不自然な女の子。不自然なタイミング。マンガみたいな展開‥。
これは「誰か」が仕組んだの? ‥言うまでもなく、さっきの女の子だ。
だけど‥そうだとして構わない。
もし1%でも可能性があるなら、俺はそれに賭けたい。
‥だって、そもそも‥死んだ俊哉に会える確率なんて‥どう考えても普通だったらゼロなんだから。
気が付いたら街の中にいて、女の子はいなくなっていた。
取り敢えず‥と足を踏み出す。
通りを歩く人間は、髪の色や目の色‥肌の色からして外国人のようだったけれど、身長は165㎝を少し超えた位の低身長の俺とそう変わらない身長をしているようだ。
‥いや、髪の色っていっても‥緑とか青とか‥明らかに「人間の色じゃない」って色が混じってるな。染めてるのか? ‥いや、そうだとしたらたいしたもんだぞ。‥これはきっと地毛で‥さっきの女の子の話から総合すると‥ここはやっぱり天国に違いないんだろう。
それにしては、随分生活感があるな。天国って、もっと花が咲き乱れ人々が霞を食べて笑いさざめく世界かと思ってた。(‥霞を食って笑いさざめくってちょっとおかしいか)
ここは‥普通に外国って感じだ。
つまり‥総合すると‥死後になんでかわからんが来ちゃう異世界って奴なんだろう。
そうか‥地球で死んだ俊哉は異世界に来ちゃったって訳か。だけど、さっきの女の子の話によると‥俊哉は第二の人生を幸せに暮らせてる‥と。
ほっとした。
俊哉が幸せって聞いて‥それだけでもう「ならいいか」って素直に思えた。
だけど‥同時に「一目でいいから見たい」って思った。
さて‥どこに行けばいいんだか‥
通りの真ん中で立ち止まっていたことに気付いて動き出そうとすると‥緑の髪の毛の男の子と目が合った。
男の子は
「お兄ちゃん、‥不細工だね」
って俺の顔を真っすぐ見て‥言い切ったんだ。
‥不細工。
別に自分の顔がいいとか思ったことはないが‥面と向かって不細工って言われたことはないぞ。
ってか‥面と向かって他人に不細工って言うとか‥どんなご家庭の教育受けとんねん、貴様。
黙ってぎろって睨むと
「ほら、フェイリン‥やめなさい。‥ごめんなさいね」
母親と思われる女が子供を窘めて俺を見て‥ちょっと驚いた顔をして‥目を逸らした。
‥目、そらすんかい。
何。ここでは俺は‥めちゃ不細工なわけなの?
美の基準が分からんとか‥そういうこと言うつもりは無いけど‥俺ってそう特徴ある顔じゃないよ? ニキビ面で見てて気持ちがいいもんじゃない‥とかじゃないし、不潔にしてるとかでもない。髪の色?? アンタらとそう変わらんと思うけど。俺は日本人っぽい黒髪じゃない。黒髪珍しいよね~外国人丸出(?)だよね~とかじゃない。さっきの子どもと俺の歴然とした違い‥目の大きさ。
あれか?
ギョロ目アンチな人たち??
‥あり得る。異世界転移もの‥美醜逆転ものにありがちな奴。そうか‥美醜の基準が違うんだ。ここ。
そういう基準で見て‥俺が奴らと目立って違う点って‥やっぱり目の大きさ位だろう。
だけど、俺の不細工度は‥そう深刻ではないらしい。深刻だったら「きゃー! 」とか叫ばれて逃げられてただろう。だけど、子供が言わずにいられない程度には‥目立って不細工ならしい。(あと、保護者が「気の毒に」って思って‥つい目を逸らしてしまう程なんだ)
うわあ‥
なんか、新鮮。
どうでもいいけど。アンタらの美的感覚とかどうでもいい。俺は俊哉を一目見れたらそれで満足なわけ。
俊哉の幸せを確認出来たら‥それで幸せなわけ。
なのに、だ。
「おい、不細工。お前は人々に対して失礼だとは思わないのか。顔をかくせ」
とか言って‥揶揄ってきやがる異世界人! お前らの倫理観どうなってんねん!! 何か!? 不細工には人権もないってか!? って噛みつこうと思ったが‥郷に入れば郷に従えか? よそ者の俺が言うべきことでもないのか? って‥何故かちょっと躊躇したり。
‥もしかして、こういう軽口を言うことによって相手との距離を縮める的な?
「よ! 今日も不細工だね! 玉ねぎ買ってかねえか? お肌が少しはましになるかもしれねぇぜ? 」
「御心配ありがとよ! だけど、玉ねぎがいるのは寧ろお前の方じゃねぇか? 。玉ねぎの血液サラサラ効果で頭の血の巡り良くした方がいいんじゃねぇか? 」
「ありがとよ! 普段から玉ねぎ食って高血圧防止してるから、てめぇと話しても血管切れる心配ねぇや! 」
‥とかいう種類の‥、心温まるハートフル会話かもしれん?
首を傾げながら歩いてたら‥
「きゃー! 」
「助けて! 」
って‥シャレになんない声が聞こえて来た。
なんだ!? 異世界だし‥魔物でも現れたか!? って思って騒ぎの方を見たら‥
ぶつかったのか尻餅をついて座ってる凄い美人と‥普通の女がいた。
え? 何。なんで、アンタその美人を‥魔物を見る様な目で見てるの??
これから先、俊哉のいない世界で一人で生きていることを考えたら、死んでいるのも変わらないって思うから。
それは今だけだ。いつか俊哉を失った傷は癒えて、別の大事な人が出来て、生きててよかったって日は来る。‥そう自分に言い聞かせたところで、‥そんな自分も嫌でもう‥叫び出したくなる。
俊哉を忘れるのは、嫌だ。
俊哉を忘れないって自分に言い聞かせる自分は‥もっと嫌だ。
だって‥俺が忘れたら俊哉は‥もうどこにもいなくなる。
「貴方が考える俊哉は随分と可哀そうな子なのね」
くすくすと‥まるで鈴がなるように笑う「可愛い」声。
女の子の作ったような声じゃない。
子供の甲高い声でもない。
耳に心地よい‥そう‥まるで鈴がなるような「声」。
俺はその声のした方を見た。
「大丈夫よ。俊哉は今は幸せに暮らしてる。私、俊哉と友達になったの。俊哉はいい子ね。私大好きになったわ」
にこっと笑う‥見覚えのないはずの女の子。
だけど、俺はその子を見た瞬間、その子のことを「まるで以前から知っている」様に感じたんだ。
‥人間そんなに個性があるわけじゃない。誰もが誰かにどこか似ている。それは、無意識に他人から受けた影響のせいだったり、考え方が似てるせいだったり‥理由はいろいろあるだろうが‥結果として、「どこか誰かに似てる」って人間はよくいる。
だけど、その子はそういうのとは違った。
‥懐かしい?
それと
また会えた。
そういう感情だった。
まるで昔無くしてしまった「思い出の」ぬいぐるみに‥ふと「出会えた」様な‥そんな感情。
俺は‥不覚にも‥泣いてしまった。
「‥やっと会えた」
って‥意味の分からない言葉が自然と口から出た。その子はだけど、ちっとも不思議そうな顔なんてしなかった。
「そうだね。‥久し振りだね」
って‥俺を抱きしめてくれた。
抱きしめられてるのに、‥まるで柔らかい毛布にくるまれてるような‥そんな感触だった。
その暖かさに包まれた時‥俺は‥耐え切れなくて泣いた。
‥ああ、俺は今まで‥泣きたかったんだ。泣きたかったのに‥泣けなかったんだ‥って思った。
「‥俊哉に会いたい。俊哉には会える? 」
泣きつかれて‥落ち着いたら急に恥ずかしくなった。
大の男が子供みたいに人に抱き着いて泣くなんて‥今までの俺からは考えられない。
‥今までの俺って‥否「今まで俺はこんな人間って思って来た」俺って‥だけどそもそも本当の俺だったんだろうか?
ふいに不安になる。
女の子は‥まるで「全部の不安を受け止めるよ」っていう風に優しく微笑んで
「そうね。この世界のどこかに俊哉はいるわ。ホントに貴方が会いたいと思って、俊哉も貴方に会いたいって思ってたとしたらきっと会えるわ」
って言った。
‥この世界?
ここは‥天国のようなところなのだろうか? ‥死んでしまった俊哉がいるんだからそうなのだろう。
じゃあ‥俺は死んだのか?
不安な気持ちにはなったが‥別にそれでも構わないって思った。
不自然な女の子。不自然なタイミング。マンガみたいな展開‥。
これは「誰か」が仕組んだの? ‥言うまでもなく、さっきの女の子だ。
だけど‥そうだとして構わない。
もし1%でも可能性があるなら、俺はそれに賭けたい。
‥だって、そもそも‥死んだ俊哉に会える確率なんて‥どう考えても普通だったらゼロなんだから。
気が付いたら街の中にいて、女の子はいなくなっていた。
取り敢えず‥と足を踏み出す。
通りを歩く人間は、髪の色や目の色‥肌の色からして外国人のようだったけれど、身長は165㎝を少し超えた位の低身長の俺とそう変わらない身長をしているようだ。
‥いや、髪の色っていっても‥緑とか青とか‥明らかに「人間の色じゃない」って色が混じってるな。染めてるのか? ‥いや、そうだとしたらたいしたもんだぞ。‥これはきっと地毛で‥さっきの女の子の話から総合すると‥ここはやっぱり天国に違いないんだろう。
それにしては、随分生活感があるな。天国って、もっと花が咲き乱れ人々が霞を食べて笑いさざめく世界かと思ってた。(‥霞を食って笑いさざめくってちょっとおかしいか)
ここは‥普通に外国って感じだ。
つまり‥総合すると‥死後になんでかわからんが来ちゃう異世界って奴なんだろう。
そうか‥地球で死んだ俊哉は異世界に来ちゃったって訳か。だけど、さっきの女の子の話によると‥俊哉は第二の人生を幸せに暮らせてる‥と。
ほっとした。
俊哉が幸せって聞いて‥それだけでもう「ならいいか」って素直に思えた。
だけど‥同時に「一目でいいから見たい」って思った。
さて‥どこに行けばいいんだか‥
通りの真ん中で立ち止まっていたことに気付いて動き出そうとすると‥緑の髪の毛の男の子と目が合った。
男の子は
「お兄ちゃん、‥不細工だね」
って俺の顔を真っすぐ見て‥言い切ったんだ。
‥不細工。
別に自分の顔がいいとか思ったことはないが‥面と向かって不細工って言われたことはないぞ。
ってか‥面と向かって他人に不細工って言うとか‥どんなご家庭の教育受けとんねん、貴様。
黙ってぎろって睨むと
「ほら、フェイリン‥やめなさい。‥ごめんなさいね」
母親と思われる女が子供を窘めて俺を見て‥ちょっと驚いた顔をして‥目を逸らした。
‥目、そらすんかい。
何。ここでは俺は‥めちゃ不細工なわけなの?
美の基準が分からんとか‥そういうこと言うつもりは無いけど‥俺ってそう特徴ある顔じゃないよ? ニキビ面で見てて気持ちがいいもんじゃない‥とかじゃないし、不潔にしてるとかでもない。髪の色?? アンタらとそう変わらんと思うけど。俺は日本人っぽい黒髪じゃない。黒髪珍しいよね~外国人丸出(?)だよね~とかじゃない。さっきの子どもと俺の歴然とした違い‥目の大きさ。
あれか?
ギョロ目アンチな人たち??
‥あり得る。異世界転移もの‥美醜逆転ものにありがちな奴。そうか‥美醜の基準が違うんだ。ここ。
そういう基準で見て‥俺が奴らと目立って違う点って‥やっぱり目の大きさ位だろう。
だけど、俺の不細工度は‥そう深刻ではないらしい。深刻だったら「きゃー! 」とか叫ばれて逃げられてただろう。だけど、子供が言わずにいられない程度には‥目立って不細工ならしい。(あと、保護者が「気の毒に」って思って‥つい目を逸らしてしまう程なんだ)
うわあ‥
なんか、新鮮。
どうでもいいけど。アンタらの美的感覚とかどうでもいい。俺は俊哉を一目見れたらそれで満足なわけ。
俊哉の幸せを確認出来たら‥それで幸せなわけ。
なのに、だ。
「おい、不細工。お前は人々に対して失礼だとは思わないのか。顔をかくせ」
とか言って‥揶揄ってきやがる異世界人! お前らの倫理観どうなってんねん!! 何か!? 不細工には人権もないってか!? って噛みつこうと思ったが‥郷に入れば郷に従えか? よそ者の俺が言うべきことでもないのか? って‥何故かちょっと躊躇したり。
‥もしかして、こういう軽口を言うことによって相手との距離を縮める的な?
「よ! 今日も不細工だね! 玉ねぎ買ってかねえか? お肌が少しはましになるかもしれねぇぜ? 」
「御心配ありがとよ! だけど、玉ねぎがいるのは寧ろお前の方じゃねぇか? 。玉ねぎの血液サラサラ効果で頭の血の巡り良くした方がいいんじゃねぇか? 」
「ありがとよ! 普段から玉ねぎ食って高血圧防止してるから、てめぇと話しても血管切れる心配ねぇや! 」
‥とかいう種類の‥、心温まるハートフル会話かもしれん?
首を傾げながら歩いてたら‥
「きゃー! 」
「助けて! 」
って‥シャレになんない声が聞こえて来た。
なんだ!? 異世界だし‥魔物でも現れたか!? って思って騒ぎの方を見たら‥
ぶつかったのか尻餅をついて座ってる凄い美人と‥普通の女がいた。
え? 何。なんで、アンタその美人を‥魔物を見る様な目で見てるの??
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