この世界では僕が思うイケメンはイケメンとは言われない様です。

３０．修斗と王子様。（side 修斗）

　ぶつかったのか尻餅をついて座ってる凄い美人。
　凄い美人を見て悲鳴をあげる女。

　え？　何。なんで、アンタその美人を‥魔物を見る様な目で見てるの？？

　唖然としていると、美人は慌てて仮面で顔を隠して女に謝った。
　‥え？　なんで、貴女が謝る？　
　ぶつかってごめんね？　でも、お互い歩いててぶつかるのってどちらか片方だけが悪いってことにはならなくない？　‥あ、もしかしてその美人は背が高いから‥「背が高い人がぶつかってきたら、私たち小さい人はもう大変デショ！　」ってことか？？
　‥あるか！　お相撲さんみたいにでっかい人だったら、「あんさん大きいからワテつぶれるか思たわ」ってことになるかもしれんが‥。
　どう見ても、あの美人は凄い華奢だよ？　寧ろ、そこで凄い顔して固まってる女よりずっと弱そうだよ？　（身長はともかく、‥体重的な？　）
　華奢だし‥どっちかと言うと‥「ぶつかってごめんなさい！　その国宝級の美貌に傷などついてませんか？！　」って気にしなきゃならないレベルの美人だよ？！　

　‥改めて見たら、ホント美人だな‥。

　腕とか首なんて、折れそうなほど細い。白魚のような手ってこんなんだよ、って見本にされそうな‥白い細い指。そんな華奢な手が、倒れたはずみに地面についていて、砂が付いて赤くなってるのが‥もう痛々しいって感じ。
　今すぐ飛んで行って「大丈夫？　怪我はない！？　」って救い起したい気分になるけど‥それは‥ちょっと痴漢の発想だ。「怪我してるんじゃない？　」って身体中ペタペタ触って確かめたり‥とかしちゃダメ。ましてや初対面の人に‥とか絶対アウト。警察呼ばれちゃうよ。
　手だけじゃなくて、全身の肌が透けるほど白い。もう‥余分な肉なんて在りませんって程細い‥けど、アレだな。あの骨格は‥男だね。
　男なのか‥。（ちょっと落胆）凄いな。美青年ってホントにいるんだ‥。
　髪の毛は絹糸みたいなプラチナブロンズ。ボブより短いくらいの‥所謂おかっぱなんだけど、美形だからよく似合ってる。（美形じゃなかったら、絶対可笑しなことになってた）首を傾げてるから髪がさらさらと肩に流れてるんだけど‥全然絡まったりとかしなさそう。絶対枝毛とか無縁っぽい。指を通したら絶対、指の間から髪が一度も引っかかることなくサラサラ流れていくんだろう。彼がシャンプーの宣伝に出たならそのシャンプーは間違いなく爆売れする、そんな感じ。
　長い睫毛に縁どられたちょっとたれ目の色っぽい目は、綺麗なアーモンド形。印象的なのは、その瞳の色が青味が混じったシルバーってことだ。俺は宝石やなんかには詳しくないんだけど‥ムーンストーンみたいな‥綺麗な瞳だ。（ちょっと気障だけど‥そういう風に言いたくなるほど綺麗なんだ）
　綺麗な卵型のフェイスラインに髭の跡なんか全然ない。絶対「朝キレイに剃ったのに夕方にはもう生えて来るんだよね」とか‥下世話な心配いらなさそう。鼻筋が通ってて全体的に整った顔立ちなんだけど、俺の兄さんみたいにシャープって感じの印象じゃない。作り物‥彫刻みたいな感じ。ダビデ像とかそういう雄々しいのじゃなくって、ミロのビーナスとか‥そういう‥神聖的な感じの彫刻。ミロのビーナスって半裸なんだけど、エロティックな感じしないじゃない？　見てて恥ずかしい気持ちにならない‥「これって芸術ですよね」って‥そういう気持ちで見れる。‥つまりそれ。そういう「不埒じゃない」彫刻みたいな人。
　だけど、目は色っぽい‥みたいな。
　色っぽいって言ったら‥微かに開いた桜色の唇も‥色っぽい。
　つやつやでプルプル‥、もう語彙力どっか行っちゃうぐらい美人‥！
　うわ～写真撮りたい。（※　修斗は将来街の写真屋さんになりたい）これか！　被写体がいいから創作意欲を掻き立てられる！　って奴。ホントにあるんだ‥。‥ってまるでベテランのカメラマンみたいなこと思っちゃった。でも、これは‥すごいよ。「可愛い瞬間を探して待って映し撮る」とかしないでも、24時間、1440分？　シャッターチャンスって感じ。寧ろ、どの瞬間も逃したくないって感じだもん。（24時間って1440分だよね？？　多分。ってか、そんなことどうでもいい‥）

　あんまり驚いたからガン見しちゃった‥。

　気が付いたら、周りには誰もいなくなっていて、美人と俺だけになっていた。
「あの‥？　」
　美人が俺に話しかけている。
　‥うわあ、美人って‥声も美人なんだ。
「あんまり僕が醜いから驚いたんだよね‥。ごめんね」
　美人は‥肩をすくめて儚く微笑んだ。
　は？　醜い？　誰が？？
　あ、あれか！　ここの美的感覚か！　何？！　この国的にはこの美人は醜いの！？　は！？　どういう基準？　
「全然醜くなんてないよ！　寧ろ、俺は‥あなたのことすっごい美人だと思いますけど！？　」
　気が付けば俺は、美人の手を掴んで力説していた。
「え？　」
　真っ赤になる美人。
　俺に急に手を握られたわけだけど‥振り払うこともしない。‥きっと、びっくりしすぎて固まってるって感じ。
　え‥すっごい可愛い‥。美人が照れると可愛くなるとか‥反則か。
「あなたのこと醜いって言うやつ‥頭がどうかしてると思います。俺は！　凄いあなたの顔が好きです。今まであなたほど綺麗な人、見たことないです！　」
「ええ？？　」
　ますます戸惑う美人。‥もう、どうにかなっちゃうほど‥可愛い！！
　うっわ～！　今すぐ抱きしめたい！！
　こんな可愛い美人を異世界人め、今までよくも醜いとか言って苛めて来たな！？　可哀そうに‥すっかり自分に自信無くしちゃってるじゃないか！
　憤りを感じて‥思い出すのはやっぱり俊哉のこと。
　俊哉も可愛いのに‥心無い奴らから嫌な言葉を掛けられていた‥。
　そもそもさ。自分の趣味じゃないんだったら‥放っておいたらいいわけじゃない？　わざわざ構って、嫌な言葉かけたりしないでさ、見なかったら良いだけじゃない？　皆どうにかなってんのかなって思う。
　ここの世界の人間は‥地球より更に‥それを言って聞かせなきゃならないみたいだ。
　でも‥あの女のあの態度。
　まるで‥化け物を見たかのような表情。そんな女を批判するどころか「大丈夫か！？　こっちに！　」って（女に）手を差し伸べる周りの人々‥。
　好みでは済まされないレベルの嫌いっぷり。
　あれは‥まるで‥恐れてるかのようだった。

　この国は‥地球とは違って（もしかしたら‥遺伝子レベルで？？　）‥地球よりもっと‥問題があるのかもしれない‥。