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1章:乙女ゲームの中に転生したみたい?
カイルの告白 ――2
しおりを挟む「あなたのことを、知りたいからです」
「えっと?」
「それでは不服ですか?」
こてんと首を傾げる。こいつ絶対自分の顔の良さを理解している。理解しているから、こんなにあざといポーズが取れるんだ、きっと。
でも、オレを知りたいってどういう意味だろう?
「不服というか……オレはカイルの興味に引っ掛かる人間なの?」
「はい。とても興味深いです」
言い切ったよ、この子!
困惑しつつ、もう一度水を飲む。そして深呼吸を繰り返してから、とりあえずカイルに立つように促した。
「それは、昔のオレ? それとも今のオレ?」
護衛になることを決心したのは、『エリス』が五歳の頃に会ったからだったはず。それなら、この子の興味は昔の『エリス』なんじゃないかと聞いてみると、カイルは立ち上がってから考えるように顎に指を添えて「そうですね」と呟く。
「今のエリスさまに、興味があります」
今の……『咲耶』の記憶を持つオレに? と怪訝そうに眉を寄せてしまった。
「カイルがどうしてオレに興味を持ったのかはわからないな……」
「それは追々お話しします」
にこりと微笑むカイルは、空になったグラスをひょいとオレの手から取って、トレーに乗せた。そして、それを持ち上げると「ゆっくり休んでくださいね」と頭を下げて出て行った。
カイルの告白にちょっと驚いたけれど、『咲耶』に興味があるんだ、と思うとなんだか不思議な感じがした。オレがこの世界に馴染んでいないからかもしれないけど。
ベッドに横になって天井を見つめる。手を伸ばしてゆっくりと深呼吸を繰り返した。
ユーインさんやキャサリンさんも、シェリルの態度のことを気に掛けている。そして、確かにあのまま成長するときっと沙織の言っていた『悪役令嬢』になると思う。それを阻止すれば、ルトナーク家は平和になるのかな?
あの姿見に映った青年を思い出し、ごろりと仰向けから横向きになった。目を閉じた。睡魔はあっという間にオレを眠りに落し、気が付いたら朝だった。この身体、本当に体力ないな!
むくりと起き上がって、ベッドから降りてクローゼットの前に立ち、なにを着ようか悩む。デザイナーがくるのがいつになるかわからないけれど、あのシンプルな服が増えるのであれば数日くらいこの派手な服でも耐えられる。
それにしても、本当にこの服誰の趣味なんだろう?
ふりふりのフリルがたっぷりとか、少女趣味が入っているような気がする。キャサリンさんの趣味なんだろうか。シェリルにはこういう系統も似合うだろうけどね。
そんなことを考えながら、まだ地味そうな服を引っ張り出して着替えた。着替え終わったと同時に扉がノックされて、「はーい」と返事をするとカイルが入ってきた。
昨日の今日だから、なんだか気恥ずかしい気がする。だって、冷静に考えると『興味がある』ってハッキリ言われるのってすごいことじゃないか?
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