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恋ってウソだろ?! 81
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仕事は、そう、浩輔がいる。
おそらく自分がいなくても浩輔は大丈夫だろう。
頭の片隅でそんな考えが一瞬かすめた。
地下でエレベーターを降りた佐々木は、駐車場に向かって何かに追い立てられるように歩いていた。
車に乗り込もうとした時、後ろから猛烈な勢いで走ってくる足音がした。
振り返ると、いきなりその腕を掴まれ、強い力で引っ張られる。
沢村だとわかって、佐々木は息を呑んだ。
「……ちょ……お前! 離せ…よ!」
だが、沢村は無言で感情の整理がつかない佐々木の腕を掴んだまま、自分の車まで連れて行くと、ロックを外し、佐々木を助手席に突き飛ばしてドアを閉めると同時にリモートキーでまたロックした。
沢村が運転席のドアを開けた途端、佐々木は車から降りようとしたが、また力任せに引き戻される。
沢村の車は駐車場を滑るように走り出て、スタジオを後にした。
「どういうつもりや?! 何考えてんのや!」
「さあ、……………ストーカーがやることだし?」
開き直ったように言うと、沢村は不敵な笑みを浮かべた。
「ええ加減にせいや! わかった、話なら何ぼでも聞いたるし………車停めろ!」
「……いやだね。やっと捕まえたのに」
低く唸るように言葉を返すと、沢村はきつい表情で前方を見据えながらアクセルを踏んだ。
こいつ、今何言うてもあかんわ……聞く耳持たんて感じや……
お陰で少しばかり我に返った佐々木は、衝動的にスタジオを飛び出したことをようやく後悔していた。
面と向かったら、俺があかんよになりそうで……せやから、避けとったのに……ええ年して、みっともないことはしとうないよって、せいぜい平静取り繕おう思うてたのに……このガキが、人の気も知らんと………
しかし連絡を取ろうにも、ポケットを探ってみたが携帯はない。
ジャケットと一緒にスタジオに置いてきてしまったのだ。
佐々木は大きく溜息をつき、仕方なく窓の外へ顔を向ける。
気が付くと車は首都高から東名に入っていた。
滅茶苦茶飛ばしている。
今、ここで下手に騒いで事故でも起こしたら、それこそとんでもないことになる。
緊張が佐々木の身体を縛りつけていた。
箱根への道を取り囲む景色は、前に来た時の鮮やかな秋から色を落とし、山々は冬の装いへと様変わりしていた。
久々に見た別荘は大きさばかりが際立って、ひどく寒々しかった。
車を降りた沢村は、佐々木の腕を掴んだまま、玄関のドアを開けた。
「……痛い…て!!」
ジャケットなしでも温かかった車内から出ると、さすがにこの辺りの空気の冷たさに佐々木は身体を震わせた。
先に佐々木を玄関の中に押し込むと、沢村はドアに鍵をかけ、やっと腕を離してエアコンを入れ、窓のローマンシェードを上げる。
おそらく自分がいなくても浩輔は大丈夫だろう。
頭の片隅でそんな考えが一瞬かすめた。
地下でエレベーターを降りた佐々木は、駐車場に向かって何かに追い立てられるように歩いていた。
車に乗り込もうとした時、後ろから猛烈な勢いで走ってくる足音がした。
振り返ると、いきなりその腕を掴まれ、強い力で引っ張られる。
沢村だとわかって、佐々木は息を呑んだ。
「……ちょ……お前! 離せ…よ!」
だが、沢村は無言で感情の整理がつかない佐々木の腕を掴んだまま、自分の車まで連れて行くと、ロックを外し、佐々木を助手席に突き飛ばしてドアを閉めると同時にリモートキーでまたロックした。
沢村が運転席のドアを開けた途端、佐々木は車から降りようとしたが、また力任せに引き戻される。
沢村の車は駐車場を滑るように走り出て、スタジオを後にした。
「どういうつもりや?! 何考えてんのや!」
「さあ、……………ストーカーがやることだし?」
開き直ったように言うと、沢村は不敵な笑みを浮かべた。
「ええ加減にせいや! わかった、話なら何ぼでも聞いたるし………車停めろ!」
「……いやだね。やっと捕まえたのに」
低く唸るように言葉を返すと、沢村はきつい表情で前方を見据えながらアクセルを踏んだ。
こいつ、今何言うてもあかんわ……聞く耳持たんて感じや……
お陰で少しばかり我に返った佐々木は、衝動的にスタジオを飛び出したことをようやく後悔していた。
面と向かったら、俺があかんよになりそうで……せやから、避けとったのに……ええ年して、みっともないことはしとうないよって、せいぜい平静取り繕おう思うてたのに……このガキが、人の気も知らんと………
しかし連絡を取ろうにも、ポケットを探ってみたが携帯はない。
ジャケットと一緒にスタジオに置いてきてしまったのだ。
佐々木は大きく溜息をつき、仕方なく窓の外へ顔を向ける。
気が付くと車は首都高から東名に入っていた。
滅茶苦茶飛ばしている。
今、ここで下手に騒いで事故でも起こしたら、それこそとんでもないことになる。
緊張が佐々木の身体を縛りつけていた。
箱根への道を取り囲む景色は、前に来た時の鮮やかな秋から色を落とし、山々は冬の装いへと様変わりしていた。
久々に見た別荘は大きさばかりが際立って、ひどく寒々しかった。
車を降りた沢村は、佐々木の腕を掴んだまま、玄関のドアを開けた。
「……痛い…て!!」
ジャケットなしでも温かかった車内から出ると、さすがにこの辺りの空気の冷たさに佐々木は身体を震わせた。
先に佐々木を玄関の中に押し込むと、沢村はドアに鍵をかけ、やっと腕を離してエアコンを入れ、窓のローマンシェードを上げる。
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