恋ってウソだろ?!

chatetlune

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恋ってウソだろ?! 82

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 いつも花や色とりどりの枝が生けられていた壷が、今日は寂しげに冷たい地肌を見せ、屋内では一層冷え切った空気が動きをとめていた。
 促されてリビングのソファに座った佐々木がふと窓一面の庭に目をやると、葉を落とした樹々の群れがつんつんと一斉に裸の枝をさらしている。
 あたかも二人の蜜月の終わりを暗示しているかのように。
 それだけ時間が経ったのだと佐々木はあらためて思う。
 見上げると今にも降り出しそうな重い空がまた陰鬱な気分にさせる。
 まあ、別れ話ならちょうど似合いか。
「どうぞ」
 いつぞやのように、沢村はインスタントのコーヒーを入れたカップをぼんやり庭を見つめていた佐々木に渡した。
「ああ、どうも……」
 言葉が続かない。
 エアコンがようやく効いて空気が流れたいせいか、佐々木はくしゃみをした。
 すると、ふわりと佐々木の後ろからコートが掛けられる。
「…すまない」
 そんな優しさが今の佐々木にはたまらない。
 一口のコーヒーの温かさが身体に染み渡る。
 同時に縛られていた緊張から解きほぐされる。
 沢村はコーヒーを持ったまま、窓際に立った。
「……それで、話って?」
 沈黙に耐えかねて、佐々木が口を切った。
 後ろ姿は何も答えない。
「わざわざここまで来えへんでも………」
「勝手に終わりとか言って」
 ボソリと沢村が言った。
「こんなとこに連れて来て、勝手なんはお前やろ!?」
 佐々木は思わず、声を荒げる。
「あんたが全然俺の話を聞こうとしないからだ!」
 振り向いた沢村は声高に応戦する。
「今更俺に何の話があるんや!」
「今更?」
「彼女、ええやん。才色兼備のよさそうな人やし」
「彼女? マリオンのこと言ってるわけ? 彼女は……大体、何でそんなことあんたにわかる?」
 沢村のきつい視線を、佐々木はまともに受けることができず、目を逸らす。
「それは……みんな、言ってるし……ああ、もう、しまいや。こんなとこで俺なんかと話なんかしててええんか? 彼女ほっぽってきて、とっとと戻れよ!」
「マリオンを妬いたくせに」
 断言的な台詞に、佐々木は狼狽える。
「な………自意識過剰もええとこや! これやからちょっと人気があるやつは……」
「じゃあ、何でいきなり逃げ出したんだよ? あんたの大事な仕事をほっぽって!」
「それは……急用を思い出して……」
「どんな? 携帯まで忘れるほど?」
 さらに突っ込まれて、しどろもどろに佐々木は言い訳を考えるが、頭の中は真っ白でどんなうまい言い訳も出てこない。
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