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アリシア編
残光
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「アリシア……なのか……?」
「……はい」
四肢を失い、這い寄ってくるアリシアの姿を見て、自然と口から出た言葉だった。
それに対し、アリシアは小さな声で認めてしまった。
「ガルシアはどうした!?」
「死にましたっ」
「う、嘘だ!! ガルシアは、あのフロントデーモンの攻撃を受けきった男だぞ!?」
フロントデーモン。俺がギルド職員になる試験で、不運にも遭遇してしまった化け物だった。
場数を踏んで昔より強くなった自覚はあるが、それでもあの暴力的な強さはかすまない。強くなったからこそ、その力量差の片鱗に気づけるようになった。
俺はガルシアという男を、尊敬していた。
少し頭が固いやつだったが、信念があるということでもある。
死を前にして、迷い揺らぎながらも、仲間を守った男だ。
「あの魔術師の女の子が居ただろう!? リーラだったか!? あの子はどうした!?」
「……死にましたっ」
リーラ。アリシアの後ろに居た魔術師の女の子だ。こぶし大の大きな魔石を付けた杖を装備していたことから、実力は確かだろう。
「嘘だと言ってくれよ……」
アリシアの返事はなかった。
そういえば、もうひとり誰か居た。感じの悪いやつだったから名前は忘れてしまったが――。
「お客様。動揺しているのは理解しますが、これ以上は……」
「あ、あぁ……そうだな。悪かった」
栄光に突き進む彼女たち『新緑の翼』に何が起きたのか?
もちろん知りたい。死んだと言われてもどうしても信じられない。
だが、深い仲でもない俺がアリシアの傷口を掘り返すわけにはいかない。
そう考えて、ようやく思い出した。
俺は、幻聴に導かれてここに来た。
何らかの方法を使って、俺に助けを求めたのはアリシアなのか?
「ここでの暮らしはどうだ? 主人の前で聞くのはどうかと思うが」
「こんな私にも皆さん良くして下さっています」
その言葉に嘘はなさそうだ。
奴隷商という響きは悪いが、それだけだ。
主人の人格と手腕が為せる技なのか、奴隷たちには教育が行き届いている。
ここに居たほうが幸せなのではないだろうか。
だが、幻聴は助けを求めてきた。
しかし、その幻聴の元がアリシアとは思えない。
そう確信するほど、アリシアの目に力はない。宝石のエメラルドかと思うほどきれいだった瞳の輝きはほとんど感じられない。すべてを諦めているのだ。
「主人に聞きたい。アリシアはなぜこんな目に?」
「聞いてどうするのですか? まさかアリシア嬢を購入するつもりで?」
「場合による。今はそれしか言えん」
「かしこまりました。私が人づてに聞いた話では――」
アリシアが所属するギルド『新緑の翼』は、俺が知っていた通り、栄光に向かって突き進んでいた。
そこに影を落としたのは、依頼に失敗したからだった。
「神秘の森に潜む赤いサイクロプスを確認せよ。それがアリシア嬢たちが受けた依頼です」
正確には依頼ではなく、噂だったらしい。
指名依頼ではなく、誰が受けてもいい。そもそも受ける必要がないものだった。
神秘の森は、王都から遠く離れており、町や村とも隣接しておらず、魔物による人的被害はほとんどない。
どちらかと言えば、恐ろしい森の近くに住み着く人が居なかっただけだろうが。
深い霧に包まれた森の中に潜む魔物たちは、バジリスクやコカトリスといった、森に迷い込んだ生物を石化させて、捕食する習性を持つ。
たまに森の外に出てきた魔物を冒険者が間引くだけで済むわけだ。
誰も困ってないのに『新緑の翼』が受けたのは、名声を得るためだろう。
赤いサイクロプスはギルドでは確認されていない。
つまりユニークモンスターの可能性が高かった。
ユニークモンスターは希少であり、冒険者が一生のうち一度会えるかどうかと言われている。
例外なく強力な個体であり、その素材を武具に使えばより強くなれる。
実力至上主義の王都ギルドの中で存在感を放つ『新緑の翼』だったが、まだユニークモンスターに遭遇したことはなかった。
「アリシア嬢たちは、赤いサイクロプスを確認し、その場で戦闘になりました」
あとは聞いた通り、戦いの中でタンクのガルシアが死んだことで、残ったメンバーは即座に撤退を決めた。
その直後に魔術師のリーラが殺され、アリシアは仲間の死を横目に逃げ出すことしかできなかった。
神秘の森を抜けるまでにバジリスクやコカトリスに何度も遭遇した。
赤いサイクロプス戦の余波で【石化耐性】を持つ装備が損傷しており、その穴から徐々に石化していった。
森を抜ける直前で気絶したアリシアは、奇跡的にもユニークの噂に釣られた同業者達に保護された。
そして、目覚めたアリシアは、自分の四肢がないことに気づいた。
「……話は分かった。だが、奴隷になるのは何故だ。一流の冒険者なんだから、蓄えくらいあるだろ?」
「持ち逃げされたのですよ。リーダーのアレックスという男に。パーティーの活動資金も、アリシア嬢の個人資産も、全て。最初は優しかったそうですが、個人資産を受け取るまででしょうな」
仲間が死に、仲間だと思っていた生き残りに裏切られ、膨れ上がる借金は返せない。アリシアが奴隷になるのは必然だった。
不幸中の幸いだったのは、この主人に拾われたことだろう。
「このままだと、アリシアはどうなる?」
「慈善事業ではございませんので、損切りになるかと。エルフですので、欲しがる方はいらっしゃいます」
今はまだ待遇が良い。物好きかつまともな誰かに買ってもらえる可能性がある。
売れなければ、エルフの丈夫な体を活かして治験・訳あり娼館・ハーフエルフを生み出す苗床として売られる。
残酷な現実を聞いてアリシアを横目で見たが、反応はなかった。
アリシアは受け入れている。いや、諦めているのだ。
「聖女様に頼むコネはないのか?」
「打診は致しましたが、体調を崩しているそうで、どこか僻地で療養中とのことでした」
聖女ことアミ・スズキは、俺と同じ転生者だ。
そのあたりを活かせば接点を作れるかもしれないが、所在が分からないままだ。
俺は失った左腕を自分で治す。そのために努力し、失敗した。
疲れて腐っていたとき、聖女を頼るという選択肢が頭に浮かんだ。
その代償として、魔王討伐のために勇者パーティーに出荷されてしまう。
腕が治っても死んだら意味がない。
だから俺は、聖女に関わらないよう生きていくことを決めていた。
自分の身勝手な考えを振り返れば、聖女が活動を止めたのも納得できる。
人は奇跡を求める。対価に釣り合わない奇跡だ。
めっきり聖女の噂を聞かなくなったし、有象無象が藁にもすがる思いで寄ってくることに嫌気が差したのかもしれない。
いい加減な俺と違い、聖女様は奇跡の体現者だ。
よほどの事情がなければ、嫌ですとは言えないだろう。
だから療養中という理由は、あながち嘘ではない気がした。
「そう、か……心配だな……」
たくさん考えると疲れてしまい、その場に座り込む。長い溜息を吐きながら、俺は迷っている。
アリシアは助けを求めてはいない。諦めている。
だが、謎の幻聴は助けを求めた。アリシアを助けろと言った。
このまま帰ってどうなる?
幻聴は諦めるのか? アリシアはまともな人に買われるのか?
心変わりした聖女か、新たな聖女が誕生し、アリシアを救うかもしれない。
ただのおっさん……人間の俺と違って、エルフの寿命は長いと聞く。諦めて待てば、いつか奇跡が起きるかもしれない。
そもそも、俺は自分のことで手一杯だ。
左腕を代償に得たものは大きいが、それなりに苦労はしている。
治す手段はあるものの、いつ治るか分からない。
そんな俺が誰かを心配してる余裕などないわけだが……。
ふと自分の左腕を見る。肘から先がない。
そしてアリシアを見て、答えは出た。
アリシアは助けてとは言わないが、助かるなら助けて欲しいに決まってるしな。
「なぁ、アリシア。おじさんと一緒に来るか?」
「……醜い姿ではありますが、拾っていただけるのなら、この体どのようにもお使い下さい」
かつての輝きはどこにもなかった。
拒絶されたほうがまだましな気分だ。
「主人、アリシアを買う。いくらだ?」
「アリシア嬢と面識があるのは聞いておりましたが、意外と深い間柄だったので?」
「いいや、浅い仲だよ。だが、彼女には恩がある。恩は返す主義だ」
「金貨20枚ですが、本当によろしいので?」
「あぁ、金の問題じゃ……えっ、2000万!? 2000万!?」
恥ずかしながら、この日一番の大声が出た気がする。
人の命の値段としては安いのかもしれないが、財布事情は別である。
だからこっそりと、主人に耳打ちする。
「普通の奴隷っていくらすんの……?」
「容姿だけなら金貨3枚ほどかと。うちで扱ってる奴隷は、社会的地位の高いお方にお売りするので金貨5枚くらいですな」
「あらお安い。安すぎない?」
「借金奴隷なら5年で平民に戻ります。犯罪奴隷なら10年ですな。気に入られれば平民としてそのまま雇われるものです」
「そ、そうなんだ。5年で開放するからその値段と。アリシアも借金奴隷だよな?」
「はい。ここだけの話ですが、アリシア嬢を欲しがる方が多くいらっしゃいます」
「た、待遇は……?」
「苗床ですな。ハーフエルフを増やして手元に置けば、家の力が高まるので」
くそっ。エッチだ!!
「お、俺は恩を返す主義だ。アリシアを買おう……分割できますか?」
「一括払いのみです……と言いたいところですが、お客様には特別に、分割払いを認めましょう。なんと無利子で」
「おぉ、神よ……」
「恐縮です。私としても、アリシア嬢の待遇が少しでも良くなるよう努力する義務が……いえ、主義がございますので」
「俺たち気が合うね。何かあったらまた頼るね」
「ありがとうございます。24回払いと48回払い、どちらに致しますか?」
「24回払いでお願いします」
48回払いは、俺が死んでるかもしれない。
こうして俺はアリシアを買った。
「……はい」
四肢を失い、這い寄ってくるアリシアの姿を見て、自然と口から出た言葉だった。
それに対し、アリシアは小さな声で認めてしまった。
「ガルシアはどうした!?」
「死にましたっ」
「う、嘘だ!! ガルシアは、あのフロントデーモンの攻撃を受けきった男だぞ!?」
フロントデーモン。俺がギルド職員になる試験で、不運にも遭遇してしまった化け物だった。
場数を踏んで昔より強くなった自覚はあるが、それでもあの暴力的な強さはかすまない。強くなったからこそ、その力量差の片鱗に気づけるようになった。
俺はガルシアという男を、尊敬していた。
少し頭が固いやつだったが、信念があるということでもある。
死を前にして、迷い揺らぎながらも、仲間を守った男だ。
「あの魔術師の女の子が居ただろう!? リーラだったか!? あの子はどうした!?」
「……死にましたっ」
リーラ。アリシアの後ろに居た魔術師の女の子だ。こぶし大の大きな魔石を付けた杖を装備していたことから、実力は確かだろう。
「嘘だと言ってくれよ……」
アリシアの返事はなかった。
そういえば、もうひとり誰か居た。感じの悪いやつだったから名前は忘れてしまったが――。
「お客様。動揺しているのは理解しますが、これ以上は……」
「あ、あぁ……そうだな。悪かった」
栄光に突き進む彼女たち『新緑の翼』に何が起きたのか?
もちろん知りたい。死んだと言われてもどうしても信じられない。
だが、深い仲でもない俺がアリシアの傷口を掘り返すわけにはいかない。
そう考えて、ようやく思い出した。
俺は、幻聴に導かれてここに来た。
何らかの方法を使って、俺に助けを求めたのはアリシアなのか?
「ここでの暮らしはどうだ? 主人の前で聞くのはどうかと思うが」
「こんな私にも皆さん良くして下さっています」
その言葉に嘘はなさそうだ。
奴隷商という響きは悪いが、それだけだ。
主人の人格と手腕が為せる技なのか、奴隷たちには教育が行き届いている。
ここに居たほうが幸せなのではないだろうか。
だが、幻聴は助けを求めてきた。
しかし、その幻聴の元がアリシアとは思えない。
そう確信するほど、アリシアの目に力はない。宝石のエメラルドかと思うほどきれいだった瞳の輝きはほとんど感じられない。すべてを諦めているのだ。
「主人に聞きたい。アリシアはなぜこんな目に?」
「聞いてどうするのですか? まさかアリシア嬢を購入するつもりで?」
「場合による。今はそれしか言えん」
「かしこまりました。私が人づてに聞いた話では――」
アリシアが所属するギルド『新緑の翼』は、俺が知っていた通り、栄光に向かって突き進んでいた。
そこに影を落としたのは、依頼に失敗したからだった。
「神秘の森に潜む赤いサイクロプスを確認せよ。それがアリシア嬢たちが受けた依頼です」
正確には依頼ではなく、噂だったらしい。
指名依頼ではなく、誰が受けてもいい。そもそも受ける必要がないものだった。
神秘の森は、王都から遠く離れており、町や村とも隣接しておらず、魔物による人的被害はほとんどない。
どちらかと言えば、恐ろしい森の近くに住み着く人が居なかっただけだろうが。
深い霧に包まれた森の中に潜む魔物たちは、バジリスクやコカトリスといった、森に迷い込んだ生物を石化させて、捕食する習性を持つ。
たまに森の外に出てきた魔物を冒険者が間引くだけで済むわけだ。
誰も困ってないのに『新緑の翼』が受けたのは、名声を得るためだろう。
赤いサイクロプスはギルドでは確認されていない。
つまりユニークモンスターの可能性が高かった。
ユニークモンスターは希少であり、冒険者が一生のうち一度会えるかどうかと言われている。
例外なく強力な個体であり、その素材を武具に使えばより強くなれる。
実力至上主義の王都ギルドの中で存在感を放つ『新緑の翼』だったが、まだユニークモンスターに遭遇したことはなかった。
「アリシア嬢たちは、赤いサイクロプスを確認し、その場で戦闘になりました」
あとは聞いた通り、戦いの中でタンクのガルシアが死んだことで、残ったメンバーは即座に撤退を決めた。
その直後に魔術師のリーラが殺され、アリシアは仲間の死を横目に逃げ出すことしかできなかった。
神秘の森を抜けるまでにバジリスクやコカトリスに何度も遭遇した。
赤いサイクロプス戦の余波で【石化耐性】を持つ装備が損傷しており、その穴から徐々に石化していった。
森を抜ける直前で気絶したアリシアは、奇跡的にもユニークの噂に釣られた同業者達に保護された。
そして、目覚めたアリシアは、自分の四肢がないことに気づいた。
「……話は分かった。だが、奴隷になるのは何故だ。一流の冒険者なんだから、蓄えくらいあるだろ?」
「持ち逃げされたのですよ。リーダーのアレックスという男に。パーティーの活動資金も、アリシア嬢の個人資産も、全て。最初は優しかったそうですが、個人資産を受け取るまででしょうな」
仲間が死に、仲間だと思っていた生き残りに裏切られ、膨れ上がる借金は返せない。アリシアが奴隷になるのは必然だった。
不幸中の幸いだったのは、この主人に拾われたことだろう。
「このままだと、アリシアはどうなる?」
「慈善事業ではございませんので、損切りになるかと。エルフですので、欲しがる方はいらっしゃいます」
今はまだ待遇が良い。物好きかつまともな誰かに買ってもらえる可能性がある。
売れなければ、エルフの丈夫な体を活かして治験・訳あり娼館・ハーフエルフを生み出す苗床として売られる。
残酷な現実を聞いてアリシアを横目で見たが、反応はなかった。
アリシアは受け入れている。いや、諦めているのだ。
「聖女様に頼むコネはないのか?」
「打診は致しましたが、体調を崩しているそうで、どこか僻地で療養中とのことでした」
聖女ことアミ・スズキは、俺と同じ転生者だ。
そのあたりを活かせば接点を作れるかもしれないが、所在が分からないままだ。
俺は失った左腕を自分で治す。そのために努力し、失敗した。
疲れて腐っていたとき、聖女を頼るという選択肢が頭に浮かんだ。
その代償として、魔王討伐のために勇者パーティーに出荷されてしまう。
腕が治っても死んだら意味がない。
だから俺は、聖女に関わらないよう生きていくことを決めていた。
自分の身勝手な考えを振り返れば、聖女が活動を止めたのも納得できる。
人は奇跡を求める。対価に釣り合わない奇跡だ。
めっきり聖女の噂を聞かなくなったし、有象無象が藁にもすがる思いで寄ってくることに嫌気が差したのかもしれない。
いい加減な俺と違い、聖女様は奇跡の体現者だ。
よほどの事情がなければ、嫌ですとは言えないだろう。
だから療養中という理由は、あながち嘘ではない気がした。
「そう、か……心配だな……」
たくさん考えると疲れてしまい、その場に座り込む。長い溜息を吐きながら、俺は迷っている。
アリシアは助けを求めてはいない。諦めている。
だが、謎の幻聴は助けを求めた。アリシアを助けろと言った。
このまま帰ってどうなる?
幻聴は諦めるのか? アリシアはまともな人に買われるのか?
心変わりした聖女か、新たな聖女が誕生し、アリシアを救うかもしれない。
ただのおっさん……人間の俺と違って、エルフの寿命は長いと聞く。諦めて待てば、いつか奇跡が起きるかもしれない。
そもそも、俺は自分のことで手一杯だ。
左腕を代償に得たものは大きいが、それなりに苦労はしている。
治す手段はあるものの、いつ治るか分からない。
そんな俺が誰かを心配してる余裕などないわけだが……。
ふと自分の左腕を見る。肘から先がない。
そしてアリシアを見て、答えは出た。
アリシアは助けてとは言わないが、助かるなら助けて欲しいに決まってるしな。
「なぁ、アリシア。おじさんと一緒に来るか?」
「……醜い姿ではありますが、拾っていただけるのなら、この体どのようにもお使い下さい」
かつての輝きはどこにもなかった。
拒絶されたほうがまだましな気分だ。
「主人、アリシアを買う。いくらだ?」
「アリシア嬢と面識があるのは聞いておりましたが、意外と深い間柄だったので?」
「いいや、浅い仲だよ。だが、彼女には恩がある。恩は返す主義だ」
「金貨20枚ですが、本当によろしいので?」
「あぁ、金の問題じゃ……えっ、2000万!? 2000万!?」
恥ずかしながら、この日一番の大声が出た気がする。
人の命の値段としては安いのかもしれないが、財布事情は別である。
だからこっそりと、主人に耳打ちする。
「普通の奴隷っていくらすんの……?」
「容姿だけなら金貨3枚ほどかと。うちで扱ってる奴隷は、社会的地位の高いお方にお売りするので金貨5枚くらいですな」
「あらお安い。安すぎない?」
「借金奴隷なら5年で平民に戻ります。犯罪奴隷なら10年ですな。気に入られれば平民としてそのまま雇われるものです」
「そ、そうなんだ。5年で開放するからその値段と。アリシアも借金奴隷だよな?」
「はい。ここだけの話ですが、アリシア嬢を欲しがる方が多くいらっしゃいます」
「た、待遇は……?」
「苗床ですな。ハーフエルフを増やして手元に置けば、家の力が高まるので」
くそっ。エッチだ!!
「お、俺は恩を返す主義だ。アリシアを買おう……分割できますか?」
「一括払いのみです……と言いたいところですが、お客様には特別に、分割払いを認めましょう。なんと無利子で」
「おぉ、神よ……」
「恐縮です。私としても、アリシア嬢の待遇が少しでも良くなるよう努力する義務が……いえ、主義がございますので」
「俺たち気が合うね。何かあったらまた頼るね」
「ありがとうございます。24回払いと48回払い、どちらに致しますか?」
「24回払いでお願いします」
48回払いは、俺が死んでるかもしれない。
こうして俺はアリシアを買った。
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