旦那様は魔法使い

なかゆんきなこ

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幼馴染は魔法使いの弟子

黄色い薔薇の物語編 25

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 自分に貫かれながら二度目の絶頂を迎えたアニエスは、そのまま気を失ってしまった。
 サフィールは、彼女が達する瞬間にぎゅっと自身を締め付けられて、慌てて自身を抜くと、
「っ」
 絶頂を迎え、アニエスの白い肌の上に、熱い白濁を吐き出した。
 荒い息で、ゆっくりと彼女から身を離す。
 本当は、ずっと繋がっていたかったけれど。
 そう、名残を惜しむように、彼女の髪と、頬と、唇にキスをして。
 サフィールは立ちあがり、浴室に向かった。
 冷たい水を浴びて、気を静める。
 アニエスを前にしたサフィールは、性の喜びを知ったばかりの少年のように、余裕が無い。彼女が気絶していなければ、あの後何度も何度も犯していただろう。
 初体験の、アニエスを。
 アニエスの身体は、サフィールにとっても初めての快感を教えてくれた。
 想い合う相手と結ばれる、喜びを。
 大切にしたいと、サフィールは思う。大切に、慈しんで。
 二度と、傷つけたくないと。
 水を浴びている内に、サフィールの気は静まっていく。
 今、彼の心に在るのは火のような熱情ではなく。
 ただ相手を想う、凪いだ海のような穏やかな気持ちだった。
 自分の身を清め、温かいお湯で濡らしたタオルと乾いた布を手に寝台に戻る。
 そうして今度は、気絶したままのアニエスの身体を清めた。
 彼女は恥ずかしがるかもしれないが、汗と互いの精液とにまみれさせたまま放っておくわけにもいかない。
 自分の身体よりよほど丁寧に清めて、優しく寝具を掛けてやって。
 その傍らに、サフィールは腰かけた。
 そっと、その寝顔に触れる。その顔がどこか満ち足りたものに見える気がするのは、サフィールの願望、だろうか。
 彼女もまた、自分と一つになれたことを喜んでくれているといい、という。
 そう、自分と彼女は確かに結ばれたのだ。
(…ありがとう、アニエス…)
 こんな自分を、想っていてくれて。
 見捨てないで、いてくれて。
 愛して、くれて。
『いつか…』
 サフィールの脳裏に、ある記憶が甦る。
 それは…、

『いつかアニエスに、たくさんの黄色い薔薇をあげる。今日作った花より、ずっと綺麗な花を。たくさん』

 幼い頃、二人で交わした。
 他愛の無い、約束。

「一人前の魔法使いになって、大人になったら。大人になったアニエスに、黄色い薔薇の花をたくさん贈るよ」

 サフィールは、幼い頃の自分が口にした言葉を辿る。
 そう。幼い頃の自分は、確かにアニエスに約束した。
 その言葉に、嬉しそうに微笑んでいた少女。思えば、あの時から、
 ずっと自分は、アニエスに恋をしていたのかもしれない。

 自分は一人前の魔法使いになった。大人に、なった。
 そして、アニエスもまた、大人になった。
 大人になった二人は、再び出会い。
 恋をして、ひとつになった。

「約束、叶えるよ、アニエス」

 君に、たくさんの薔薇をあげる。
 薔薇だけじゃない。君が望むなら。
 なんだって、あげる。
 サフィールはそう、囁いて。
 そっと、寝台を後にした。

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