「ユニクロ窃盗団」横行が深刻化…セルフレジ導入&お客様第一主義の弊害

――報道によると、窃盗団はボストンバッグなどで店外にまとめて商品を持ち出すという手口を繰り返しているようですが、ユニクロでは全商品に盗難防止タグも付いており、防犯センサーが鳴るのではないでしょうか。

「ユニクロはRFID(Radio Frequency Identification:無線周波数識別)という電子タグを採用し、セルフレジを国内大半の店舗に導入していますが、レジの省人化は店の利益に直結する部分です。この窃盗団の犯罪は、そこを逆手に取ったものといえます。

 その背景には、日本市場の特殊事情があります。小売店では盗難防止用のタグが付いている商品がありますが、センサーに誤作動が生じることがあります。アラームが鳴った際に、店員がお客を呼び止めて調べることになりますが、それが間違いであった場合のケアなどを嫌う国民性というか、“お客様第一”主義的な対応がつけ狙われている要因かと思います」(同)

――アラームが鳴っていても、あまり店員に調べられない傾向がある店舗が狙われているということでしょうか。

「一般的にセルフレジでは、商品に付いたバーコードをお客が自ら一つひとつスキャンしますが、ユニクロのセルフレジはカゴごと全商品の情報を読み取ります。それはラベルに電子タグが埋め込まれていて、そこから発信されている電波をレジが自動的に読み取る仕組みですが、それも完璧ではありません。たとえば、水に濡れたり、通信に影響が出る素材があったりすると、電波を読まないことがあります。そのようなエラーは極めて少ないとは思いますが、誤作動に対して店側が遠慮していた嫌いがあったのではないかと考えています」(同)

――ユニクロはベトナムにも進出しているのに、日本のユニクロ店舗で窃盗を行うということは、やはり日本国内で売られている製品に価値があるといえるのでしょうか。

「日本の店が狙いやすいということもあるかもしれませんが、日本で流通している製品にウマミというか価値があるのでしょう。日本語の製品タグが付いている、というのもブランド価値になっている可能性は考えられます」(同)

――ユニクロ以外のブランドでも窃盗団に狙われているのでしょうか。

「H&MやZARAはユニクロ以上に人気があるので、窃盗団に狙われている恐れはありますが、ユニクロと違う点として、商品自体に盗難防止ブザーが付いており、精算せずに店外に持ち出すとブザーが鳴るという対策を取っています」(同)

――今後、ユニクロが取り得る対策は何か考えられますか。

「ユニクロもスタッフの教育を見直し、店舗全体の高めていくとのコメントを出していますが、セルフレジの導入について慎重になる必要があると思います。

 セルフレジを導入する小売店が、ここにきて急速に増えています。たとえばスーパーマーケットで、セルフレジを導入した100社にアンケートを取ったところ、12社で盗難が増えたとの報告があります。アパレル以外でもセルフレジ導入は広がっているわけですが、同時に防犯対策も高めていこうとの機運も高まっています。今後、セルフレジ導入に伴い、盗難が増えないような対策も練られていくとみています。当然、ユニクロでも窃盗団による被害を受けて、新たな防犯対策を検討していることと思います」(同)

――セルフレジが広まる背景として、人手不足もあるのでしょうが、盗難等による売り上げロスを含めても、セルフレジ導入による人件費削減のほうが利益率向上に寄与するといえるのでしょうか。

「先ほども申しましたが、ロス率は売り上げに対して1~3%です。このロスには、盗難や棚卸でのミス、不良品なども含まれています。そう考えると、盗難被害があったとしても、セルフレジをやめて有人化しようとはならないでしょう」(同)

 窃盗団による大規模犯罪のターゲットにされるほど、ユニクロは世界的人気ブランドになったともいえるが、昨今、巧妙かつ大胆に行われる犯行への対策は、“お客様第一”や“おもてなし”を重視してきた日本の接客業に大きなダメージを与えかねず、企業の頭を悩ませることになるだろう。

(文=Business Journal編集部、協力=磯部孝/ファッションビジネス・コンサルタント)