温かい持ち帰り弁当を提供する大手持ち帰り弁当チェーン「ほっかほっか亭」の運営会社ハークスレイは、冷凍弁当事業に参入し、同事業を成長の柱に据える。日本経済新聞の取材に対し同社の青木達也会長兼社長が明かした(10月1日付「日経新聞」記事より)。出来立ての弁当をウリにする同社は、なぜ冷凍弁当事業に乗り出すのか。業界関係者の見解を交えて追ってみたい。
全国に約800店を展開する「ほっかほっか亭」。定番メニューの「のり弁当」(税込480円/エリアによって異なる/以下同)、「とりめし」(520円)、「目玉焼きハンバーグ弁当」(660円)に加え、常に期間限定メニューも投入。現在は「牛すき焼弁当」(920円)、「のり煮たまご弁当」(580円)などが販売されている。
ハークスレイの母体は、「ほっかほっか亭」の近畿地区のフランチャイズ事業を統括していた「ほっかほっか亭大阪事業本部」。06年に全国3エリア(東部・関西・九州)の総本部だった「ほっかほっか亭総本部」を子会社化し、現在に至る。ちなみに全国に約2400店舗を展開する「ほっともっと」の運営元・プレナスとは別会社だ。もともと「ほっかほっか亭」の九州地区の事業本部会社だったプレナスは07年に「ほっかほっか亭総本部」との間で商標権をめぐる裁判となり、プレナスが「ほっかほっか亭」のフランチャイズ(FC)を離脱して新ブランド「ほっともっと」へ移行したという経緯がある。ちなみにプレナスは定食チェーン「やよい軒」を運営している。
ハークスレイの2024年3月期決算は売上高が467億円(前期比31.3%増)、当期純利益16億円(同52.8%増)と好調だが、「ほっかほっか亭」の持ち帰り弁当事業は全体売上のうちの約3割にすぎず、店舗リース・店舗不動産事業の店舗アセット&ソリューション事業が約3割、スーパーやコンビニエンスストアなど小売店からのOEM受託製造や物流事業の物流・食品加工事業が約3割となっている。
その同社は冷凍弁当に本格参入する。前出・日経新聞記事によれば、ドラッグストアなどの小売店や介護施設など業務用に特化し、1食250円程度という低価格で販売。冷凍弁当をテコに物流・食品加工事業の売上を165億円(24年3月期)から4年後には300億円へ伸長させる計画だという。
大手小売チェーン関係者はいう。
「『ほっかほっか亭』の過去1年の既存店売上高をみると概ね前年同月比5%増以下にとどまっており、また店舗数も減少しており、新たな新規出店余地も限られると考えられ、事業としては頭打ち状態といえる。一方、共働き世帯の増加などを受けて保存が利く冷凍食品の人気は高まっており、冷凍食品市場は近年、拡大トレンド。食品メーカー各社は数少ない成長市場だとして新商品の開発に注力しており、スーパーやコンビニも冷凍食品の取り扱いを拡充させている。そこに低価格の弁当を投入できれば売れる見込みはあり、特に低価格を武器にコンビニやチェーンスーパーからプライベートブランド(PB)の製造を多く受託できれば、大きく成長できる可能性がある」
外食チェーン関係者はいう。
「冷凍食品は冷凍施設や専用の物流設備などが必要なため多額の設備投資が必要であり、また、いかに大量に製造・販売して規模の経済を生めるかがカギとなってくるため、ハークスレイのような資金力が大きく、すでに多くの食品製造・加工拠点、物流網を保有する大企業が有利となる。人手不足が深刻化する介護施設では調理が不要で保存ができる冷凍弁当・総菜の需要は今後高まると考えられ、学校や企業などの各種施設では食堂の運営が厳しくなっているため、食堂の代替手段として冷凍弁当が使われる機会が増える可能性もある。そうした領域に1食200円台という低価格で参入すれば勝機はある。
ハークスレイの場合は『ほっかほっか亭』や食品加工事業との共同調達で仕入れ価格を低く抑えられるし、既存の加工・製造拠点を使うことで追加投資を最小限に抑えることもできる。既存の競合他社にとっては脅威の存在になってくるかもしれない」
(文=Business Journal編集部)