「送料を消費者に転嫁していくというスタンスを貫く方法もあると思いますが、ECモールに追随していくヨドバシがライバルであることを考えると、消費者の関心を引くためには、送料を無料にせざるを得ないでしょう」(同)
――ビックカメラ・ドットコムは、ヨドバシ・ドット・コムに大きく後れを取っていますが、これが打開策のひとつになるのでしょうか。
「ビックカメラの置かれている状況から、ECに大きく舵を切っていかなければならないので、ヨドバシを追いかける策は打っていくことになるでしょう。送料無料は、そんな攻めの一手なのだと思います。
さらに、家電はEC化率がとても高く、私の調べでは40%を超えています。従って家電のECは伸びしろが小さく、家電以外の商品を売る方向に向かっており、総合小売業を目指すことを余儀なくされている側面があります。そうしてアマゾンなどのECモールを相手にするなか、送料無料などの施策で消費者にアピールしなければならないという事情があると思います」
――配送料でメリットを打ち出せても、品揃えの面では見劣りする感があります。
「確かにアマゾンなどに比べると品揃えは少ないとしても、商品のラインナップは著しく拡充されてきています」
――家電量販店ECサイトの現状や今後の展望はどのように見ていますか。
「昨年のデータ(非公開・推計値)を見ると、ヨドバシ・ドット・コムは2000億円、ヤマダデンキは1500億円、ビックカメラ・ドットコムは800億円、ジョーシンは600億円ほどです。ヨドバシは前年比ほぼ横ばい、ヤマダは伸ばしています。そんななか、ビックカメラは前年比減です。コロナ化の反動かと思いますが、売上が落ちてきているという背景が、送料無料というテコ入れ策として表れているともいえるでしょう」
ビックカメラ・ドットコムは、ライバルのヨドバシ・ドット・コムを追い上げるうえで、送料無料は必須の施策だったといえる。サイトやサービス面で大きな差異を設けるのは難しいが、まずは消費者に訴えかけるひとつのポイントを確保した。
ほかに、ビックカメラ・ドットコムがヨドバシ・ドット・コムに対してアドバンテージがあるとすれば、PayPayなどのモバイル決済を利用できる点だ。ヨドバシはクレジットカード以外のキャッシュレスがあまり充実していないのが難点だからだ。
消費者としては、安く便利に買い物できる選択肢が増えることは、歓迎するところだろう。今後、ビックカメラ・ドットコムがどのような策を打ち出すのか、ヨドバシ・ドット・コムに迫るサイトに成長するのか、注目である。
(文=Business Journal編集部、協力=本谷知彦/株式会社デジタルコマース総合研究所代表取締役、ECアナリスト)