気になるのが今後の同学の行方だ。
「岩本理事長と彼女の息がかかった人物が経営陣として居座る限り、医師・看護師など職員の流出は続き、早晩経営は行き詰まる。学内では岩本理事長の辞任を求める要望書を出す動きもあるようだが、本人が自発的に辞めない限り岩本体制は続くだろう。病床稼働率5割ということは、ベッドの半分しか埋まっていないということであり、病院経営としては危険水域で経営が成り立たない。本当に破綻が現実的になってくれば、厚労省や文科省が動いて他の大学との統合や合併などで救済する道を模索するだろうが、相手が見つかるかどうかは不透明。戦後初の医科大学破綻という事態も起こり得る」(都内の医師)
当サイトは24年3月30日付記事で同学の今後について報じていたが、以下に改めて再掲載する。
東京女子医大が破綻する可能性はあるのか。大学ジャーナリストの石渡嶺司氏はいう。
「破綻までは行かなくても、後述の他大学による買収はあり得ます。と、いいますか、東京女子医大単独での生き残りは極めて難しい状況にあります。同学はもともと高い医療技術で評価されていました。しかし、01年に人工心肺事故、14年に全身麻酔剤の過剰投与事故、抗がん剤の過剰投与事故(判明は16年)などが起き、医療機関としての信頼が失われています。さらに大学病院としては他大学の5~7割程度という低い給与体系から、21年には医師が100人以上、退職しています。
ところが、岩本理事長は創業者一族というだけで要職を歴任し、14年には副理事長、19年には理事長に就任します。岩本理事長が経営を立て直したとはいいがたく、不透明な資金の流れなどが22年から一部週刊誌でも報道されていました。22年度事業報告書によると、経常収支差額がマイナス97.2億円。入院患者数(延べ)は12年度に67.8万人(附属病院を含む)だったものが22年度は43.8万人と減少しています。
医科大学は通例、医学部は赤字でも病院事業で利益を出し、学校法人全体では黒字にもっていくのが一般的です。それが入院患者数が減っており、それだけ大学の信頼が失われていることが影響しています。しかも、今回の背任事件によりガバナンス欠如が明らかとなってしまいました。こうなると、同学の独力による再建は期待できません。資金力のある学校法人が買収したうえでの再建が基本線となるのではないでしょうか。戦後、医学部のある大学の経営破綻は起きていません。仮に経営破綻となった場合、日本の医療の信頼が損なわれることになります。これを回避すべく、他大学の買収による経営再建が基本線となるでしょう」
東京女子医大が破綻を回避するため、別の医科大学や一般大学と合併・経営統合するという選択肢はあり得るのか。たとえば以前から医学部を持っていない早稲田大学が事実上の医学部創設のために東京女子医大の取得に動くという噂が取り沙汰されてきた。
「どこが買収しそうかという点について、候補となるのが早稲田大学と京都先端科学大学です。早大は創立以来、医学部新設が悲願でした。現在の田中愛治総長は18年の総長選に立候補した際、公約の一つに医学部新設を入れています。また、早大は東京女子医大と2000年に学術交流協定を締結、10年には大学院共同教育課程を開設しました。こうした縁から、早大は長年、東京女子医大を買収するのではとの観測が出ていました。ただし、東京女子医大の経営状況は相当悪く、それを早大が引き受けるには赤字額が大きすぎるとの指摘もあります。
もう1校が京都先端科学大学です。ニデック(旧日本電産)創業者の永守重信氏が京都学園大学を買収して開設したのが京都先端科学大学です。同氏は20年、医学部新設構想を公表しています。資金力があることから、この京都先端科学大学も買収元となる有力候補です」(石渡氏)