アップルが開発断念したEV、中国シャオミが3年で開発成功・発売できた理由

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小米汽車の公式サイトより

 2月、米アップルが約10年にわたり取り組んでいたEV開発から撤退することが明らかになった。その一方、スマートフォン市場で競合する中国シャオミが開発着手から約3年でEV発売にこぎつけたことが発表され、驚きが広まっている。何が両者の差を生んだのか。専門家の見解を交え追ってみたい。

 アップルが公式に自動車市場への参入を認めたのは、2013年に同社が開催したアプリケーション開発者向けカンファレンスでのことだった。翌14年にはスマホのiPhoneと自動車を接続してダッシュボード搭載ディスプレイ上でカーナビ機能などさまざまなアプリを利用できる「CarPlay」を発表。17年にはティム・クックCEOがEVと自動運転の開発計画「タイタン」の一時凍結を明らかにするかたちでEV開発に取り組んでいたことを公に認め、計画凍結の理由についてソフトウェアやクラウド上のシステムの開発に注力するためだと説明していた。

 2020年になるとアップルが24年のEV生産開始を目指していることが報じられ、再びハードウェアを含めたEVそのものの開発に取り組んでいることが明るみに。ハンドルなどを排した広い座席スペースのレベル4相当の自動運転型EVの開発を行っていることや、生産を日産自動車や韓国・現代自動車に委託する検討を進めていることなどが報じられてきた。そして今年1月には米ブルームバーグが、アップルが自動運転のレベルをレベル2に下げたうえで発売時期を28年に延期したと報道。2月に入り、開発中止が明らかとなった。EV開発に従事していた約2000人の技術者は生成AIの開発などにシフトするとも伝えられている。

 アップルが年間約10億ドル(約1500億円)もの開発費を投じてきたともいわれるEV開発を断念した理由について、自動車評論家の国沢光宏氏はいう。

「ビジネスモデルとして成立しないと判断したからでしょう。自動車メーカーではない企業がゼロベースから自動車を開発するのは困難で、西側の企業で成功した例はテスラくらいです。そのテスラにしても、最初は英ロータスの車体を大量に購入してそれをベースに開発に着手し、生産ラインもトヨタ自動車のカリフォルニアの工場を居抜き同然の状態で極めて安価な値段で買い取ることで確保。資金面についても、米国の排ガス規制による温暖化ガス排出枠(クレジット)を他メーカーに大量に売却することで資金を得てきたという、非常に恵まれた環境にいたわけです。

 アップルは当初から自社でEVを製造することは考えておらず、世界中の完成車メーカーに生産委託を打診し、日本の自動車メーカーにもほぼ全社に打診したようですが、すべて断られた。残るは中国勢だけとなったものの、米国政府による中国企業への経済制裁によって中国メーカーもダメになり、断念に至ったとみられます」

 自動車業界関係者はいう。

「単純に自動車領域から撤退して生成AIの分野に注力するというわけではなく、自動車に搭載するソフトウェアへの生成AI活用にも取り組むということだろう。実際に過去にも1度、EVそのものの開発を凍結してソフト開発に注力していたように、今後自動車で重要度が増してくるソフト事業に注力したほうが将来性があると判断したのでは。

 アップルがEV開発に取り組んでいた10年の間、テスラが大きく販売台数を伸ばし、中国勢が世界EV市場で台頭。世界中の大手自動車メーカーがEVに参入するなか、アップルといえども今からそこへ参入しても勝算は薄い」

パートナーの確保

 シャオミは2010年に設立され、比較的高い性能とデザイン性ながらも圧倒的な低価格である点を武器にシェアを拡大。23年の世界スマートフォン市場シェアでは、1位のアップル(20.1%)、2位の韓国サムスン電子(19.4%)に次いで3位(12.5%)につけている(米市場調査会社IDC調べ)。日本にも19年に参入し、現在では「Redmi 12 5G」(税込2万9800円~)、「Redmi 12C」(2万3800円~)といった安価なモデルからハイエンドモデルの「Xiaomi 13T Pro12C」(10万9800円~)まで販売している。