別の市場関係者はいう。
「好材料が続出したことに乗じて、株価をブーストさせたうえで高値を見計らって売り抜けようとした投機筋が大量に買い注文を出したのでは。彼らは高値で確定売りをして儲けただろうが、『上がっているから』と安易に手を出した投資家は損をしただろう。
さくらインターネットの1000億円に比べて、たとえばAWSの23~27年の国内投資額は約2.3兆円とけた違い。クラウド事業の領域では、世界中で事業を展開し豊富なノウハウと実績を持つAWS、マイクロソフト、グーグルなどの外資勢が大きくリードしている。特に政府クラウドは国民の個人情報を扱うだけに実績がものをいうため、さくらインターネットがこの分野でシェアを拡大できるのかは疑問」
これまで自治体は各種行政業務に関するシステムを独自に構築・運営してきた。国は各自治体間のシステム連携を向上させるためにシステムを政府クラウド上に移行させるプロジェクトを実施している。政府クラウド上で運用される約20の業務の一部はすでに開発会社が決まっているが、大半が外資系事業者となっており、政府は経済安全保障の観点から、国内でサーバを運用する国内事業者にもシステムの運用を委託する姿勢をみせている。
政府・企業の間でシステム基盤としてクラウドの活用が急速に広まるなか、国内クラウド市場において国内に事業基盤を有する事業者のシェアは約3割にとどまる。経済産業省は、国内に事業基盤を有する事業者が撤退すれば、クラウドサービスの供給を完全に外部に依存することとなり、利用者が保有する重要なデータの管理が海外サービスに依存するとの懸念を持っている。また、日本が大量・高速処理のニーズに対応できるクラウドサービスを開発・提供できない場合、情報処理に関する知見を有する組織・人材が日本から喪失し、あらゆる領域において将来の情報処理を他国に依存するおそれがあるとしている。そのため、経産省はクラウドプログラムを「特定重要物資」に指定し、クラウドプログラムの安定供給確保を図ろうとする者に対して助成金を交付している。さくらインターネットも昨年6月に同プログラムの計画の認定を受けている。
「政府は24年度の中央省庁のシステム調達の競争入札において設立10年未満の企業に評価点を加算する制度を導入するなど、中小や新興のIT企業に下駄をはかせる姿勢をみせている。もちろん国内の新興IT企業の育成という目的もあるが、政府系システムは長年、富士通や日立製作所など大手ITベンダーとべったりの関係で、それが高コストやいつまでも古いシステムが残存する原因にもなってきたため、そうした現状を変える必要が指摘されている。
さくらインターネットはIT業界では老舗といえる存在だが、富士通や日立といったガリバーと比べれば規模は格段に小さい。クラウド事業者としての実績に加え、すでに経産省から特定重要物資プログラムで認定を受けているという実績もあるし、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)など必要なポリシーは持っている。こうした要因・背景が重なり、政府クラウド提供事業者に選ばれたのではないか」(IT企業関係者/2月24日付当サイト記事より)
(文=Business Journal編集部)