もっとも、楽天Gはこれまでにも社債償還に備え資金調達面でさまざまな手を打ってきた。まず、23年7月には楽天証券の持ち株会社、楽天証券ホールディングス(HD)の新規上場を東京証券取引所に申請。だが、競合するSBI証券が日本株の売買手数料をゼロにすると同年8月に決定したことを受け、楽天証券も手数料をゼロにすると決定。売買手数料収入が減るため上場が難しくなり、楽天Gは上場の代わりに楽天証券株を、みずほ証券に売却する方針に転換。楽天Gは楽天証券株の約3割を、みずほ証券に売却した。
昨年12月には、傘下の楽天銀行の売り出し株式の売却が完了し、約600億円を調達(楽天銀行株の保有比率は63%から49%に低下)。このほか、楽天Gの成長の源ともされる楽天ポイントサービスに関係する楽天ペイメントを傘下に持つ楽天カードを上場させるとの観測も流れている。
「金融事業と楽天ポイントは楽天経済圏の成長にとっては大きな柱であり、生命線ともいえる存在。それらへの関与を徐々に薄めていくというのは、楽天Gにとって良い方向ではない」(同)
資金繰り悪化への懸念を払しょくするためにも、携帯電話事業の黒字化は急務だ。楽天Gが契約者増の起爆剤として2月に打ち出したのが「最強家族プログラム」だ。家族で「Rakuten最強プラン」に加入すると、1回線あたり月額110円(税込、以下同)の割引が適用されるというもの。
通常(月額) 割引後(月額)
・3GBまで 1078円 968円
・20GBまで 2178円 2068円
・無制限 3278円 3168円
紹介者には家族一人を紹介するごとに7000ポイント、被紹介者には1万3000ポイント(MNPの場合)が還元されるため、家族6人で加入すると計10万ポイントが還元される。仮に全員が3GBまでのプランを契約すると968円×6人×12カ月で6万9696円となるため、実質1年間無料となる計算だ。
「そもそも楽天モバイルを選択するユーザは『安さ』を重視しており、自ずと楽天モバイルのARPUは他キャリアと比較して低くなる。そのため楽天モバイルはARPUの底上げを図ろうとしているが、今回の『最強家族プログラム』は逆にARPUの低下につながる。(先月)14日の会見でその点について質問を受けた楽天Gの三木谷浩史会長は『必ずしもARPU低下にはつながらないと思っている』と、暗にARPUの低下の可能性があることを認める発言をしている。楽天モバイルとしてはARPUを引き上げたい一方、ECの楽天市場や金融をはじめとする楽天の各種サービスとの相乗効果を高めるにも、また基地局設置などに投下した設備投資の効果を高めるためにも、大幅に契約者を増やさなければならないため、さらにお値打ち感のあるプランを打ち出さざるを得ないという板挟みの状況になっている」(大手キャリア関係者/2月16日付当サイト記事より)
(文=Business Journal編集部)