「売上の3割を楽天市場に取られる」出店料値上げに反発、携帯事業の赤字補填

 もっとも、自社でECサイトを立ち上げて運営する場合、GMOメイクショップなどを使ってサイトを構築し、サイトと広告を運用していかなければならず、それなりのノウハウが必要。その手間やコストを考慮すると、楽天市場に出店するコストは『まあまあ妥当なレベル』ともいえます。また、他のECサイトと比べて新規出店のハードルが低いのも事実で、申し込みからオープンに至るまで専門の担当者が丁寧にサポートしてくれますし、そもそも国内ECでは楽天市場が一強なので、結局は楽天市場を選んでしまうという面はあります」

 今回の価格改定で楽天市場の出店料は、「がんばれ!プラン」が月額1万9500円から2万5000円に、「スタンダードプラン」が月額5万円から6万5000円に、「メガショッププラン」が月額10万円から13万円に値上がり。約3割の値上がりとなる。値上げの理由として、物価や人件費、電気代、システム管理費などの高騰や、さらなる店舗運営支援やユーザビリティの強化、具体的には「顧客体験向上に向けたAIの取り組み」「店舗様の運営効率化に向けたAIの取り組み」などをあげている。

「今回の値上げは、出店者にとってインパクトが大きいといっていいでしょう。例えばスタンダードプランでは年18万円の値上がりとなり、バナー広告1回分のお金が消えることになり、広告を出す回数を減らさざるを得ないという出店者も出てくるでしょう。  

 楽天モバイル事業の赤字の穴埋めという印象が強く、納得感は低い。出店者支援ツールのAI機能を充実するといっても、現状の機能の使い勝手の悪さを考えると、ここから飛躍的に改善されるとは想像しにくい。また、商品説明文の自動生成と商品画像の複数パターン生成ができるようになるというのも、出店者からすれば不必要な機能なので、そうした余計な機能を実装するために出店料が値上がりするというのは、納得感がありません。

 もっとも、物価上昇を受け国内のネット関連サービスが軒並み値上げされており、もし楽天モバイルの赤字という材料がなければ、楽天市場の値上げというニュースはそれほど話題にならなかったかもしれず、タイミングが悪いです」(幅氏)

出店者側も人件費や物価高騰で苦しむなかでの値上げ

 楽天グループは23年12月期連結決算で最終損益3394億円の赤字を計上し、5年連続の最終赤字に沈んだ。業績低迷の原因となっているのが「楽天モバイル」の携帯電話事業であり、同事業の営業損益は3375億円の赤字。携帯電話のサービス開始から4年が経過したが、同事業がEC事業と金融事業の利益を食いつぶす構図が続くなか、24~25年には計8000億円に上る社債の償還を迎えるため、同社の経営の先行きを不安視する見方も広まっている。

 そのため、今回の値上げは携帯事業の赤字穴埋めだという見方は強い。前出・幅氏はいう。

「楽天Gは楽天モバイルをやる理由として『楽天経済圏を強くするため』と言っていますが、たとえば競合する『ヤフーショッピング』は利用者数も出店者数も低迷しており、楽天市場との差は歴然です。『~経済圏』というくくりでは楽天Gは現状でも圧倒的に強い存在なので、もっと横綱相撲的な戦略を取ってもよいのではないかとも感じます」

 EC会社関係者はいう。

「楽天市場に出店する事業者は5万以上あり、仮に1店舗当たり平均で月額2万円の値上げと仮定すると、楽天Gにすればそれだけで年間100億円以上の収入増となる。楽天G全体として赤字縮小の意図があるのは明らかだが、EC事業は黒字で儲かっており、今急いで大幅な値上げを行う必然性は乏しく、携帯事業の赤字穴埋めのために楽天市場の出店者に対して値上げを行うのはおかしな話であり、筋違い。楽天市場には小規模な出店者も多く、どこも人件費や物価高騰で苦しむなかでの値上げということもあり、出店者にとっては結構衝撃的な話。反発が予想される」(2月27日付当サイト記事より)

(文=Business Journal編集部、協力=幅貴道/ネットショップ総研)