自動車保険の保険金水増し請求問題に端を発し、顧客から預かった自動車を意図的に傷つけたり、依頼された修理を行わないなどの不正が次々に告発され、経営危機に陥っている中古車販売大手のビッグモーターで、社員の給料が激減していると報じられている。
かつてのビッグモーターは高額な給料をアピールして採用活動を行っていた。「年収1000万円は当たり前!」「入社2年目で2000万円以上」「最高年収4600万円」などと、求人サイトで喧伝していたほどだ。
だが、たて続けに不祥事が明るみに出たことで経営が傾き、今や社員の月給が20万円も減り、賞与もなくなっていると報じられている。
そこでBusiness Journal編集部は、ビッグモーター広報部に、以下の3点について質問を投げた。
(1)月給の20万円カットや賞与の支給見送りは事実か
(2)昨年8月以降の半年間、営業成績に関係なく昨年4~6月の歩合給と同等の金額を支払うと社員に通知されていたが、この措置はすでに終了されたのか
(3)昨年7月の時点で、転職サイト上などに「平均年収957万円」「月給24万2900円~200万円」「【平均年収モデル】部長:年収3668万円(38歳)」と掲載していたが、現在の平均年収はどうなっているのか
これに対し、ビッグモーター広報部は「社員への給与の補填・賞与の支給等、社内の給与・賞与制度については、恐れ入りますが回答を控えさせていただきます」と、質問への明言は避けた。
現時点での詳細は不明だが、ある中古車販売業者に、そもそもビッグモーターは中古車業界の一般的な給与水準と比べて高いのか、話を聞いた。
「ビッグモーターは、確かに給料が高いと謳って求人を出していましたが、不正発覚前の段階で、実際の平均給与は300万円台だったといわれています。高いノルマを課され、それを達成しないと、ペナルティとして給料が減額されるという話を同社の社員から聞いたことがあります。
ビッグモーターは、クルマの買い取りや販売に高いインセンティブを設けていたので、成績が良ければ高い給料をもらえたかもしれませんが、そうでなければ給料は低くなります。この給与形態が、強引な営業や不正に結びついていたのは間違いないでしょう」
インセンティブによるところが大きかったとはいえ、高給を謳っていたビッグモーターが、高い給料を払えなくなったとすれば、転職する社員が続出すると考えられるだろうか。
「確かに、去年の不正発覚以降、転職する人は一定数います。しかし、転職を会社がサポートしたり、退職金を保障しているという話は聞きません。そのため、転職活動も簡単ではないでしょう。『ビッグモーターにいたというだけで白い目で見られる』との声も聞きます。そのため、転職のタイミングをうかがっている人も多いのではないでしょうか。ビッグモーターに対して、買収や資金提供を検討している企業があるとも報じられているので、経営が再建されることを期待して、会社に残っている人もいると思います」
実際に、ビッグモーターの買収や資金提供に名乗りを挙げているとみられる企業は、昨年以降、中古車買い取り・販売店「ガリバー」を運営するイドムやオリックスといった競合や、大手総合商社の伊藤忠商事など、複数の名前が報じられている。
すでにビッグモーターは自力での再建は困難とみられ、外部資本を入れざるを得ない状況だが、その道筋は決して明るくない。なぜなら、保険金の不正請求などにからみ莫大な損害賠償が発生する可能性が高く、損害額が確定しない限り、いずれの企業も簡単には確定的な結論を出せないからだ。
ビッグモーターには整備士など技術を持った社員も多く、販売網など企業としての価値を高くみる向きも多い。だが、時間とともに社員の流出や企業価値の減退というマイナス要素が増えていく。同社に残された時間は決して多くはないだろう。
(文=Business Journal編集部)