10月の銀行間送金システム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の障害をはじめ、今年もいくつかの大規模なシステム障害が発生したが、9~10月にかけ約1カ月にわたり障害が続いた大手スーパー「西友」では、店舗の一部の棚で欠品が続きガラ空きの状態になったり、一部商品で1週間ほど欠品が続くなど異例の事態が発生したことが記憶に新しい。その原因は何だったのかを探ってみたい。
障害は9月、基幹システムの切り替えに伴い起きた。西友は一部店舗の在庫に欠品や品薄が発生していると発表。システム更新時に発生したデータ連携の不具合により受発注や在庫管理などに影響が出ているとし、9月22日時点で「完全復旧のめどは立っており、近日中に復旧できるはずだ」(9月22日付「日経XTECH」記事より)とコメント。だが、10月に入っても障害は続き、同月20日時点でも続いていることを明らかにした(20日付日本経済新聞より)。
11月1日付「激流ONLINE」記事によれば、西友へ日用品を納入するメーカーでは、西友からの発注が突然止まり、その翌日には多量の発注データが断続的に送られてきたという。
「基幹システムの総入れ替えなので、作業的にはかなり大変かつ重い。なので、ある程度の規模の不具合が起きてしまうのは西友としても想定内だっただろう。大手小売業のシステムは商品の欠品管理・発注などの各種店舗業務、在庫管理、POS、レジ業務などが密接に連携しており、どこかで不具合が生じると全体に波及する。ゆえに改修に時間がかかり、その間に影響の規模が大きくなりがち」(IT企業SE)
大手小売業では異例ともいえる障害が発生した理由について、西友はいう。
「弊社では、今年9月から11月にかけて、全国の店舗(300店舗以上)において、システム切替更新を順次実施いたしました。スーパーマーケットのシステムは複数のシステムが相互連携しているため、切替の影響により、いくつかの要因が重なり、9月の約1週間に渡り、一時的に本来必要な納品量より過少/過剰納品が発生しました。お客様に大変ご迷惑をおかけしたことを心よりお詫び申し上げます。システム切替を行う店舗は、予めお客さまへお知らせしながら、1店舗あたり約16時間程度の計画臨時休業を行いました」(西友)
夜間も営業する一部店舗では深夜営業をとりやめる事例もあったとも伝えられているが。
「システム障害により営業をとりやめた事実はございません」(西友)
流通ジャーナリストの西川立一氏はいう。
「小売業において基幹システムは、営業していくうえで欠かせないもの。商品・販売・顧客管理をはじめ、店舗業務、マーチャンダイジングなど幅広い分野にわたっており、システム障害が発生すると大きな影響を及ぼす。大手企業は巨額な投資をし、効率的なシステムを構築し、安定的な運営をするため細心の注意を払いながら日々進化させている。
基幹システム障害はみずほ銀行がしばしば起こし大きな問題となったが、小売業では過去に開店時間が遅れるといった事案はあったが、今回の西友のような長期間にわたりさまざまな影響を与えたことはなかった。障害は米ウォルマートのものから自前の新しいものに更新する際、不具合が生じ起こったようだが、よくあるパータン。原因は今のところ不明だが、徹底的な原因究明がなされるだろう。いずれにしてもシステム会社との緊密な連携やシステム部署のよりいっそうの拡充も求められる。
スーパーは生活者にとって欠かせないインフラ。基幹システムの障害が起こっても、何らかの代わりのバックアップ体制を用意して、通常の営業を続けていく必要がある」
西友の新システムはシノプス社のAI(人工知能)自動発注システム「sinops-CLOUD」を導入しており、品薄・欠品の原因がこのAIシステムが原因ではないかという見方も流れたが、西友もシノプス社もこれを否定している。
今回のシステム更新作業は、ウォルマートの基幹システムを西友独自のものに入れ替えるというもの。西友は08年にウォルマートの完全子会社になり、21年に楽天グループと投資ファンド・KKRが西友に出資し、ウォルマートの出資比率は15%に低下していたが、西友はウォルマートの基幹システムを使っていた。
(文=Business Journal編集部、協力=西川立一/流通ジャーナリスト)