トヨタグループでは昨年以降、品質問題が相次いで発覚している。連結子会社の日野自動車は昨年8月、エンジン認証に関する不正を過去20年にわたって行っていたことを発表。今年3月、トヨタグループの豊田自動織機は、フォークリフト用エンジンの排ガスに関する劣化耐久試験で法規違反をしていたと発表。今月20日には、北米トヨタがエアバッグのセンサーに不具合が見つかったとして100万台のリコールを発表している。
ダイハツの不正の原因としては、同社の組織としての問題点として第三者委による報告書で以下内容も指摘されている。
<過度にタイトで硬直的な開発スケジュールの中で車両の開発が行われるようになった。開発の各工程が全て問題なく進む想定のもと、問題が生じた場合の対応を行う余裕がない日程で開発スケジュールが組まれ、仮に問題が生じた場合であっても開発期間の延長は販売日程にまで影響を及ぼすことから、当初の開発スケジュールを柔軟に先送りすることは到底困難というのが実情であった。>
<結果的には最後の工程である認証試験にしわ寄せがくる実情があった。「認証試験は合格して当たり前。不合格となって開発、販売のスケジュールを変更するなどということはあり得ない。」というような考えが強く>
<現場任せで管理職が関与しない態勢
管理職が認証試験の実務や現場の状況に精通しておらず、また、報告や相談を行っても認証試験の担当者が抱える問題の解決が期待できない結果、現場の担当者レベルで問題を抱えざるを得ない状況が生じた>
<認証試験の担当者が絶対合格のプレッシャーに晒され、現場レベルでの解決を迫られる状況になったとしても、業務に対する適切なチェックが行われる状況であれば、不正やごまかしによる解決は困難であるが、特に衝突安全試験の領域は職場環境がブラックボックス化しており、不正がごまかしを行っても見つからない状況にあった。>
<認証制度自体が極めて専門的であったところ、人員削減により法規認証に精通した人員が不足している状況であり、教育研修体制も不十分であった。>
<(編注:内部通報制度である)「社員の声」制度に寄せられた通報のうち、2022年では実際に調査に至った案件の約6割程度は、事案が発生している部署に調査を依頼する形で運用されている。また、匿名通報者の場合は、連絡先を把握している場合であっても、匿名通報は信憑性が低いという考え方等から結果通知を行わない運用が行われている。>
<ダイハツの経営幹部は、不正行為の発生を想定しておらず、法規認証業務において不正が発生する可能性を想定した未然防止や早期発見のための対策を何ら講ずることなく短期開発を推進した。その結果、短期開発の強烈なプレッシャーの中で追い込まれた従業員が不正行為に及んだ>
<現場と管理職の縦方向の乖離に加え、部署間の横の連携やコミュニケーションも同様に不足している>
<「できて当たり前」の発想が強く、何か失敗があった場合には、部署や担当者に対する激しい叱責や非難が見られる>
<全体的に人員不足の状態にあり、各従業員に余裕がなく自分の目の前の仕事をこなすことに精一杯である>
<書類に虚偽の情報や不正確な情報を記載してはならないという当たり前の感覚を失うほどコンプライアンス意識が希薄化していった>
(文=Business Journal編集部、協力=ジャーナリスト/桜井遼)