すき家、アルバイト時給2千円超え…松屋は正社員初任給を25万円に増額

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すき家「トマトチーズ牛丼」(現在は販売終了)

 大手牛丼チェーン「すき家」の一部店舗で、アルバイト店員の時給が2000円を超えていることが話題を呼んでいる。あらゆる業界で人材不足が深刻化するなか、各社は人材確保のために賃上げの動きをみせているが、店舗運営の大部分をアルバイト・パート店員が担う小売・外食業界でも時給の上昇が続いている。競合チェーンである「松屋」を運営する松屋フーズホールディングス(HD)も正社員の賃金を10.9%引き上げ、大卒初任給を23万円から25万円に増額するなど、アルバイト店員のみならず正社員の確保をめぐっても争奪戦の様相を呈しつつある。外食業界における人材不足や人件費高騰の状況はどうなっているのか。専門家の見解も交え追ってみたい。

 外食業界で人手不足が表面化したのは、コロナ禍による行動制限がなくなった2021年頃から。マイナビが7月に発表した「アルバイト募集時の平均時給データ」によれば、今年6月のアルバイトの時給は全業種平均1190円で、前年同月比4.0%増加。関東は1226円となっている。なかでも大手外食チェーンでは1500円を提示するケースも珍しくなくなったが、それでも店員確保難を理由に一時休業する店舗も出始めている。

「10年ほど前から地方では集客面は問題ないものの店員が確保できず閉店する小売店や飲食店は出ていたが、それが都市にまでおよんできた。コロナによる営業自粛で観光・宿泊・飲食といった業界では人減らしが進み、人流復活とインバウンドの増加でこれらの業界では一気に需要が回復したものの、他業界に流れた働き手が戻ってこず、深刻な人手不足に陥っている。特に宿泊・飲食業界はキツイというイメージも強く、若者層からも敬遠されがち。かといって時給アップは即固定費の上昇につながり経営の圧迫要因となるため、簡単に時給を上げるわけにもいかない」(外食業界関係者)

高い時給を提示してでもスタッフを確保

 そんななか、すき家は一部店舗で一般は1650円、高校生は1550円、深夜は2088円という高額な時給を提示して話題を呼んでいる。すき家は全国で1943店舗(5月時点、以下同)を展開し、2位の吉野家の1206店舗を大きく上回る国内トップの牛丼チェーン。業績は好調で、運営元のゼンショーホールディングス(HD)の24年3月期第1四半期決算は、売上高約2143億(前年同期比20.2%増)、営業利益は約95億円(同259.9%増)、経常利益は約92億円(同13.2%増)、純利益は約66億円(同50.8%増)となっており、売上高・純利益ともに同期としては過去最高を更新している。

「最近ではロッテリアを買収して傘下に収めたゼンショーHDは20以上の外食ブランドを展開し、手掛けていない外食業態はないといえるほどの拡大路線を取っている。グループ全体のスケールメリットを利かして利益をあげるビジネスモデルなので、一定の利益が出て人件費の原資もあるということで、店舗網維持のために高い時給を提示してでもスタッフを確保したいということだろう」(同)

 すき家といえば、14年に深夜のワンオペ勤務をはじめとする従業員の過酷な労働実態が発覚。全国で一時閉店する店舗が相次ぎ、約2000店舗(当時)のうち最大で123店舗が店を開けられない状態に。さらに深夜のワンオペを廃止した影響で、全店の約9割を占めていた24時間営業店のうち、実に約7割の店舗が24時間営業を休止。すき家の労働環境改善に関する第三者委員会が公表した報告書によれば、ゼンショーHDは12年度から14年度において、時間外労働などで64通にも上る是正勧告書を労働基準監督署から受け取っており、恒常的に月500時間以上働いていた社員や、2週間帰宅できなかった社員がいたことなども明らかになった。