ということは「マニア向けの番組×マニア向けの広告」という構造に可能性が見出せる。もっと番組(コーナー)の内容と連動した、より限定的な「マニアセグメント」の広告展開を追求するべきではないだろうか。
あと思うのは、「ラジオショッピングの活性化」である(これはラジコとの直接の関係はないのだが)。
聴いていて、もったいないと感じるのは、ラジオショッピングの枠に入った途端、原稿棒読みになるパーソナリティが多いこと。結果、商品の魅力がリアリティを持って伝わらず、また、番組本編から独立した感じとなり、リスナーの「聴取熱」が下がる場合が多そうなのだ。
もっと番組本編とシームレスに、パーソナリティ自身の言葉と世界観の中で、商品を語るべきではないか(その点、ショッピングキャスターの物まねを執拗に続けることで、番組の世界観に引き込むABCラジオ『ますだおかだ増田のラジオハンター』の増田英彦は賢明だと思う)。
以上を既存ビジネスの拡大とするならば、ラジオ界としての新規ビジネスとして期待したいのが、ラジコをプラットフォームとした、「BtoB」ならぬ「BtoC」、つまり「BtoL(Business to Listener)ビジネスの活性化」であり、これが今回の本論である。
上記、既存広告ビジネスの商流は、広告主からラジオ局に広告費が流れる構造だ。つまり俗に言う「BtoB」(企業間取引)であり、その商流に消費者=リスナーは存在しなかった。
しかし、スマホ(PC)の中のラジコは、ラジオ局とリスナー1人ひとりを直結するメディアである。ということは「BtoLビジネス」のプラットフォームになり得るのだ。
ラジコをヘビーユースしていて思うのは、番組ごとの画面(アプリでいえば上部に番組ごとの画像の入っている、あの画面)が、なぜまったく動かず、情報も変わらないのだろうということ。
番組内容の展開に即して、もっと多様な情報を可変して組み込めるはずだ。例えば、ラジオショッピングの時間になれば、せめて商品の画像をラジコに載せるべきだろう。また電話だけではなく、ラジコの画面にもレスポンスの入り口を作ってもいい。
さらにはテレビ番組よりも(狭いけれど)深い、コアなファンリスナーを多く抱えている番組も多いのだから、そんなリスナーに対して、番組のスピンオフコンテンツや関連グッズの販売、イベントの優先予約、クラウドファンディングなど、局への課金プラットフォームとして、ラジコ(の番組画面)を活用すべきだと思う。
このあたり、番組の公式ホームページが受け皿でも問題はないのだが、ラジオファンならわかるとおり、ホームページは、局ごと、番組ごとに驚くほどバラバラで、かつUI(ユーザー・インターフェース)のこなれていないものが多い。
だとしたら、これほどまでに普及したラジコの、利用者が必ず見る番組画面に、「BtoLビジネス」プラットフォームというさらなる役割を担わせるほうが自然だと思う。要するに私はラジオ好きとして、ラジオ局に儲けてほしいのだ。
最後に狙うべきリスナー=ターゲットの話をしたい。
もちろん、先に述べたように、基本的には番組ありきだと思うので、各番組それぞれに、狭くて深い(≒マニアックな)リスナーを確保していくことが先決なのだが、加えて、ラジコが、ひいてはラジオ業界が狙っていく戦略ターゲットの選択と集中が必要ではないだろうか。
注目すべきは、先の総務省データによるラジコの利用率(全年代で13.8%)について、年齢別でもっと高いのが50代で16.6%、それを追うのが40代で16.3%という事実である。この2層への強みを手がかりにするべきだと考える。