「えっナニ!?→へえ面白い!」の「間」をつくろう
問題。下記のうち、キャッチコピーと呼べるものはどれ?
答えは5。これだけがキャッチコピーとして機能する。最もダメなものは4。なぜなら思いを押しつけるエゴだからだ。
コミュニケーションで一番重要なのは、こちらの思いが相手に伝わること。そのための基本は「相手の立場に立つ」ことだ。その観点でいえば、4は相手(聞き手)の関与する余白がなく、本当に美味しいんです! という伝え手の思いだけが強いので、正直ウザったい。
それに対し、5は「本当の」というところに意味がある。そもそも豆腐に「本当かどうか?」という概念がないために、「本当の豆腐」と言われた瞬間にその背後にある「実はまがい物があるのかな?」「何か本物であることを伝えられる内容があるんだな」までを察知する。
つまり、最初に「なんか変だぞ?」という違和感を生み、その次に「なんか面白そうだ」と期待する気持ちにつなげる。この一瞬の思考時間こそが、心を摑むために絶対に必要な「間」であり、コピーの極意だ。このテクニックは、プレゼンや企画書においても汎用性が高いし、ブランドを生み出すのにも必須だと思う。
これまで多くの流行を生み出してきたファッションディレクターの藤原ヒロシさんは、その話の中で「ブランドにとって大切なのは違和感」であり、さらに「面白いものには奥行きがあり、何かをつくる時にはその奥行きを同時につくることが大切だ」と語る。
それは「間」を生み出し、奥へといざなうロジック。流行はまさに「違和感と奥行き」でできているというわけだ。
デニムでいえば、タグの英語が大文字だとかステッチが違うだけで、「これなんだ?」という違和感になり、奥へ進むと「なるほどそうなんだ! 」という話したくなるストーリーが待ち構えていて、その話に魅了され、いつしかそのブランドのファンを超え、語り手となる。
人の注意を引き付け、奥に引き込む「間」を生むには、?「違和感」をつくること、?「奥行き」をつくることの2つが鍵。すなわち、「えっナニ!?→へえ面白い!」という、驚きから興味への連鎖をつくればいい。
「人は笑う前に驚いている」とは、盟友のクリエイティブ・ディレクター高崎卓馬の言葉だが、確かに笑いが起こる前には必ず「え!」という驚きがあり、そこから「なあんだ」という安堵が訪れて笑いになる。
その昔、桂枝雀師匠も「笑いは緊張と緩和から生まれる」という話をしていたように、感情を揺さぶるにはまず心の振れ幅を生むことが必要だ。ただこれは笑いにとどまらず、「えっナニ!? 」のあとに「なるほど!」(納得)でも「わかる~」(共感)でも「ありがとう」(感謝)でもいい。
驚きの先で感情が強く揺さぶられれば、「なんだろう?」という違和感から興味が生まれ、好意となり、話したくなる。