私たちが仕事をする際には、基本的に1人で仕事をすることはなく、多くの場合何らかの部署やチーム、プロジェクトなどに所属して、人と関わり合いながら仕事を進めていくはずです。このときに疑う思考を有していれば、さまざまなことができるようになります。
例えば、商品の企画を立案するときや、業務の流れを見直すときに役立ちます。現状を客観的に見つめて課題を抽出し、それらを整理した上で、「それって本当?」と疑っていく。そうすることによって、問題に対処することができるのです。
私たちは問題解決を図ったり、新しいことを始めようとしたりしたときに、情報を取捨選択しています。ただそのときに、やはりどうしても関心が高い情報だけを選んでしまったり、自分にとってメリットのある情報を高く評価してしまったり、といったことをしがちです。
これは、アンコンシャスバイアスや思考パターンが影響しています。アンコンシャスバイアスや認知の偏りをなくすことはできません。
そこで私たちは、得た情報や自分の中で生じる判断に対して、疑うことを重ねていきます。疑うことを通じてさまざまな角度から光を当てて、物事について判断をしていくのです。
仕事で人とコミュニケーションを取る際には、頭の中で疑うだけで終わるのではなく、疑う思考を人との関わりの中で生かしていくことが重要です。
疑う思考を最も生かせる場面が、質問する場面です。質問の質がアウトプットの質を左右しますから、どのような質問ができるかによって、仕事の成果も変わってきます。
良質な質問をアウトプットするためには、できるだけバイアスがかかっていない状態に保つことが大切です。
例えば権威バイアスが強くかかってしまっていると、「上司がこう言うのだから正しいのだろう」と考えてしまうため、上司や役職者の話に対して適切に疑うことができず、正しく質問することができません。また、正常性バイアスがかかっていると、「自分は大丈夫だろう」と考えて適切に警戒することができないため、質問の質が下がってしまいます。
バイアスをできるだけ取り除こうと思っても、なかなか難しいものがあります。そもそも、バイアスをゼロにすることはできません。さらに私たちが無意識に持っている思考パターンによってもかかるバイアスが異なるので、「こうした方がいい」というアドバイスを一概に言うことができません。ですから、自分にどんなバイアスがかかりやすいのかを把握しておきましょう。
その上で質の高い質問をするのですが、それには次の3つのステップを踏む必要があります。
話を聞いたら、頷きます。頷くことで「あなたの話を聞いていますよ」ということを示します。シンプルなことですが、頷くためには、相手の話を聞かなければなりませんね。聞くというのは、相手が何を主張しているのか、何を伝えたいのかということを理解することでもあります。
表情や態度で「話を聞いています」と示すことも、ステップ1に含みます。また、話を聞いていて「おかしいな」「賛同できないな」と感じたとしたら、無理に頷く必要はありません。ポイントは、相手の話を聞く、ということです。
相手の話が終わったら、まずは感想を伝えられるようになりましょう。相手の話に対して、「私はこう感じました」「このように思っています」と言葉にしてみます。
この段階でつまずいてしまう人がかなり出てきます。「何を伝えたらいいかわからない」「感想を言葉にすることができない」と不安になってしまうのです。私が講師として研修する際にも、参加者の方に感想を求めることがあります。そのとき文章で返してくれる方もいますが、多くの場合「良かったです」「勉強になりました」といったような、非常にシンプルな感想にとどまります。
感想を伝えられないということは、思ったこと、感じたことを言葉にできていないということ。一言で言うと、語彙力が不足しています。
LINEやチャットが普及したことで、長文の文章を作ってやり取りする機会が減りました。「やば」「きも」のように、短い言葉で感情を伝える機会が増えれば、語彙力が下がるのは当然のことです。
研修で感想を伝えるワークを行う際には、いくつかの感情を最初に用意しておきます。その感情の中からどれを感じたか選んでもらいます。
そのあとに、
を書いていきます。そうすると自分が感じたなんとなくの感情について明確に伝えられるようになります。