「マッチングアプリ婚」を後押しする、陰の立役者

「ペアーズのAIは、国内の専任チームによって行われています。

親会社で世界規模でマッチングアプリを展開するMatch GroupのAI原則(真正性、公平性、説明可能性、説明責任、安全性、プライバシー、誠実性)に則り、お客様の『本質的な価値』に向き合う開発をしています」

AIマッチングはまだまだ事例が少ないのが実際で、研究開発の最中だという。またグローバルなMatch Groupのブランドやアプリ間での情報交換も盛んだという。

「これまでマッチングでは、自分の好みで選ぶ行動が重視されてきました。しかし昨今の消費行動やトレンドの変化を見ていくと、アルゴリズムの精度向上や、レコメンドの的確さにニーズが集まってきています。

TikTokやYouTubeのように、プラットフォームから提供されたものを取り入れる消費行動が増えており、だからこそ、レコメンドの的確さが重視されるのです」

どれだけ「いいね」をもらうか

AIによるレコメンデーションは、その人の好みがいかに的確に反映されているかが重要になっている。興味のないものをたくさん紹介されても、満足感が下がるだけになってしまう。

奥村さんは、特にマッチングアプリでは、シビアな反応が見いだせるという。

「ペアーズでは、長年の試行錯誤の経験から、マッチングの件数ではなく、『質』に注目する必要性があると発見しました。

マッチングは『いいね!』の送信から始まるので、シンプルに考えると、どれだけ『いいね』をもらうかによって、マッチングがしやすくなるかと考えると思います。

しかし『いいね』が多く集まったとしても、それが質の低いマッチングでは、『メッセージのやりとりが続かない』(=ケミストリーが一致しない)という如実な結果がもたらされます。

マッチングのしやすさの先にある、マッチングの質をAIで追求することで、より関係が長く続き、結婚に結びつく人とのマッチングを作り出そうと考えました」

マッチングの質をいかにAIで発見するか

マチパの向上
(画像:ペアーズ)

では、マッチングの質は、AIでどのように作り出されるのか。奥村さんはペアーズを使っていく中で、「自分の好みの言語化」という行動変容を起こすことで、マッチングの質の根本的な向上と、レコメンドの確度の高さを作り出そうとしています。

「消費行動は日々の買い物でモノの良しあしや自分の好みを判断するための、十分な経験が蓄積されます。しかし恋愛は、そもそも経験できる交際経験が消費行動よりも少ないので、自分の好みをはっきり自覚するほどの判断軸が、蓄積されない可能性に気づきました。

かつ、普遍的に、こういう男性とこういう女性の相性が良いという定番パターンのようなものもあまり意味のある結果にはつながりません。やはり恋愛は個別な体験で、分布の平均値や流行だけ見ていると、多くの人は見誤ることになります」

そこでAIがユーザー1人ひとりを詳しく知ることが重要になってくる。どういう人なのか、どんな好みなのか、行動パターン、価値観、良いと思う人柄などを、ユーザーに言語化を伴いながら、教えてもらう。

そのうえで、お互いの情報がスレ違わない相手同士をオススメしてマッチングする。ペアーズのAIマッチングでは、このようなことが気遣われているのだ。その精度を高めるためには、ペアーズ上でたくさん行動すること。AIに自分のことをよく知ってもらうことが、ミスマッチを防ぐ手立てになっている。

長大なカスタマージャーニー

ペアーズを通じて結婚した人(ペアーズ婚)は、日本の2023年の婚姻の約10%を占める、重要な結婚相手との出会いの手段に成長している。

ペアーズは、マッチするカップルの数ではなく、成婚率を重視している。100件マッチしても、付き合うのは1人で、結婚するのも1人であることから、マッチ数が多いことに価値がないのだ。だからこそ、マチパでマッチングの質を追求する戦略になる。