これは私の直感や経験則だけではなく、コミュニケーションの重要な理論のひとつである「返報性の法則」というものに当てはめて考えています。
この理論を端的に説明すると、「他人から何かをもらうとお返ししたくなる心理作用が働くことであり、感情は伝播する(してしまう)」という理論です。
例えば、自分が悪意を持っていたり嫌悪感を持ったまま、無理にコミュニケーションをとってしまうと、相手に感情が伝播してしまい良好な関係性が築けないなどです。(敵意の返報性)
逆に言えば、自分がポジティブな興味や関心を持って他人と接すると、そのポジティブや感情が伝播し、良好な関係が築きやすいとも言われています。(好意の返報性)
では、自分からどう相手に興味があることを示す(=良い受信をする)のがよいのでしょうか。
「自分からどう相手に興味があることを示し、相手のことを知るか」については、以下の方法があります。?
それは「質問」と「観察」をセットで行うことです。このセットをうまく使いこなすことで「感じの良いコミュニケーション」は身につけることができます。
前述のとおり、いまは誰しもが発信をできる時代であり、発信することが推奨もされている流れがあります。
なので、まずは自分も話さなければと思いがちですが、まずは「質問」をしながら相手を知り、「自己開示」するほうが遥かに気持ちも楽ですし、良い関係を構築しやすいです。
まずは「自分から質問をすること」で、相手のことを詳しく引き出していきます。
そして、質問に対しての回答を「観察」していきます。
どの質問に対して「熱量高く回答しているか」「どんな回答が多いか」などを観察していき、表層的な部分から価値観や経験を読み取って相手の傾向を探っていきます。
では、具体的にどのような質問をするとよいかというと、初めての人同士が関係開始をするシーンを思い浮かべてください。
例えば、ビジネスシーンであれば「現場への配属」「転職した初めての職場」「商談の場」「他部署との会議」「異業種交流会」「同期同士の初めての懇親会」、プライベートであれば「お見合い」「合コン」など数多く存在しています。
ここでは具体的な例として、ビジネスシーンにおける「新しく始まるプロジェクト」の担当になったコンサルタントの上司と部下が顔合わせ(キックオフ)するシーンで説明します。
まずはステップ1として、「事実情報への質問」から始まります。
具体的には、「配属されてどうか」などの事実を聞き出します。
次に、ステップ2として、その回答に対して「承認」しながら「自己開示」して相手に自分のことを知ってもらいます。
そして、ステップ3で「価値観に触れる質問」をしていきます。
気をつけていただきたいのは、一方的に質問し続けると面接みたいになってしまうので、自分も相手の自己開示レベルに合わせながら自己開示しつつ話を進めてください。
特に自分のほうが役職が上の場合は、より面接感が出てしまうので注意です。
全体の会話の流れは、以下のようになります。
上司「新しいプロジェクトの担当になったけどどうかな?」
部下Aさん「未経験の領域も一部あるのでドキドキしていますが、楽しみです」
上司「そうだよね。僕も去年のAI領域のプロジェクトは正直ガチガチだったよ。わからないことはお互い様だからリラックスしていこう」
部下Aさん「ありがとうございます。もし困ったら早めに頼らせてもらいます」