「企画が通らない人」は上司との話し方を知らない

(写真:アン・デオール /PIXTA)
取引先、上司、同僚、部下等が、自発的・主体的・能動的に行動するにはどうしたらいいのでしょうか。その秘訣は、相手が「~したくなる」ように関わること。つまり、「相手を“ムズムズ”させることです」と、『相手に「やりたい!」「欲しい!」「挑戦したい!」と思わせるムズムズ仕事術』の著者で、両想いビジネスコンサルタントの市川浩子さんは言います。
 
取引先を“ムズムズ”させるとスムーズに提案を受け入れ、部下を“ムズムズ”させると、積極的に仕事をし、上司、経営陣を“ムズムズ”させると企画が通りやすくなるそうです。相手をムズムズさせるコツを著書の中で紹介している「ムズムズテク10」中から、すぐに実践でき、効果を感じられる3つについて市川さんが紹介します。
 

ムズムズテク①話したいことから話さない

伝えたいから伝える。あげたいからあげる。これは優しいようで、実はエゴです。悪気はなくても「自己中心的な人」と誤解されてしまいます。相手をムズムズさせるには、相手に興味を持つことが必要です。

話したいことから話し始めるのではなく、相手が「あなたの話を聞きたい」と思うように、「相手が求めている情報」を、「相手に届く言葉」を使って話すことです。それには、相手を知ること。あなたが相手に興味をもち、相手の話を聴くことです。

「返報性の法則」をご存じでしょうか? 「人から何かしらの施しを受けたとき、お返しをしなくては申し訳ない気持ちになるという心理作用のこと」です。

目の前の人が、あなた自身にあまり関心を持っていないと感じたら、あなたもその人に対する関心が薄れるでしょう。だからこそ、まずは自分から相手の話を熱心に聴く。相手そのものに純粋な関心を寄せる。すると、相手も聴く耳を持ちます。

そのうえで、相手の関心のある話題から入れば、伝わります。一見、遠回りのように感じるかもしれませんが、ムズムズを引き出すには急がば回れで、そのほうが効果的です。

そして、いざ自分が話す番になった時も、相手のニーズに沿うように伝えましょう。例えば、部下指導で悩んでいる方に売り上げアップの話をするとします。「目標を達成するためには、日々の数字を把握し、共有することです」と話すより「部下がつまずいている箇所を把握し、具体的なアドバイスをしてあげると、結果として数字もついてきますよ」と言ったほうが喜ばれるはずです。

同じ「数字をあげよう」というお話だとしても、言葉1つで、まったく違う印象を持ちますよね。前者より後者のほうがずっとムズムズしてやってみようとなるはずです。相手に響く言葉を選び、ムズムズさせてあげてくださいね。

ムズムズテク②3つの視点で伝える

相手をムズムズさせるには、もう1つ、忘れてはならない視点があります。それは、全体を見る視点です。

例えば、あなたが上司に企画を提案したいとします。上司が興味を持ち、ムズムズし、企画が通るためには、次の3つの視点を使います。

①自分の視点
自分がいちばん伝えたいことは? 上司が興味を持つには? 首を縦に振ってもらうには? 企画が通ったら、どれだけ会社に貢献できる? お客さまにも受け入れられるか?

②相手の視点
会社や上司はどのような企画を望んでいる? 会社や上司はお客さまにどうなってほしい? 会社や上司はどんな課題を抱えている? 会社や上司は自分に何を期待している? お客さまは自分(自社)に何を期待している? お客さまの問題・課題・解決したい悩みは? お客さまの望みは何だろう?

③全体を見る視点
この企画を通すことによって、会社に、お客さまに、社会に、どのような影響を及ぼす? お客さまとのやりとりを周りはどのように見るだろう?