中国とインドで始まっているAIによる「仕事消滅」

要するにコロナ禍で中国、インドでもDXを強固に推進せざるをえなくなり、業務の生産性を徹底的に上げていった結果、急成長中の大企業が必要とする従業員は日本企業以上に少なくなってしまったのだと捉え直すことができるのです。

日本では大卒の就職者は年間約40万人、20~24歳の青年失業率は9.0%です。そして就活生の人気が集中する大企業は求人倍率が0.6倍程度です。

これらの数字から、空前の売り手市場の中、就活に成功した学生の数を多めに推定したとして25万人程度。それと比較すればインドの大企業に就職できる学生が70万人しかいないという状況は、インドの巨大な人口を考えるとかなりの狭き門です。

日本でも就活に失敗して正社員の職にあぶれた若者が非正規雇用に向かうように、インドや中国でも同じ流れができているのですが、数字を見ても、現地の情報を見ても、どちらの視点で見ても仕事がない深刻さは日本よりもインドと中国のほうが上です。このことを、「仕事消滅による雇用の冬は、すでにインドと中国で始まっている」と見ることはできないでしょうか。

大半の仕事が生成AIに奪われる

生成AIが得意とする仕事は大きく分けて3つあります。「調べること」「整理すること」「模倣すること」です。これらの能力を生成AIが仕事で発揮してくれるようになることで、私たちの仕事はどう変わるのでしょうか。

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ここが人類にとっては一番のカギとなる質問です。おそらく人類の大半はこの「調べる」「整理する」「模倣する」の3つの業務に従事しているはずだからです。

ChatGPTを生み出したオープンAIのサム・アルトマン氏は、

「AIがなくすのはジョブ(雇用)ではなくタスク(業務)だ」

と主張していますが、その小さなタスクの消滅が積み重なることで、何が起きるかを予測すると、それはホワイトカラーの仕事量の大量消滅に他なりません。

つまり、AIをフルに活用することで極めて高いビジネス生産性を謳歌できる未来は、一部のビジネスパーソンにとっては朗報であっても、大半のビジネスパーソンにとっては自分の仕事の消滅を意味することになりそうなのです。