スタバVSドトール「店舗数」に大きな差が出たワケ

都内は出店競争が激しい

ただ、スペースに余力のある店舗となると、他の飲食チェーンとの競争が激しくなる。中でも、ドトールが得意とする都内では出店競争が厳しく、無理に出店するとなると自社ブランド同士で、客数の奪い合いが起きる懸念もある。

「(都内で)出店したとしても十分な売り上げを確保できるとは限らない。(大幅に店舗数を増やすのは)難しいだろう」と、ドトール・日レスHDの関根一博取締役は話す。

ドトールは今期、通期ベースで店舗純増20店を計画している。だが、8月までの時点で計22店舗を出店したものの、フランチャイズ店舗の閉店もあり、全体では1店舗の純増にとどまっている。通期20の純増計画はハードルが高そうだ。

出店の他にも、ドトールには一段成長に向けた課題がある。客数の取り戻しだ。

ドトールの既存店客数は2023年9月が前年同月比7.9%増、10月が5.2%増と上向いているように見えるが、「コロナ前の2019年と比べると90%に満たない」(ドトール・日レスHDの星野正則社長)。直近の売上高の挽回は、2022年12月に実施した値上げの寄与が大きいのだ。

戻りが鈍いのは朝の時間帯だ。コロナ影響が薄れたものの在宅ワークが定着したことで、「朝の出勤の際に、顧客がドトールに立ち寄ってコーヒーを買うような習慣が減ってしまった」と、関根取締役はこぼす。

この課題について、もちろんドトールは無策ではない。毎月異なるポイント還元キャンペーンを実施することで、顧客の集客に努める。

メニュー面でも強化を図る。2023年9月からハムタマゴサラダのモーニングセットを販売するなど、朝の時間帯での集客を意識した商品を拡充している。

ドトールは「コーヒー屋」のこだわり

カフェチェーンを取り巻く競争環境は、いっそう激しくなっている。「王者」スターバックスだけでなく、伊藤園傘下のタリーズコーヒー、フランチャイズ店を中心に急成長するコメダ珈琲店など強豪がひしめく。

低価格路線を標榜し、世界で急拡大するコッティコーヒーも2023年8月に日本に上陸した。ファストフードチェーンのマクドナルドやモスバーガーもカフェメニューに力を入れている。

関根取締役は「スターバックスは(フラペチーノを柱とする)スイーツ屋だ。一方、ドトールは焙煎屋(コーヒー豆の焙煎加工卸会社)から出発したコーヒー屋。顧客の利用目的がそもそも違う」と強調する。飲料については、あくまでコーヒーにこだわった成長戦略を描く。

しかし、「コーヒー以外のドリンクをある程度充実させなければ、今後大きく業績を伸ばすことは難しいのではないか」と、カフェ業態に詳しい業界関係者は指摘する。

複数の課題を抱える「コーヒー屋」ドトールは、再成長へ向けてどのような戦略を描くのか。本格的に客数を取り戻せるかどうかが、当面の焦点となりそうだ。